褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 幽霊と未亡人(1947) ダンディーな幽霊が出てきます

2024年11月30日 | 映画(や行)
 今回紹介する映画幽霊と未亡人は、か弱い女性をとことん怖がらせるホラー映画、というのは嘘。西洋の幽霊の描き方は、日本のように恨めしや~なんて怨念を込められた怖い描き方よりも、少しばかり人間に寄り添うタイプが多い。例えば文豪ディケンズの『クリスマス・キャロル』なんかはその代表例として挙げられるだろう。そして本作に登場する幽霊だが、ダンディーな雰囲気を漂わせながら困っている女性にアドバイスをしてくれる良い人、じゃなくて幽霊。よって、怖さは全くゼロであり、幽霊と綺麗な女性の素敵な交流が描かれる。

 幽霊と未亡人の丁々発止のやり取りが漫才のような面白さを感じさせてくれるストーリーの紹介を。
 ロンドンに住んでいたのだが、若くして未亡人になってしまったルーシー(ジーン・ティアニー)だが、姑と小姑と一緒に生活するのを嫌がって、長い付き合いの家政婦と娘のアンナを連れて家を出ることにする。そして、ルーシーは不動産から、その家だけは止めておけと言われていた海辺にある格安の家を借りることにする。実は今までもその家に住もうとした人が居たのだが、いずれもその日の内に家から出て行ってしまういわくつきの家。なんとその家にはかつての住居人であり船長だったダニエル(レックス・ハリソン)の幽霊が出るのだった。
 最初こそルーシーは幽霊のダニエルが笑い声を立てて登場してきたのに怯えるが、そんなものは一瞬のこと。気の強いルーシーは家から出るどころか、住み続けることを決心するのだが・・・

 ダニエルは自殺したとの噂が広がっているのだが、死の真相に笑わせられた。ルーシーが亡き夫の持ち株を財産として家を借りたところが、株が紙切れになってしまい悩んでいたところを、幽霊のダニエルが素敵なアドバイス提案して家にずっと住めるようにしたりするなど、幽霊と未亡人のやり取りが素敵すぎる。また、ルーシーに新しい彼が出来そうになると、幽霊のダニエルが少し嫉妬しているように思わせるところも良い感じになっている。幽霊と人間の距離関係がベタベタ過ぎないのも非常に心地良さを感じる。
 そしてルーシーの守護霊のようだったダニエルが離れてから長い年月を経ての結末が、少しばかりホロ苦さを感じさせるのも良い。他には演出の巧みさが挙げられるだろう。例えばダニエルの肖像画、望遠鏡、開いたり閉まったりする扉など小道具の使い方が非常に巧みで、一流の監督が撮ったテクニックも堪能できます。
 上質な映画を観たい人、ファンタジックな映画を観たい人、見終わった後に良い映画を観たな~と感動したい人に今回は映画幽霊と未亡人をお勧めに挙げておこう

 監督はジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。いかにも職人肌を感じさせる監督。他ではイヴの総て三人の妻への手紙裸足の伯爵夫人がお勧め








 
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映画 ベルリン・天使の詩(1987) 天使が人間に憧れる

2024年11月27日 | 映画(は行)
 まだドイツが東西に分裂していた頃のベルリンを舞台に天使たちが人間界に寄り添うストーリーが今回紹介するベルリン・天使の詩。非常に静謐であり、映像もスタイリッシュで荘厳さを感じさせる。そして、大方のイメージを覆すのが天使がオッサンであること。服装も冬用のコートを着ていて見た目は本当に姿は人間とまるで変わらない。しかしながら、天使は人間が何を考えているかを読み取ることができる能力がある。そして、天使の姿は子供からは見えるのだが、大人には天使が見えないという設定。そんな天使たちが悩める大人達に寄り添う姿が印象的。しかしながら、そんな天使でも人間の苦悩を救えないのがもどかしいところ。
 
 ある程度本作に登場する天使のキャラを説明したところでストーリーの紹介を。
 天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は永遠の命を持ち、太古の時代からベルリンを見てきており、人間が誕生してからのベルリンをずっと見てきており、人間が喜ぶ姿も悲しんでいる姿も傍観している。人間の生活に興味が惹かれたダミエルは親友の天使であるカシエル(オットー・サンダー)に、俺も人間になりたいんだよな~と相談するのだが、カシエルはあんなロクでもない世界に憧れるのは止めておけと注意する。しかし、ダミエルはサーカスの空中ブランコ乗りの女性マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)に一目惚れ。
 そしてベルリンに撮影にきていたあの刑事コロンボ役で活躍していたピーター・フォーク(実物)から、ダミエルは自分の姿が見えないはずなのに、こっちの世界へ来いよと後押しを受けて、人間の世界に降りる決心をするのだが・・・

 冒頭から「子供が子供であった頃・・・」みたいな朗読が流れてくるが途中でも流れてくるのでその問いかけを深読みしようとしたが、理解できなかったし、それ以外にも難解に感じさせるシーンが多かった。天使たちが自由奔放にベルリンを自由自在に動きまくって人間の心の声を聞ける特殊能力を持っていて、しかも相手側は自分の姿が見えないって俺には天使というよりも透明人間を思い出させた。天使ダミエルなんか自分の姿を見えないことを良いことにストーカーしまくる。マリオンが服を着替える途中で裸になるところでモノクロからカラーへの鮮やかな変換。何とも嬉しいシーンではあったのだが、監督のスケベな心も見えてしまった。
 俺なんかは人間よりも天使の方が永遠の命を与えられて、女の子を追いかけることが出来て良いじゃん、なんて思ったが、ダミエルが天使を辞めて人間として生きることに喜びが一杯。人間の世界には天使の世界ではわからなかったことがたくさんあったのだ。例えばカラーの色別、コーヒーの味、そして人間同士の触れ合い等今まで天使のままでは理解できなかったことが出来て大いに楽しんでいた。本作は実は大いなる人間賛歌を謳っていた内容だったのだ。今まで自分は人間として得をしたことなんか何にもないと思っていたが、いやいや人間は素晴らしい。
 他にも大きな図書館が天使たちのたまり場になっているのにびっくりしたし、ベルリンが舞台だから決して避けられない戦争の傷跡も描かれており、ちょっとだけ笑わせるシーンがあったり、色々なテーマを内包している。なんだか自らドイツの語り部となるべくウダウダ言っている爺さんの存在が気になったり、「子供が子供であった頃・・・」が連発される意味がよく分からないなど、不可解な部分もあるが、なんだか映画に芸術とファンタジーを融合した名作として今回はベルリン天使の詩をお勧めに挙げておこう

 監督は今や尊敬を集めるヴィム・ベンダース。本作はハリウッドのシステムが合わずに故郷の西ドイツに帰って一作目の作品。他ではパリ、テキサスアメリカ、家族のいる風景が好きです。






 




 
 
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映画 マグノリア(1999) 主人公が9名の群集劇

2024年11月23日 | 映画(ま行)
 映画の主人公なんてものは大体1人か多くても3人ぐらいだが、今回紹介する映画マグノリアの主人公は9人。その9人にそれぞれのストーリーがあるために3時間の長時間を費やしてしまっている。それだけでも見ていて疲れそうな映画かと思われるかもしれないが、これが結構退屈せずに見れる。特に9人が非常に個性的な面々で多くが有名どころなのが良い。特に当時既に大スターだったトム・クルーズが猛ハッスルしているのが楽しい。
 9人の別々のストーリーが最後には一つに収束されるというのはありがちであるのだが、本作のテーマは偶然の重なり。本作の冒頭で偶然について、説明がナレーションとして入ってくるのだが、この実話のフィルムを交えての説明が非常に笑わせる。そしてこの偶然の重なりがそれぞれの人物の奥に秘める後悔、悩み、挫折といったものを炙りだすのだが・・・

 9人も主人公がいるとストーリーの説明をしていると怠い長文になってしまう恐れがあるので、できるだけアッサリと流そう。
 持てない男性に女性の口説き方のセミナーを開催しているフランク(トム・クルーズ)、生放送のクイズ番組の司会者であるジミー・ゲイター(フィリップ・ベイカー・ホール)、ジミー・ゲイターの娘でコカイン中毒に罹っているクローディア(メローラ・ウォルターズ)、クイズ王の天才少年スタンリー(ジェレミー・ブラックマン)、元天才子役であり電化製品のセールスマンである中年男のドニー(ウィリアム・H・メイシー)、元大物プロデューサーであり末期がんに侵されて臨終を迎えつつあるアール(ジェイソン・ロバーズ)、アールの後妻であるリンダ(ジュリアン・ムーア)、アールの看護師であるフィル(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ロス市警の警官であるジム(ジョン・C・ライリー)たちが、ロサンゼルスを舞台に苦悩を抱え込みながらも、何とか解決しようとする一日を描き出すのだが、運命は意外な結末を迎える・・・

 この中には本当に下らんことで悩んでいる者が出てきたり、今さらどうしようもないことを未練たらたらで後悔していることを告白しているような者もいる。その様子はまるでキリスト教の罪の告白の儀式である告解を思わせる。俺が見たところ過去の過ちを乗り越えて未来へ突き進もうという意志の強い人間はこの中には見当たらなかった。だが、登場人物の配役の妙を感じさせる。天才と元天才、警察と泥棒、恋愛に積極的なのと引っ込み思案、親と子供等この対照的なバランスがなかなかニクイ。
 しかし、この映画が本領発揮しているのが奇跡的な結末。これがグロい描写になっているのだが、なぜか後になって爽やかさを感じたのは何故だろう。癒し、赦しが与える力の大きさを最後の最後に感じることができる。
 ウジウジしている奴ばかりだが、いつの間にか同情していたり、少し変わった演出があったり、意外な人間関係が突如でてきたりで飽きさせないのが良い。それと妙にテンポもが良い。出演者の中ではトム・クルーズが良い。あのSF映画の名作の音楽に乗っての登場シーンも印象的だが、「死んでしまえ、クソ野郎」なんて吐き出すシーンは名演技。そこには素敵な笑顔を振りまくアイドルの姿は全くない。俳優としての高みを目指すトム・クルーズが見れるシーンだ。
 悩みを抱えた人間が好きな人、現在悩み中の人、衝撃的すぎる結末の映画を観たい人、癒しが欲しい人、主人公が多い映画が好きな人等に今回は映画マグノリアをお勧めに挙げておこう

 監督は今や名匠の高みに到達したポール・トーマス・アンダーソンハードエイトゼア・ウィル・ビー・ブラッドパンチドランク・ラブ、そしてポルノ業界を描いたブギーナイツがお勧め



 

 

 
 
 
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映画 プレイス・イン・ザ・ハート(1984) 自立していく女性を描く

2024年11月22日 | 映画(は行)
 ひたすら身に降りかかる不幸に嘆くだけで、まるで行動できない人がいる。しかし、切羽詰まった時に根性を発揮できるのも人間の素晴らしさであることを教えてくれるのが今回紹介する映画プレイス・イン・ザ・ハート。本作の主人公は冒頭からとんでもない出来事に襲われ、その後も次々とトラブルに見舞われるが、根性と運そして逞しさで乗り切ろうとする。
 俺なんかよく自分の境遇に嫌気がさして自暴自棄になりそうになるが、本作を観ると不思議と、まあ生きていりゃ何とかなるんじゃねえ~、なんて思わさせられる。よく考えたら俺も運の良さで人生のピンチを乗り越えてきたことがあったっけ

 さて、どことなく頼りなさそうな女性が自立していくストーリーの紹介を。
 1930年代の大恐慌の時期であり、アメリカの南部であるテキサス州の小さな町において。エドナ(サリー・フィールド)は保安官の夫ロイス(レイ・ベイカー)と子供二人と暮らしている。食事中に夫のロイスが部下から呼び出され、現場にかけつける。そこで酔っぱらった黒人のワイリーが銃を乱射していた。ロイスは止めようとしてワイリーに近づくが、あろうことかワイリーが振り回していた銃はロイスに命中。そのままロイスは死んでしまう。
 悲しみに浸るエドナを更にどん底に突き落とすことを知らされる。エドナはお金のことを全てロイスに任せていたために家計の事情をわかっていなかったのだが、ロイスが家の購入資金を銀行から借金をしていたことを知らされ、自宅を売ることを提案されてしまう。すっかり専業主婦にどっぷり浸かっていたエドナは、大不況の時期もあり、何の仕事をこれからしていけば良いかわからずに途方に暮れかけていたのだが・・・

 衝撃的なシーンから始まり、この後も悲劇が次々と起きる。しかも、エドナという女性だが、まるでお金の計算ができない経済音痴。そのことを突かれて危うく騙されそうになったりする。まだ幼い子供二人を抱えてどうやって生活していくんだと思えたが、人間生きていれば何とかなるという展開が続く。このエドナという女性の凄さは大した知識が無くても、土壇場で力を発揮するところ。このあたりのヒューマニズムの描き方は感動的であり見習うべき点が多々ある。
 そして、テキサス州が舞台であることから人種差別の問題もテーマに盛り込んでいる。正直なところタイトルのプレイス・イン・ザ・ハート(直訳すると、心の場所)に込められた意味の深さが個人的にはわからなかったのだが、どうやら人種差別や過酷な自然環境の場所であっても去りがたい場所であることにヒントがあるようだ。そして本作のエンディングシーンが非常に印象的。もしかしたらこのエンディングの描き方に否定的な人が居るかもしれないが、個人的には良いも悪いも忘れがたい思い出が集約しているようで大いに感心させられた。
 力強く生きていく女性が描かれている内容が好きな人、ヒューマニズムと社会派が融合されている映画が好きな人、生きる気力が湧いてくるような映画を観たい人等に今回は映画プレイス・イン・ザ・ハートをお勧めに挙げておこう

 監督はロバート・ベントン。ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ主演のクレイマー、クレイマーがお勧め。







 
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映画 フォックスキャッチャー(2014) 実話のサイコサスペンス

2024年11月19日 | 映画(は行)
 アメリカでは実際に起きたデイヴ・シュルツ殺人事件を描いているのが今回紹介する映画フォックスキャッチャー。個人的にはこんな殺人事件があったことを知らなかったので、どことなく全体的に不穏な雰囲気を感じた。しかし、多くの人が知っていると思われるアメリカ人と、こんな殺人事件があったことを知らない日本人が見るのとでは、感覚が異なるか。実は最初はレスリングを舞台にしたスポコン映画かと思っていたのが、全く違った方向へ行くので戸惑ったのだが、実は結構好きな人が多い分野のサイコサスペンスだったことに後から気づいた。
 しかし個人的に惹かれたのが愛国心の描かれ方。俺の周りには、ネジ曲がった奴が愛国心を強調するのを見掛ける時があるが、うっぷん晴らしに愛国心を強調する人間が我が国ニッポンにも多く見かけるのが何とも嘆かわしい。本作を観ると何処にでも不満の鬱憤晴らしに愛国心を利用する奴が存在するんだとわかる。

 さて、コメディの印象が強いスティーヴ・カレルがイメージを覆すほどの演技を見せるストーリーの紹介を。
 1984年のロス五輪のレスリングにおける金メダリストであるマーク・シュルツチャニング・テイタム)だが、レスリングがマイナー競技であるためか貧乏暮らしから抜け出せないでいた。彼の兄であるデイヴ・シュルツマーク・ラファエロ)も同じくレスリングの金メダリストであり、すでに家族も持っており、今では競技に未練もなく安定した今の生活に何の不満も持っていなかった。
 そんな時にマークに声をかけてきたのが、デュポン財閥の御曹司であるジョン・デュポンスティーヴ・カレル)。彼は次のソウル五輪へ向けて金メダリストを産み出すために自前のレスリング練習場を設立し、エリート集団フォックスキャッチャーを創設。そのエースとして破格の待遇でマークを迎えるのだった。当初はジョンとマークの間は上手く行っていたのだが・・・

 本作は実話であり、実名でそのまま登場させている。カネの力で何でもやり遂げようとするジョン・デュポンだが、そんな彼でも何処か満たされない想いを抱えている。そして、金メダルをとりながらも、国民的に人気のある兄のデイヴの陰から抜け出せないままであることに不満を持っているマーク。金持の頂上にいるかのようなデュポンと、対照的に貧乏暮らしのド底辺にいるマークが運命的に出会い、その二人を結び付けたのが愛国心というのが興味深い。世の中への不満に対して愛国心が逃げ場になっているリアルな現実を本作から感じ取れる。
 そして、スティーヴ・カレル演じるジョン・デュポンが非常に不気味な雰囲気を漂わせており、本作を興味深い作品に仕立てている。なぜこんな事件が起きてしまったのか?とハッキリさせない感じが余韻を残す。
 ハッピーエンドな映画を見飽きた人、サイコサスペンスが好きな人、ウヨクチックな人、そしてサヨクチックな人も。今回はフォックスキャッチャーをお勧めに挙げておこう

 監督はベネット・ミラー。トルーマン・カポーティーの伝記映画カポーティー。ブラッド・ピット主演の野球映画マネーボールがお勧め








 
 
 
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映画 突然炎のごとく(1962) 奇妙な三角関係のお話

2024年11月14日 | 映画(た行)
 三角関係というと我が国の政治家のような不倫絡みのドロドロの展開を想像するかもしれないが、本作はそのような展開とはちょっと違う。男二人(もう一人絡んでくるが)と女一人の組み合わせ。しかしながら男二人が一人の女性を奪い合うという展開にはならない。この男女の三人は時には三位一体のごとく仲が良かったりするのだが、女性があまりにも自由気ままに振る舞うのに、男二人が振り回されている印象を受ける。この映画の公開当時はまだ男性社会が幅を利かせていた時代だと思うのだが、そんな社会に鬱憤のたまった女性達は本作のジャンヌ・モロー演じる女性の生き方に憧れを抱くかもしれない。
 
 女性の奔放さに振り回される男性のダメっぷりも描かれているストーリーの紹介を。
 ドイツ人(オーストリア人?)のジュール(オスカー・ウェルナー)とフランス人のジム(アンリ・セール)は共通の趣味を通して親友同士になる。そこへ現れたのがフランス人女性のカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)。3人はいつも一緒で一緒に海へ遊びに行ったりする。しかしながら、いきなり河に飛び込んだり、素っ頓狂な行動を繰り返すカトリーヌに戸惑いながらも、二人の青年は次第にカトリーヌに惹かれていくのだが、押しの強いのはジュールの方。やがてジュールとカトリーヌが結ばれるのだが、それでも3人は一緒に行動する。
 そんな時に第一次世界大戦が勃発。お互いに祖国から徴兵を受けて、ジュールとジムは別れてしまう。お互いに戦争を生き延び、祖国でジュールはカトリーヌと結婚し、娘が生まれる。そしてジムも祖国で恋人ができる。お互いの無事を祝してジムはジュールから招待を受けてジュールとカトリーヌの住むドイツへ行き、3人は再会を喜び合うのだが、ジュールとカトリーヌの夫婦仲はすっかり冷めており、ジュールの提案もありジムとカトリーヌが一緒に暮らすようになるのだが・・・

 カトリーヌの自由奔放さが凄い。結婚していても平気で愛人を作るわ、ジュールとジムの間を渡り歩くわで一人の男では満足できない。メンヘラ状態で気分の浮き沈みが激しすぎて普通の男なら手に負えないように思える。しかしながら、この男二人が結構なダメっぷりを発揮する。カトリーヌから「あなたが頼りなのよ!」と言われるだけで直ぐに付いて行ってしまう。特にジムはフランスに恋人がいるのについつい甘い言葉に乗ってしまうだらしなさ。まあ、我が国の政治家も不倫してしまうんだから、女性に頼られたらついつい手を出してしまう気持ちもわからんでもない。そういう意味では本作は男女の機微がうまく描かれているように思える。しかし、最後にカトリーヌが笑顔でトンデモな行動に出るところは俺もドン引き。やっぱり女性は恐ろしい。
 ストーリー以外にもサイレント映画風な動きが面白かったり、ノリの軽い音楽が心地良かったり、それほど暗さ感じない。少しばかり味わい深い恋愛映画を観たい人に今回は突然炎のごとくをお勧めに挙げておこう

 監督はフランスのヌーベルバーグを代表するフランソワ・トリュフォー。結構おすすめは多いのだが、今回は彼の長編デビュー作品である大人は判ってくれないをお勧めに挙げておこう


 
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映画 さらば冬のかもめ(1973) ロードムービーの傑作

2024年11月12日 | 映画(さ行)
 1960年代後半から70年代前半にかけてのハリウッドの映画はよくアメリカン・ニューシネマと呼ばれるが、今回紹介する映画さらば冬のかもめはまさにその年代にあたり、アメリカン・ニューシネマの傑作と呼べるだろう。そして本作は仲の良い組み合わせではなく、非常に訳ありの3人組のロードムービーの体裁をとっているところもアメリカン・ニューシネマらしさを感じさせる。アメリカン・ニューシネマに限らず、ロードムービーなんかも多く今まで撮られてきており、多くの傑作を輩出しているが、本作もその例に漏れない。
 ところどころではコメディタッチを感じさせるのだが、それよりも偉大なるアメリカが幻想だったことをロードムービーで描くことによって閉塞感みたいなものを感じさせる。

 古き良きアメリカの価値観が壊れたことを感じさせながらも、その中でもがき苦しむアメリカを見れるストーリーの紹介を。
 アメリカのバージニア州にあるノーフォーク海軍基地において、海軍の兵隊であるバタスキー(ジャック・ニコルソン)とマルホール(オーティス・ヤング)は、上司から新米兵士で18歳の少年であるメドウズ(ランディ・クエイド)をポーツマス海軍刑務所(ニューハンプシャー州)まで護送する任務を受ける。メドウズは40ドルの万引き未遂の罪で8年間の刑期を受けることになっていた。
 当初バタスキーとマルホールは5日間のミッション完遂の所をさっさと2日間で終わらそうと考え、残りの3日間を遊びまくろうと企んでいた。ところがメドウズを連れていく内に、次第に3人の仲は深くなっていく。まだ人生の楽しみを何一つ味わっていないメドウズのためにバタスキーとマルホールは色々と羽目を外してしまうのだが・・・

 万引きをしてしまう少年のメドウズだが、体はでかいがどこか抜けていて、反抗することを知らずに何でもハイハイと返事をしてしまうタイプの人間。たったの40ドルを万引きしようとしただけで刑期8年を言い渡されても素直に従ってしまう。そんな自分の殻に閉じこもり、怒りをもたないようなメドウズに対して腹を立てるのが、チョイワル風で気が短いバタスキー。バタスキーがなんとかしてメドウズを男にしてやろうと護送中にもかかわらず、色々といかがわしい所へ寄り道する件は結構楽しめる。
 そして木偶の坊のようであったメドウズは成長するのだが、その成長の結末があまりに悲しい結末を呼ぶ。そして全編を通して家族、モラル、夢、宗教、政治などが当時の本作が公開された1970年代前半のアメリカでは既に崩壊されてしまっていることを目の当たりにする。
 夢のかけらもなく、どことなく息苦しい映画だが、異なる性格の3人組によって織りなされるロードムービーは楽しさもあり、最後にはちょっとした友情の中に希望の光も見える。暗い中にほんの少しの明かりが灯されているような内容が好きな人に今回はさらば冬のかもめをお勧めに挙げておこう

 監督はハル・アシュビー。少年とおばあちゃんの奇妙な交流を描いたハロルドとモード 少年は虹を渡る、ピーター・セラーズ主演のチャンスがお勧め。






 
 
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映画 ラ・スクムーン(1972) フランス製ギャング映画

2024年11月10日 | 映画(ら行)
 ギャングやヤクザをテーマにした犯罪映画なんかは今までも多く制作されてきているが、フランス製の犯罪映画となるとハリウッドのド派手なドンパチとは違って渋い雰囲気がある。そんなフランス製犯罪映画の魅力が詰まっている作品が今回紹介する映画ラ・スクムーン。当時フランス映画界でアラン・ドロンと双璧をなした人気者であるジャン=ポール・ベルモント主演の傑作だ。
 ちなみに本作で監督を務めるのがジョゼ・ジョヴァンニだが、彼の原作小説(ひとり狼)が基になっており自ら監督に乗り出している。ちなみにこの人は元々が強盗犯。その時の経験を小説に書いてきた人だが、本作も彼の経験が大いに活かされている作品である。

 早速だが、ベルモンド主演の作品の中でも面白い部類に入るストーリーの紹介を。
 1943年のマルセイユ。暗黒街であるマルセイユにおいて勢力を伸ばしつつあったザビエ(ミシェル・コンスタンタン)はボスの気に障り、罠に嵌って刑務所に送られてしまう。ザビエの親友であり、ラ・スクムーン(疫病神の意味)と仇名されるロベルト(ジャン=ポール・ベルモント)は親友を助けるためにマルセイユへやってくる。
 ロベルトは、マルセイユに到着して早々に刺客を向けられるがアッサリと返り討ち。逆にボスの所へ向かって成り行きでボスを射殺してしまい、ボスの縄張りを得ることに成功するのだが、裁判は非情にもザビエを強制労働20年の宣告。ロベルトはザビエの妹であるジョルジア(クラウディア・カルディナーレ)と協力してザビエを助け出そうと計画するのだが・・・

 親友を刑務所からの救出作戦がメインかと思いきや、ロベルトもザビエと同じ刑務所内にぶち込まれてしまうことになる。そこから脱獄作戦が見れるのかと思いきや、そんなシーンは全くないし、それどころか過酷な労働条件をのんで刑期を全うするのだが、ロベルトはあまりにもの代償を払うことになってしまうことに涙が出そうなる。
 暗黒映画ではあるが、実はロベルトとザビエの友情に胸が熱くなるストーリー。その友情の結末の悲哀はこれぞフランス製と言えるだろう。音楽は聴き心地が良いし、オープニングシーンが凝っている。そしてジョン・ウー監督が本作に大きく影響を受けていることがわかるアクションシーンも楽しい。
 実は本作品は同じベルモンドが同じ役を演じた勝負(かた)をつけろのリメイク作品。リメイク基はモノクロの映像だったが、本作はカラー作品。カラーにすることによってベルモンドの白色のマフラーは映えるし、クラウディア・カルディナーレが非常に華やか。なぜジョゼ・ジョヴァンニ監督が改めて自らの小説の作品をリメイクしようとしたのか理由が少しばかりわかったような気がした。ちなみに勝負(かた)をつけろとはエンディングが違うがこちらもお勧めだ。
 伝統的にすら感じさせるフレンチノワールに興味がある人、格好いいジャン・ポール=ベルモンドを見たい人、渋い暗黒街を描いた映画を観たい人には今回はラ・スクムーンをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したように小説家であり強盗犯だったジョゼ・ジョヴァンニ。他ではアラン・ドロンとジャン・ギャバンが共演した暗黒街のふたりがお勧め。










 
 
 
 
 
  
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