
26歳で早世した童謡詩人、金子みすゞ
今日16日まで横浜高島屋で開催の
「金子みすゞ展」に昨日行って来ました。
金子みすゞは山口県仙崎に生まれ、
あの西条八十に「若き童謡詩人の巨星」と
賞賛されながら、苦悩のうちに26歳で
自ら命を絶った童謡詩人です。
彼女が世を去ってから半世紀を経た1982年、
文学者矢崎節夫によって、童謡詩を綴った
彼女の直筆の3冊の手帖が発見され、
その素晴らしさが再評価されました。
平易な言葉で、小さきもの、弱きもの、
身近にありながら殆ど顧みられることのない
ものなど、この世にあるすべてのものへの
愛情と慈しみと淋しさや哀しさが綴られている。
目線も上から見下ろすのではなく、
対象と同じ高さで、まるで寄り添うかのようです。
実は6年前の1999年に東京大丸ミュージアムでも
同様の展覧会が開かれたのを見に行ったことが
あります。その時の展示がどんなものだったのか
殆ど忘れてしまったのですが、
唯一覚えのある、再評価のきっかけとなった
3冊の手帖は、今回も展示されていました。
手のひらに収まるほどの小さな手帖。
彼女が自作の童謡詩512編を自ら書き写した
手作りの童謡集です。この写しが西条八十にも
贈られたとのことですが、
それは未だ発見されていないそうです。
久しぶりの再会に、思わず見入ってしまいました。
みすゞは本屋の店番をしながら、詩作に励んで
いたそうです。仕事柄、いち早く新しい本を手に
とることができたのは、同じく本と文房具を扱う
店の番をしていた私も経験したこと。同様に私も
せっせと作文して、新聞社や出版社に応募しては、
採用されるのを励みにしていました。
まだ子供だったので、原稿料の代わりに図書券や
万年筆などいろいろいただきました。
しかし、それ以上に自分の書いた文章が活字に
なるのが幼心に嬉しかったのを覚えています。
もちろん西条八十が選者だった雑誌『童謡』に、
わずか10カ月の間に23編も採用されたみすゞとは
レベルが違いますが、似通った境遇に親しみを
覚えました。
西条八十にもその才能を高く評価された
みすゞがなぜ自害するに至ったのか?
ちょうど前回の展覧会が実施された頃、
TBS系で放映された松たかこ主演のドラマでは、
貧困にあえぎ、夫に詩作を禁じられるなど
八方塞がりの中で、病に冒されるみすゞが
描かれていました。
童謡を書くために生まれて来たような人が
それを禁じられたら、書きたくても病で
身体が思うように動けなくなったら、
後には絶望しかない。翼をもがれた鳥
のように、生きることができなくなって
しまう。そんな悲運を感じました。
もちろん、ドラマで描かれているのは
後年の研究者の解釈に基づくもので、みすゞの
本当の苦悩は、みすゞ本人にしかわからない。
しかし、その非業の死を乗り越えて、
長い年月に耐えて、彼女が遺した童謡は、
出会った人々に感動を与え、そして童謡自身
作者のみすゞの分まで新たな生命を日々得ている
のではないかと思います。
既にその童謡詩集は100万部を超える
大ベストセラーとなっていますが、
もしまだご覧になったことがないのであれば、
書店で手にとってご覧になってみてください。