健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

肥満予防に重要なのは食事の量より時間

2013-02-21 08:30:31 | 研究
決して大食いなわけではないのに、なぜか太ってしまう―。そんな人は、食べる時間が不規則になっていないか、もう一度確かめてみる必要があるかもしれないという研究結果が報告されました(あなたの健康百科 by メディカルトリビューン)。規則正しい食事によって得られる脂肪細胞の概日リズム(サーカディアンリズム、体内時計)が、脳で刻まれる概日リズムとは別に、エネルギーの代謝や食事の行動をコントロールしていることが分かったというのです。これまでにも、睡眠障害があると肥満になるリスクが高いこと、健康な人でも夜間労働者に肥満や成人病が多いこと、睡眠時間が短くなると体重が増加する傾向があることなど、脳の概日リズムとエネルギー代謝の間には密接な関係があることは広く知られていました。一方で、脂肪細胞が体のエネルギーバランスを監視し、必要に応じてレプチンなどのタンパク質や脂肪酸を分泌し、脳の摂食中枢を制御していることが分かっていましたが、あくまで脳の概日リズムによってもたらされる摂食のタイミングに従うだけの、従属的な概日リズムだと考えられていました。つまり、脂肪細胞が食事のリズムをコントロールをしているものの、それは脳で刻まれる概日リズムの支配下にあると思われていたのです。そこで、脂肪細胞の概日リズムが脳の概日リズムの支配から独立して働くのかどうかを明らかにすべく、概日リズムをつかさどる時計遺伝子(Arntl=Bmal1)を脂肪細胞でのみ働かないようにさせた変異マウスを作製したところ、このマウスの食事のリズムは、脳の概日リズムが正常にもかかわらず、本来の活動期である夜間から昼間へと総摂取カロリーの10%分が移動したというのでう。また、活動量や活動リズムには変化がなかったが、エネルギーの消費量が大幅に減少し、正常なマウスと較べて著しい肥満傾向を示したそうです(体脂肪率で1.5倍)。これらの結果は、脂肪細胞が刻む概日リズムが消失すると、主であるはずの脳の概日リズムが正常であっても、食事のリズムやエネルギー代謝に大きな影響を与えることを示しています。つまり、脂肪細胞の概日リズムは脳の概日リズムから独立して働くことができるのというのです。また、脂肪細胞の代わりに、肝臓や膵臓(すいぞう)でのみ時計遺伝子Arntlを働かないようにさせても、こうした変化が認められなかったことから、脳や脊髄などの中枢以外では脂肪細胞の概日リズムだけが食事やエネルギー代謝をコントロールできることも分かったそうです。
脂肪細胞の時計遺伝子を破壊することで概日リズムが乱れ、肥満につながることが分かったものの、そうでなくても、不規則な食事や大食いで脂肪細胞の概日リズムが乱れ、食事のリズムが変わることが知られています。今回の研究ではさらに、通常のマウスで食事の時間を本来の就寝時間帯へ強制的に変更させると、変異マウスと同じく肥満になることも分かったそうです。不規則な食事は、それだけで脂肪細胞の概日リズムを乱し、肥満になりやすい体質を作るようなのです。以上の結果から、太らないためには食べる量だけではなく食べる時間も大事なことが明らかになりました。でも、分かってはいてもそれが難しいという人に朗報となるような結果も示されています。脂肪細胞の概日リズムを破壊した変異マウスでは、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸の血中濃度が著しく低下していたため、これらの脂肪酸を変異マウスに与えたところ、食事リズムの乱れとともに肥満も解消されたというのです。どうしても夜遅くの食事になりがちなときは、せめて積極的に青魚を取ることで、肥満へのスピードを遅らせることが可能かもしれないというのですが・・・・・。
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