この街を去ろうと思っている。
引越しの日取りなどはまだ決めていぬが、諸々と考えることが目白押しにある。
マンションとこの家を行き来することにしようか、それともこの家は、街のお役所の空き家管理にまかせようかと、思いが定まらぬ。
マンションへ帰るとなってしまうと、急にこの家の周辺が愛おしくなる、又は別れがたくなる。
愛おしい景色に、隣の果樹園から、山茱萸の花越しに見る我が家も。
亡くなった 殿 がマンションの規約で飼えなかった。
息子から、あづかった 殿 に愛情が移り、ここに、越してきた。
毎日の散歩で、私の健康管理もできた。
近所へ用事がありちょっと出かけた。
広いお庭に季節の花が沢山咲いている。
庭の隅に菫が一面に。
クリスマスローズも、うつむき加減に可憐な表情で、椿の根方を飾っている。
おしゃべりをしながら、家で待っている 姫 を思い出す。
午前中は、ベランダに出て家の中に入ろうとしない。
ずーっと、見守っていたが、隣家への用事を思い出して、ヒメハウスへ強制的に抱き入れ、出かけてきた。
骨と皮になっていて元気な頃の半分くらいの大きさになっている。
とりとめの無いお喋りに花がさく
「鍵をかけずに、家を出てきたから、帰らなくては、、、、。我が家に泥棒が入っても盗られる物はないけれど、姫 を盗られると困るから」
と隣家を辞した。
姫 は玄関の開く音を待っていたらしく、
「ニャー」とベランダの窓の所へ。
窓を開けると、深いお皿に溜まったいる水を飲みに。。。。家の中の水より、なぜか外の水が好き。
後ろ足は骨ばかりになっていて、前足だけで後ろ足を引きずるようにふらふらと歩く。
見ていると涙が出そうに。
肩で息をしていて、私が座っているリクライニングの椅子にも何日か前から跳び上がれなくなっている。
姫の最後の日まで、この家にいて、看取ってやりたいとも思う。
この四~五日、ベランダで 日向ぼこ?寝るのが唯一の楽しみみたいだし。
それもここに住んでいる理由の一つ。
🍒 名を呼べばこたへる猫よ忘れ霜