「ホエールズ横浜へ移転表明」…川崎市民の反対署名運動も効果なく、大洋球団は横浜移転を決定した。
54万人の反対署名むなしく
大洋ホエールズの横浜移転が本決まりになった。8月2日、大洋球団の横田球団社長が伊藤川崎市長に「前オーナー(謙吉氏)の遺志を継いで横浜市に本拠地を移すことを決めました」と通告した。伊藤市長は移転反対運動の先頭に立っていたのでガッカリした表情のままだった。「川崎市民の心と企業の論理の違いを冷酷無残に見せつけられた思いだ」と市民感情を代弁した。川崎市民はホエールズが横浜に出来る新球場に移転する話を聞いて、なんと54万人もの反対署名を集めた。川崎市民は103万人。その半数を超える人数を巻き込んだのだから凄い。大洋球団は移転通告する機会を幾度か先送りし市民に淡い期待を持たせたが結局、本拠地移転を表明した。
横田社長は球団も企業であるから営業成績を第一義に考えなくてはと語った。川崎に本拠地を置いて以来、22年間ついに儲からない川崎を出て横浜に行くのだという。横浜に移ることは早くから予測されていた。昨秋、西武グループの国土計画が横浜スタジアム建設を発表した際、建設費用の一部を賄うとして一口250万円の指定席を売るにあたって「巨人戦が観戦できます。向こう45年間に渡りセ・リーグの試合を観戦できます」とPRすると250万円×800口が瞬く間に売れた。その時点で大洋球団の横浜移転は決まっていた筈である。そうでなければ計20億円分の詐欺行為になってしまう恐れがあるからだ。
反対運動の中心は川崎市と労働組合だった。「プロ野球が無くなったら川崎には健全な娯楽が無くなってしまう。競輪と競馬の街になってしまう」なにも競輪や競馬が不健全娯楽ということではないが、未成年の子供たちが楽しめるプロ野球ほど市民に浸透していない。去り行くものに対する情の大きさが反対運動を盛り上げたのだろう。「大洋ホエールズは川崎ホエールズだった。選手は川崎市民のシンボルでもあった。昭和35年に優勝した時の感激は忘れられない」と存在して当たり前で普段は気に留めない大洋ホエールズが無くなる寂しさ。プロ野球と市民との繋がりが鮮明に浮き出たフランチャイズ意識の発掘になった。
大洋の代わりにロッテが進出?
8月2日に最終的な決定を川崎市に通告した横田球団社長は「今までお世話になった恩は忘れない。巨人戦も何試合かは川崎球場でやるようにしたい」と話すと伊藤市長は「どうしても出て行くのなら代わりのプロ野球球団を川崎に誘致することに大洋球団も協力して欲しい。巨人戦も川崎球場でより多く開催するよう努力して下さい」と申し入れた。現時点では巨人戦を川崎球場で何試合やるかは決まっておらず、川崎市が納得できる提案を大洋球団が出来るかは未知数である。
一方で他球団の川崎誘致に関してはロッテオリオンズの移転が有力視されている。ロッテは仙台に準本拠地を置かざるを得なくてジプシー生活を送っていたが、これでようやく地の利のいい本拠地を持つことになりそうだ。だが仙台市では早くもロッテ移転反対の声が一部で上がっているが、大洋球団が去る川崎市ほどの動きはない。現実問題として巨人戦がないパ・リーグだけにロッテが去ることに仙台市民の間では運動の盛り上がりは欠けている感じだ。
プロ野球に新時代到来?
新球場の横浜スタジアムの前身は平和球場。それ以前にはルー・ゲーリック球場と呼ばれていて、日本で最初のナイター(進駐軍主催)が行われた由緒ある球場だ。昨年10月以来、改装工事が進められ全面人工芝で観客席を移動させて野球以外のスポーツや催し物にも使用できる3万人収容の総合スタジアムである。スタジアム建設は横浜市と国土計画が主体になって進められている。来年3月20日の完成予定でこけら落としには巨人や阪神を招いてオープン戦を開催する予定だという。
建設主との関係から大洋ホエールズの移転が正式に完了した暁には、オーナー企業が大洋漁業から西武(国土計画)に変更するのではという見方がある。既に大洋球団の株の45%を西武グループが保有しているといわれていることからそういった見方があるのだろう。だが堤義明国土計画社長は「球団経営には全く野心がない」と全面否定している。しかし大洋ホエールズの横浜移転はどこか新時代の到来を匂わせている気がしてならない。
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