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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 377 ドラフト展望 ①

2015年06月03日 | 1983 年 



今年も暑い甲子園大会が終わり、いよいよドラフト会議に向けてスカウト達が本格的に動き出す。今大会で目立ったのは水野(池田)だがスカウト達が絶賛する声はどうやら建て前のようだ。確かに実力は投打とも高校生として抜きん出ている事は間違いないが、今のままプロでやっていけるかと問われると首を傾げる。打撃に関してはプロで経験を積めば一軍でプレー出来るレベルまでいくのは可能であろうが肝心の守る所が限られてくる。肩は強いがあのスローイングでは外野は務まらない。では一塁手?しかし投手としてのフィールディングを見る限り内野手は難しいだろう。そもそも一塁は動きの鈍くなったベテランや助っ人用のポジションに空けているのが各球団の現状で今は寧ろ投手としての評価の方が上ってきている。右打者の外角に決まる直球は確かに威力があり内角をえぐるシュートも通用しそうだ。

水野に関しては各球団の評価もまちまちである。近鉄は投手として評価していて「暫くは投手で。大学に進学したと思えば打者転向は3~4年後でも遅くない(担当スカウト)」と。阪急は打者として考えているが評価は藤王(享栄)より下で「昨年南海に入った畠山の契約金6千万円はとても出せない」としている。巨人はまだ投手でいくか打者かは決めかねていて同様にヤクルト、広島、西武も検討中だ。評価が分かれているのは仲田幸(興南)も同じ。阪急などは左腕不足で補強が急務であるだけに飛びつきそうだが「時間がかかりそう。2~3年先まで待つ余裕は今のウチには無い」と否定的。対照的に高く評価しているのが阪神でスカウト達には球団から仲田については箝口令が敷かれているらしく仲田に対するコメントは一切出していない。

仲田が素晴らしい素材である事は間違いなく魅力的だが不安も付きまとう。右打者の内角低目にズバリと決まる直球は確かに威力がある。しかし続けて同じ所に投げられる制球力がない。スピードと違って制球は練習すれば良くなると言う意見もあるが、過去にスピードはあるが制球難を解消出来ずに球界を去った先人は多い。制球難は直らないという持論の下、近鉄スカウトは仲田と同様に三浦(横浜商)に対する評価も低い。巨人は仲田や三浦に興味はなく秋村(宇部商)と吉井(箕島)に熱視線を送るが広島は2人には全く無関心で荻原(仙台商)を虎視眈々と狙っている。実のところ荻原は今大会での掘り出し物の左腕である。

野手で目立っていたのが池山(市立尼崎)である。大型遊撃手でありながら捕球の際にしっかりと腰を落とす基本が出来ている。何度かイレギュラーバウンドが襲ってきたが慌てず対応していた。これはかつての有藤(現ロッテ)の高校時代を彷彿とさせる。打撃は長打力も備えているが課題は変化球への対応だが、近鉄は打撃フォームに欠陥があり時間がかかると指摘し、更に近鉄は同じ大型内野手の金村の育成に手一杯で指名には慎重だ。阪急は春木(駒大岩見沢)にゾッコンで守りだけなら朝山(PL)の評価も高い。確かに春木の強肩はプロレベルだが打撃は力不足は否めず巨人や広島はリストにさえ入れてない。

野手に関して多くのスカウトの目は甲子園に出場していない選手に向けられている。藤王と板倉(早実)である。ただし難点もある。それは2人が一塁しか守れないという事。一塁は体力面から動きが鈍くなった強打者が守るというのが今のプロ野球界の実情から指名を躊躇している球団は多い。その点でDHのあるパ・リーグ球団の方が指名しやすく阪急、近鉄、西武あたりが指名を検討しているが近鉄はセンバツ大会より評価を下げ撤退。セ・リーグの巨人は板倉はリストから外し藤王は検討中との事。中日は地元のスターを逃す訳にはいかず山内新監督の投手希望も聞き入れず藤王指名に動いている。過去に地元出身の槙原(巨人)や工藤(西武)を他球団に獲られた事に対する批判が名古屋圏で強く、二の舞いは御免という所か。
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