
散歩の途中、ある屋敷の菜園に大きな辛夷の木を見つけた。
15メートルはあるだろう。
少し日影の土地だ。梅は今が盛り、ピンク色をした木瓜、雪柳と辛夷の木。
辛夷を見上げると、未だ莟みで開いている花はまばらである。
☆ 月夜なる千珠の辛夷吹かれたつ 石原八束
☆ 夜も青空辛夷千手の拳開く 原子公平
木蓮も辛夷も、莟みの時は蝋燭のように天を仰ぎ咲かんとしている。
千珠のような辛夷が夜空に、、、
現在の俳人が詠む句も良いが、古い俳人の句にも味がある。
類想だ、類句だと我が結社では通らないが。
インターネットで直ぐに検索されることも無かった。総合誌で他の結社の句を読むことも少なかった。
率にすると古い人ほど有利だ。今よりか、言葉を自由に使えた。
しかしながら両句、発想が同じに思える。
畦径から辛夷の写真を撮る。
大きい木にまばらに花。近づいて開いた花を写そうとした。

犬が吠える。
自分の家の畑の傍に不審な人物が。。。お利口だ。ちゃんと番犬の役目をはたしている。

盛んに吠え続けるから、門構えの屋敷から主人とおぼしき方が出てきた。
「辛夷の木が見事だから、写真を撮らせていただいています」
「犬がやかましいものだから、すみませんね。どうぞごゆっくり」
と云って下さった。
それっきり犬は吠えるのを止めた。
大きなあくびをして、そっぽを向いてしまった。
もちろん、こういう場合も、私は 殿 の事を偲んでいる。
🍒 辛夷咲く丘飛行機の航路らし
🍒 辛夷咲く山家の番犬よく吠へて