適格退職年金の移行先の検討に当たって、企業の実態とのミスマッチが
あるように感じています。
【例】
①従業員の平均勤続年数が3~4年、退職後は独立して起業するという
会社で、確定給付企業年金を検討
⇒確定給付企業年金は、適年以上にコストと事務手間が掛かる制度
なので、従業員のほとんどが3~4年で辞める会社には向かない。
⇒この会社の場合は、確定拠出年金の方が向いています。
従業員は退職して起業した後で、企業型DCの積立金を個人型DCへ
移して、継続して積立が行えます。
②退職給付会計を導入している会社で、保険商品を使っての積み立てを
検討。適年の積立金は解約、従業員は一時所得として受けとる。
⇒保険商品の積立金は、退職給付会計上の年金資産にはならないの
で、会社の退職給付引当金(有税での引き当てです!)の負担は大き
くなります。
⇒40年後に1,000万円の退職金を支給するのに、運用利回りを2%とす
ると、掛金合計額は約650万円です。
一方、1,000万円の退職金を社内で準備すると、全額有税での引き当
てとなりますので、合計で約1,666万円のお金が必要です。
(法人税の実効税率を40%とした場合、1,000万円÷0.6=1,666万円)
⇒保険商品を使うと、従業員1人あたり1,000万円もの無駄なコストが発生
します。更に、保険商品の保険料も必要ですので、保険商品を使うと、
会社の退職給付制度へのコスト負担は大変重くなります。
金融機関の提案が、そのまま、その企業の実態とあっているとは限りませ
ん。DCの運営管理機関でない金融機関は確定給付企業年金を勧めるし、
外資系の保険会社は、退職給付会計を無視して、手数料やコンサルティン
グの費用が掛からないことを売りにして(どちらも保険料の中に含まれてい
るんですが)、保険商品を勧めます。
適年の移行や退職給付制度の検討にあたっては、企業の実態にあわせた
検討が大切です。
●確定拠出年金のことを、DCといいます。
DCは、defined contributionを略したものです。