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日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
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塩野七生:著 『ローマ人の物語』 ~最後の努力~ (35)(36)(37)巻

2016-09-03 18:18:39 | 読書

 「善き意志から発していた」はずのローマ皇帝による統治も、いよいよ「最後の努力」と呼ばれる時代を迎えている、私の読書旅… 何だか哀愁を感じるのは台風も近付いており、一時的であるにせよ、昨日はいつもよりは涼しかったせいかもしれない。 現在は夕方であるというのに、室温28度で蒸し暑いし、決して快適とはいえない夏の終わりではあるのだけれど…。

 時代はディオクレティアヌスによるローマ初の「絶対君主制」へと移り変わっていた。彼は農民の出であるようだ、とはっきり出生が分かっていないらしい。いずれにせよ豊かではなかったようで、志願してのミリタリー出身者であった。彼の前の皇帝たちが、懸命にローマ帝国維持のために扮装し、それなりの成果を上げていたにもかかわらず、側近から裏切られるという惨事を二度も経験した時代を見てきた人でもあった。それが発端かどうかは知らないが、これまでのカエサルが築いたローマ帝国初となる、’絶対’君主として、「庶民と一緒にテルマエに入って裸の付き合いをするなどもってのほか!」と思っていたかどうかは不明だが、市民と溶け込む皇帝ではなく、一段高い場所にいて、宝石を散りばめた王冠を頭上に乗せるという皇帝になった…らしい…著者の塩野さんいわく、ここにきて、ようやく? ハリウッド映画に出てくるローマ皇帝のイメージにピッタリなローマ皇帝が登場することになった…みたい…。(ハリウッド映画のローマ皇帝、見たことないけれど…)服装も当然ながら派手になったらしい。そういえば、日本映画のテルマエ・ロマエのローマ皇帝はどのような いでたちだったっけ…?

 話を戻し、この時代のローマとして大きな特徴としては、「四頭制(テトラルキア)」制度だろう。それまで次期皇帝を息子に指名するという目的で、「カエサル」に任命することはあった。しかし、皇帝以外に副皇帝として同時期に共に統治を遂行する二人、或は四人からなる、「四頭制(テトラルキア)という国を防衛の面から4人による皇帝によって、それぞれに主に軍事面で統治するというのは初のことだった。何もローマ帝国を四分割するというような気はディオクレティアヌスにもなかったようだが、このことがお互いの競争心をあおり、結果的には軍事力の強化、増税、という結果を生んだ。帝国の防衛には、その後、二十年間は成功したが、増税は特に農民に重くのしかかり、それまで豊かな小麦やオリーブの産地であったアフリカ地域の農民が田畑を捨て、都市へ流れ込んだことによる砂漠化となった。これは他の地域も同じことで、それまで地方に認められていた自治は、絶対権力の皇帝に集中することになるのだが、皇帝が4人に増えたことによる情報伝達の遅れ、都市国家としてのローマの衰退にもつながっていく。余りにも多くの重要ポイントが述べられていて、私も「まとめ」ながら、「あれも、これも」… これでは、まとめにならないので、これまでローマ帝国として高度成長期から繁栄していた時代のローマの 「統治のしくみ」を箇条書き的に振りかえってみると…

 何より大事なのは、税制だろう。今の日本も「痛み」「増税」「福祉に還元」そのための「消費税増税」と当然のように議論される。長年、繁栄していた頃のローマの場合は…?

 1 広く、浅く! 低い税率! 何より誰にでも分かりやすい税制度! が特徴といえる。古代ローマの時代には、食うか食われるか、すなわち勝者か敗者か、という価値観であり、勝者が敗者から税を取る、というのが当たり前という価値観の世の中だった。そんな古代にあって、ローマ帝国は、勝者であるはずのローマ市民(農民すべて)にも税の負担を求める。しかも、納得して!収めている。 十分の1税と呼ばれるもので、その名の通りの税率。8割の税率がまかり通った周辺諸国とは違い、かなり低い税率であると同時に、ローマや属州で暮らす農民も、「ローマの兵士達が兵役についているお陰で、我々農民は、安心して農業に専念できる」という、いわゆる「治安維持に貢献してくれて、ありがとう税」みたいな感じだろうか。10分の1税は、誰にでも分かりやすく、税務署員の数も少なくて済む。いわゆる国家公務員の数も少なくて済めば、軍事費も低く抑えられる結果に至った。カエサルの後を継いだ皇帝も、兵役につく人数を大幅に削減し、軍事費削減に成功している。

 税率は低く! 広く‼ 浅く! 分かりやすく! 軍事費削減! 誰もが納得して税金を納める! なんて画期的な制度なんだろう~と思ってしまう。 ただ…軍事費の削減は分かった! だが、福祉や古代ローマが得意とした公共事業に必要な費用はどうやってまかなったのか? という疑問もわく。これについても、塩野さんは これまでの考察の中からも分かりやすく述べてくれている。

 2 少ない予算で 福祉や公共事業まで~ 古代ローマの特徴であった、「公共心」が特徴! もう一つ、今でいう「地方分権」がカギ!

「最後の努力」の当時のローマに至っては、完全に「地方自治権」が消え去ってしまい、カエサル以後、ローマが維持してきた最もローマらしいローマの良さも消滅した。皇帝による絶対君主制がそれだ。 ローマは勝者となった後も、敗者の自治権を認めてきたくらいだから、地方に自治権を認めてきた。勝者となったことで、国有地を多くもっていたローマだったが、その国有地を地方は借地としている。借地料は、育成資金として貧しい子供たちを援助することに使われた。いわゆる利益の社会還元だった。どこから徴収した税金や借地料が、具体的には”何に使われているのか”、ここさえ ”はっきり” していれば、市民にとって、これほどスキッとする税金の使われ方はない。消費税を増税したとして、本当に日本人のための福祉に使われているの!?  異国の民に何億ドル拠出というニュースを聞く度に、(世界一、二を争う借金国家なのに… 困っている人は国内にも多くいるのに… かの国に至っては少女像も撤退されていないのに…と思ってしまう自分は、人類皆兄弟の精神が欠落しているんだろうか…そうなのかも…)

 

 3 公共心 の方が後になってしまったが、ローマの遺跡には、古代ローマの皇帝の名が付いているものが多い。皇帝に限らず、一般市民の名も図書館や街道に「石碑」として今も残っているという。例えば、ボンペイウス劇場。 彼が私財を投入し、ローマ市民のために建設した。出来上がった劇場には、彼への感謝も込めて「ボンペイウス劇場」。一旦は完成し、長年使われてきた街道でも、修復が必要となる。そんな時は、富裕層が私財を使って修復にあたったらしい。日本であれば、寄付も黙ってするのが美徳、とでも言われそうだが、古代ローマは…というか、ハリウッドスターもヨーロッパ等で活躍するスポーツ選手もそうだが、「公表する」のと同じく、「石碑に名を刻む」すなわち、建築物に…ということは、歴史にその名を刻む、名を残す、ということでもあった。図書館もまるごと寄贈されたこともある(「ローマ人の物語」のどこかで読んだ)古代ローマらしい。テルマエ・ロマエや劇場、街道、水道etc 古代ローマの皇帝が自ら率先して公共事業に私財を投入し、その名を刻むことは、富裕層の虚栄心に訴えかけることにも成功したのだ。現代であれば、膨れ上がるオリンピック予算を低く抑えるため、代々首相を務めてきて私財もそれなりに蓄えているであろう、安倍晋三氏が、国立競技場を私財を投入して建設することを決定する!というようなものだ。安倍マリオに好反応だった海外の人々も知ることとなる。何より日本国民が大喜びで、安倍競技場と命名することに賛成!!!すること間違いなし‼だと思うんですが…いかがでしょうか? 

 こうして 国家~地方~個人(私財で公共事業に貢献した富裕層と、一般市民…低い税率ながら勝者であるにもかかわらず納得して収めた税収)を3本の矢とした古代ローマは、長きに渡り繁栄を謳歌した…と再確認した次第。 これらが絶対君主制へと移行し、(当時のローマとしては、この道しかない、という判断だったのだろうが…結果的に崩壊へと向かう)増税、特に軍事費の増大、地方自冶の崩壊、公共心の低下…すべてにおいて、もはやローマ的であったことが、この時期になると、ローマではなくなってしまっていた。多神教であった 「あくまで決めるのは人間、努力する過程において傍にいて、見守るよ…というローマ式の多くの神」も 「人間はこうあるべき、と人を管理する神、古代のキリスト教の存在」が、このあと どのように関わっていくのか… この後は、「キリスト教の勝利」へと続くのです。私はまだ読んではいませんが… なんだか、古代ローマの歴史を通して、歴史のみならず、言語学(ラテン語~英語~スペイン語/イタリア語など)、税制度、政治学まで ひろ~く眺めさせて頂いた、そんなお腹いっぱいになる膨大な書物…でした。古代ギリシア人は学問を分けたけれど、どの分野もクロスして学ぶ必要がありますよね、ほんと。時間が許せば参考文献にもあたりたいのですが、今のところカエサルの著書のみ、日本語訳を図書館に発見☆ ほんとはキケロの書籍(書簡)が読みたい…でも…ない。ギリシア、イタリア語が分かる人っていいなぁ。

 

 

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