はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

今年(2011年)の米アカデミー賞には正直がっかり

2011年02月28日 | 映画(今年公開の映画を中心に)
 『英国王のスピーチ』は良質な作品だとは思うが、米アカデミー賞作品賞に値するか、と問われたら、私は首を傾げざるを得ない。理由はレビューで書いた通り。

 それ以上に、トム・フーパー監督賞受賞と言うのが憤慨もの。彼のどこに全候補者の中で抜きんでた演出力があったと言うのだろう?今回は、クリストファー・ノーラン監督が『インセプション』でノミネートされていなかったことにも違和感があったが、デビット・フィンチャー監督が監督賞を逃したことにも納得が行かない。

 常に斬新な演出で映画ファンの予想を良い意味で裏切って来てくれたフィンチャー監督が、新たな地平を切り開いたのが「ソーシャル・ネットワーク」だと私は思う。今と言う時代を、現代の人間の在りようを的確に表現した「ソーシャル・ネットワーク」は、「時代を映す鏡」としての映画の役割を見事に果たしている。それに対して、新味に乏しい、オーソドックスな評伝映画である「英国王スピーチ」がこの1年を代表する映画と言うなら、映画界の保守化、否、停滞を感じずにはいられない。

 まあ、平均年齢57歳の方々が選んだ賞だからね。WOWOWの特別番組出演者も、半ば憤慨、半ば落胆の表情で指摘していたように、映画界の未来を見据えた英断よりも、ここ何年かのスパンで、今年は「革新性、先進性」を選ぶか、「懐古趣味」を選ぶかのバランス感覚が働いたのだろう。この結果を受けて、若手映画人のチャレンジ精神が削がれなければ良いが…

 ちなみに個人演技賞に関しては特に文句はないが、個人的にはアネット・ベニングに主演女優賞をあげたかったな。彼女の過去に何度もノミネートを受けた卓越した演技力が、そろそろ結実しても良いはずだ(今回、ノミネート対象にはならなかったが『愛する人』の演技も素晴らしかった)ナタリー・ポートマンも好きな女優なんだが、彼女の受賞の瞬間、両手を高く挙げて拍手していたアネットの胸中を思うと、何だか泣けて来た(とにかく知的で品があり、立ち居振る舞いがエレガントだ)。WOWOWの番組中で、「(感情表現が豊かな演技に比べて)抑制した演技はなかなか認めて貰えない」とゲストの記者が言っていたのが印象的だ。

 米アカデミー賞は、日本在住の私にとっては、未公開作品の見本市のような側面もあって、今回ノミネートされた作品の中では『ザ・ファイター』と『キッズ・オールライト』に食指を動かされた。
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