
風邪をひいたりして、すっかり旅行記が中断してしまった。記憶が薄れないうちに書き留めておかなければ、と言うことで、今日はエアラインについて書いてみたい。私が利用したのはもちろんエコノミークラスである

今回のツアーは「大韓航空創立40周年記念特別企画ツアー」と言うことで、利用エアラインは申し込みの時点で大韓航空のLA直行便であることは決まっていた。大韓航空の利用は、2年前の韓国ツアーで経験済み。その時の印象は「短いフライトで、よくもまあコマネズミのように働くものだ」と、キャビン・アテンダント(以下、CA)の着陸ギリギリまでの仕事ぶりに驚いたものだった。着陸間近だと言うのに、機内販売で狭い通路を行ったり来たりしていたのデスよ

今回はさすがに往復共に10時間前後の長時間のフライト。機内の快適性はもとより、航行の安全性が気になった。それでネットのクチコミ情報を調べてみたが、過去の大韓航空機爆破事件の話もあって、あまり芳しくない。とは言え、ここ数年は目立った事故は起きていないはずである。
それでは機内の快適性はどうか?私達が利用したKE001便は成田発と言っても、始発は韓国の仁川空港。成田は経由地で、既に座席は仁川からの客で一部埋まっているのである。ネットのクチコミ情報には5年~10年以上前のものがあって、それには「機内にキムチを持ち込んでいる韓国人客が大勢いて、機内全体がキムチ臭かった」「韓国人客は騒々しくてマナーがなっていない」なんてコメントもあり、心配がなくもなかった(改めて考えてみれば、どこの国にも独特の匂いはあるもの。それが外国人には気になるだけの話かもしれない)。
しかし、実際乗ってみたら、一部の年配客に、勝手に席を移動したり(→往路はほぼ満席に近かったので、結果的に”おじさん”は本来の席へ戻ることになった)、何度もCAを呼びつけたりする人がいるにはいたが、全般的に見て、韓国人客のマナーの悪さはそれほど気になるものではなかった。10年も経てば誰だって旅慣れて、当初の舞い上がった気分も幾分落ち着き、その立ち居振る舞いも洗練されるものなのだろう。かつての日本人がそうであったように。
機内装備は、韓国仁川からLAへ直行する便は、各座席の背面にパーソナルモニターを備えた最新鋭機が就航しているのだが、残念なことに成田経由便にはパーソナルモニターが付いていない(※注> 2010年よりパーソナルモニター装備の新型機が就航しているらしい。詳しくは→大韓航空公式HP)。8年前に利用したマレーシア航空でさえ、各座席にモニターは付いていた。当時小4だった息子は、それでテレビゲームに興じて、退屈な長時間のフライトを乗り切った(苦笑)。それほどみた目に古い機体という印象はなかったが、国内線並の装備なのはちょっといただけない。
しかし、前回の搭乗経験で周知の通り、大韓航空のCAは働き者である。こちらが恐縮するくらい、忙しなくサービスに奔走している。乾燥した機内では特に喉の渇きを覚えるものだが、こちらが飲み物を要求するまでもなく、心憎いタイミングで飲み物を提供してくれる。おかげで、長期フライトに伴うストレスはかなりのパーセンテージで軽減されたように思う。
また、ネットのクチコミで一部指摘のあった機内トイレの汚さも、今回のフライトでは問題なし。エコノミークラス症候群の予防や気分転換の目的(=身体を少しでも動かす)もあって、私は何度となくトイレを利用したが、単に清潔なだけでなく、ペーパーのセッティング等、常に完璧な状態だった。乗客へのサービス、機内コンディションの保全等、CAへの指導が徹底されているのだろうか?微妙な差ではあるが、CAの仕事量で日系エアラインは大韓航空に負けていると思う。
ただし、夫も指摘していたが、狭い通路ですれ違う時のCAの対応に関しては、日系のCAに軍配を上げたい。クチコミで「大韓航空のCAはサイボーグのように…(この後「美形」と続く)」と言う記述があったが、通路ですれ違う際のCAの態度には、厳格なマニュアルの存在を窺わせる、「マニュアルに書かれていることは完璧にこなすが、それ以外ではあまり気を遣いたくない」とも言うべき”そっけなさ””冷たさ”を感じたのである。その割り切りようは正にサイボーグそのもの。
乗客へ「道を譲る」と言った意識は毛頭ない印象だ。或いは譲るにしても、瞬間、気を抜いて激務の疲れをその表情に垣間見せる感じ。そこに笑顔はない。あの配膳時の、彼女達の美しい笑顔はあくまでも業務用で、常に見せてくれるものではないのだ。もっとも、やるべきことはシッカリやってくれているのだから、クレームをつけるほどのものでもない。あれだけ容姿端麗で、日本のCA以上にエリート意識もあるであろうCAは、内心エコノミー客など「カボチャ」扱いなんだろうな。こちらとて、たいした料金は支払っていないから、エラソーなことは言えない(笑)。何れにしても、大韓航空のCAのプロ意識はたいしたものである。昔乗った某米国系エアラインや某伊国系エアラインのCAとは比べるべくもない(その真の力量を問われるのは有事の際の対応か?)。

当初はパーソナルモニターもなく長時間のフライトをどう過ごそうかと言う懸念があった。しかし、往路は現地に朝到着(日本時間の深夜1時)で、到着後すぐに市内観光に行く予定もあり、私は機内では食事の時間以外はできるだけ眠る


結局、往復共に国際線搭乗の楽しみのひとつである映画は見ず終い。見逃して損した、と思うほどの映画でもなかったのが幸い。特に邦画なんて、それをたまたま見た外国人に、邦画の代表的な作品のひとつと思われたら、それで邦画のレベルを判断されたら堪ったもんじゃない、と言うレベルの作品だった。どうしてこんな作品を、大韓航空はチョイスしたりしたんだ?!

と言うことで、多少の不満はありつつも、大韓航空での長時間のフライトは、私が事前に目にした評判を良い意味で裏切ってくれて、なかなか快適な空の旅であった。今回の利用を機に、我が家は大韓航空のマイレージカードを作ってみたが、コストパフォーマンスを考えれば「ヨーロッパへ行く際にも、仁川経由で大韓航空を利用するのも悪くないかな」と私自身、今回の利用で思ったくらいだ。
ところで大韓航空と言えば、連想されるのが韓国の仁川空港*。ここ最近、前原国土交通省大臣の「羽田空港ハブ空港化」発言で俄然ライバル視されている仁川空港だが、NHK発の韓流ブームと共に、日本の地方空港からのアクセスの良さもあって、年間138万人もの日本人利用客がいると言われている。今や極東アジアのハブ空港としての絶対的な自信を持つ仁川空港は、日本の前原発言を巡る騒動を静観する構えを見せる余裕すらある。現実問題として、羽田空港の利便性を今後さらに飛躍的に高めないと、日本は航空競争でも中韓シンガポールの後塵を拝することになるのは確実らしい。それとも、既に今さらどうあがいても遅いのかな?
今回の航空行政の一件に限らず、あらゆる分野において、日本の行政の「未来を見据えた戦略のなさ」「問題発生時の対応の拙さ」が目に付く。根本的に何かがおかしいのかもしれない。それが何なのか、システムの問題なのか、携わる人間の問題なのか、具体的にズバッと指摘できない自分のぼんくら頭がもどかしい

【仁川空港*】
国家戦略として、路線開設や便数を自由化する「オープンスカイ政策」で、アジアの拠点(ハブ)空港を目指している。ソウル市中心部から車で約1時間。就航している定期便は43カ国124都市で、アジアの空港ではトップクラス。日本とは28の空港を結ぶ。
2001年3月に開港。24時間運用で、昨年6月には3本目となる4,000m滑走路の使用を開始。発着回数は年間41万回と、羽田空港より10万回以上多い。ハブ空港を目指して着陸料を成田(80万円弱)の半分以下(20万円強)に抑え、新規路線を開拓。これは「朝鮮日報」曰く、政府、空港、航空会社~3者の協力態勢の賜物。
昨年以来、景気悪化や燃料費高騰で打撃を受けた航空業界だが、大韓航空やアシアナ航空は、国際線乗り継ぎが便利になるようダイヤ改正し、景気回復も手伝って、既に不況を克服。
4本目の滑走路建設計画を進め、将来的に国際線利用者数を2,956万人(2008年)から1億人に増やすことを目指す。さらに空港周辺で人口約51万人の新都市建設が進められ、今月19日には空港と新都市を結ぶ仁川大橋(全長21.27km)の供用が開始、アクセスが改善した。
【羽田空港ハブ化への課題山積】
羽田空港がハブとなるには、新滑走路で発着回数を増やすだけでは不十分。5本目の滑走路を整備する他、飛行機の安全運行の為に、米軍が管制業務を行う「横田空域」のさらなる返還が必要。
4本目の滑走路が2010年に供用され、発着回数が11万回増の41万回になっても、羽田乗り入れを希望する航空会社は多く、発着枠の不足は解消できない。成田空港を併せても63万回がやっと。首都圏の航空需要は20年後には94万回に達すると予想され((財)運輸政策研究機構調べ)、大幅な不足が生じるのは明らかである。これに対応する為、羽田空港の沖合に5本目の滑走路を新設する必要があるが、技術的な観点からも、1兆円とも言われる工事費の財源をどこから捻出するかと言う観点からも難しい。
(以上、赤字部分は10月25日付サンケイ・エクスプレス7面記事より抜粋)