はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

2015年後半を振り返る(1)<7~9月鑑賞記録>

2016年01月19日 | 映画(今年公開の映画を中心に)
 新年に入って既に1月も半ばを過ぎてしまったが、昨年度後半の映画鑑賞の振り返りをしようと思う。テレビでの鑑賞分は含んでいない。

 昨年度9月から12月は映画館で56本の新作映画を鑑賞。因みに前半は58本なので、昨年度は1年間で合計114本の映画を鑑賞したことになる。

ライトアップしたチネチッタ外観
 昨年度は例年になく見応えのある作品に恵まれたように思う。映画ファンとしては幸せな一年であった。特に良質な単館系作品を積極的に上映した地元の映画館チネチッタの貢献度は高い。

 私はそんなチネチッタに対し、一映画ファンとして感謝のメールを送ったこともある。チネチッタからは支配人名義で、「今後とも素晴らしい映画をお届けしたい」旨の返信のメールが届いた。

 全国展開する大手シネコンチェーンと違い、チネチッタは独立系のシネコンなので、独自性を前面に出さなければ熾烈な顧客獲得競争の中で生き残れないことを熟知している。だからこそシネマ・ソムリエなる担当者が幅広いジャンルから、これぞという作品を選び抜いて、チッタ・セレクションと銘打って上映している。

 この為、地元にはチネチッタを含め3つのシネコンがあるが、地元どころか神奈川県全体で見てもチネチッタ独占上映の作品が少なくない。これこそ、チネチッタが「独立系シネコンの雄」と言われる所以である。今年も一映画ファンとしては、チネチッタの慧眼にはおおいに期待している。


 それでは、本題に入る。前半の振り返りでも書いたが、私独自の基準で各作品をratingしており、★1点、☆0.5点で、★★★☆以上の作品なら「見て損はない」だろうか?基本的に映画大好き人間なので、「どんな作品にも創られた意味がきっとあるはず」「作り手の思いが込められている」と思っており、評価は全体的に甘めかもしれない。月間ベスト作品にはratingの後にkirakira2を付けた。

 青色表記は邦画、オレンジ色は邦画以外のアジア映画、それ以外は洋画等。邦画以外の作品についてはタイトルの後に原題も付記。タイトルにアンダーラインの付いている作品は当ブログ内にレビューあり。

【7月 10本】

アリスのままで(STILL ALICE) ★★★★アルツハイマーを患い、仕事で得た地位も家庭の幸せも、そして"自分自身"も失うキャリア女性の焦燥感と喪失感を描く。子供たちの中で親の介護を担うのは結局誰なのか、見ていて身につまされる人もいるのではないだろうか?また、夫婦関係の描き方が日米間の違いを際立たせて興味深い。本作の演技で、ジュリアン・ムーアは米アカデミー賞主演女優賞を受賞。

アベンジャーズ ザ・エイジ・オブ・ウルトロン(THE AVENGERS) ★★★★:お馴染みのアメコミ・ヒーロー達が束になって活躍するドラマの続編。フツーに面白い。

きみはいい子 ★★★★kirakira2:高良健吾演じるヘタレな新米教師が直面する、子供たちのそれぞれの家庭事情が痛ましい。豊かなはずの現代社会が抱える様々な問題が家庭に集約され、その犠牲となる子供たち。

ターミネーター 新起動/ジェニシス(TERMINATOR: GENISYS) ★★★:久しぶりのターミネーター・シリーズへの期待が大きかっただけに、何でもアリな展開にはガッカリ。新作のT2超えはやはり至難らしい。旧作がいかに時代を先取りしていたのかも改めて実感する。

チャイルド44(CHILD 44) ★★★★kirakira2:原作小説を知らずに見たからか、私は十分楽しめた。二分された巷の評価に、高評価な小説の映画化の難しさを感じる。主演のトム・ハーディは今後注目したい俳優のひとり。

アリのままでいたい ★★★:昆虫の生態を迫力ある接写で見せてくれるのだが、一時期流行った「ムシキング」を意識し過ぎな演出が残念。大人だって見るんだから…

ボヴァリー夫人とパン屋(GEMMA BOVERY) ★★★★ :南仏の陽光の下で、大人のアヴァンチュールをコメディタッチに描いたと思いきや、意外にブラックなのにちょっと驚き。

チャップリンからの贈り物(LA RANCON DE LA GLOIRE/THE PRICE OF FAME) ★★★☆:チャップリンの死後、実際に起きた事件を描く。豊かな国スイスで、社会の底辺に暮らす人間(おそらく移民?)が起こした浅はかな犯罪劇の顛末に、格差社会の難しさと悲哀を感じる。

インサイド・ヘッド(INSIDE OUT) ★★★★:人の喜怒哀楽の感情を擬人化して描いたディズニーアニメ。映像の美しさと共に物語の展開も意外に楽しめた。

人生スィッチ(RELATOS SALVAJES/WILD TALES) ★★☆:あまり見る機会のないアルゼンチン映画。ブラック・コメディなのだろうが、あまりにもブラック過ぎて笑えない。これも文化の違い? 



【8月 9本】

セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター(THE SALT OF THE EARTH) ★★★★☆kirakira2:ブラジル出身の世界的な写真家セベスチャン・サルガドの半生と共に映し出される彼の作品の数々に圧倒される。国際機関職員から戦場カメラマンに転身し、その後、秘境まで分け入って地球上のあらゆる風景を撮り続ける彼の眼差しは正に"神の如き"だ。

ミッション・インポッシブル5 ローグ・ネーション(MISSION: IMPOSSIBLE ROGUE NATION) ★★★★:007シリーズと違い、哲学のないスパイ映画としては、方向性としてアクションの追及に向かわざるを得ない。そこにトム・クルーズの限界も感じるが、それでも彼は堂々たるスターである。

ジュラシック・ワールド(JURASSIC WORLD) ★★★★☆kirakira2 :絶滅したはずの恐竜を映像の世界で見事に甦らせたシリーズの久方ぶりの最新作。神の如く生命操作を試みる人間への痛烈な皮肉とも取れるメッセージ性は本作でも健在だ。ロンドンの自然史博物館の機械仕掛けの恐竜の展示に、本作の影響を感じたのは私だけではないだろう。本作がそれだけ現実の世界にも大きなインパクトを与えたと言うこと。SWにも言えるが、主題歌のインパクトも相当なもの。あの壮大なテーマ曲と共に、映像が脳裏にまざまざと浮かびあがる。

日本のいちばん長い日 ★★★☆:昨年は戦後70年という節目でもあり、例年以上に先の大戦を振り返る映像作品が多かったように思う。本作もその一環だったと思うが、日本が敗戦を自覚し、ポツダム宣言を受諾するまでの政府と軍部の葛藤を描いた内幕物である。松坂桃李演じる将校の純粋で一途さゆえの暴走が、当時の人々の置かれた状況を伝えて悲しい。

ふたつの名前を持つ少年(LAUF JUNGE LAUF/RUN BOY RUN) ★★★★:これまでユダヤ人迫害を描いた映画は数多く作られて来たが、本作もその系譜に繋がるものだ。実話に基づいた児童文学の映画化で、強制収容施設から逃れた少年が、名前を変えてポーランド人になりすまし、過酷な状況下を生き抜く物語である。少年の聡明さと生への執念に感服するとともに、彼を取り巻く人々の姿に、人間の愚かさと優しさを感じるのである。

ミニオンズ ★★★☆:まあフツーに面白いが、やっぱり子供向けであった。ロンドンを舞台にしたシーンが結構大胆で楽しい。

ナイト・クローラー ★★★★:映画の肝は「脚本の良さ」と言うことを実感させてくれる本作。主演のジェイク・ギレンホールの役作りも素晴らしく、後味はけっして良くないが、見応えのある作品である。

at Home アットホーム ★★★★:一見ごく普通の仲の良い5人家族には、人には言えない秘密があった。「家族」とは何なんだろう、と考えさせられる、意外な人間ドラマが展開する。かつては「美男子」が売りのアイドル俳優だった竹野内豊が、中年期に入ってその円熟味で再び活躍する姿は必見。同世代の他の俳優とは何が違うのか?(例えば、かつて月9で共演した反町隆史とか)

わたしに会うまでの1600キロ ★★★☆:荒んだ自身の生活を人生を立て直すべくヒロインが選んだのは、大荷物を背負っての全長1600キロにも及ぶトレッキング。実話に基づく話らしいが、そもそも、なぜ一般人がいとも簡単に麻薬に手を染め、堕落するのか、日本で地味ながらも平穏に暮らす私には理解し難いのである。よくよく考えてみれば、転落からの再生は確かに称賛されるべきことだが、転落せずに地道に暮らすこともまた日々自制と忍耐を必要とし、称賛に値する生き方だと思うのである。



【9月 8本】

テッド2(TED 2) ★★★★:ちょっと頼りないおっさんになってしまった元少年と不良おっさんテディベアの友情を描いたバディ・ムービーの続編。テディベア・フリークを自認する私としては、テッドのお下品ながらも憎めないキャラに評価がどうしても大甘になってしまう。冒頭で見せる往年のグランド・ミュージカルを彷彿させるシーンには、おバカ映画にも手を抜かないハリウッド映画の余裕を感じる。さらに今回は配給会社のキャンペーン懸賞で「おしゃべりテッド」もいただけたので、なおさら文句は言えないwink←オイオイ

ヴィンセントが教えてくれたこと(St. VINCENT) ★★★★kirakira2:ダメ親父の典型ヴィンセントが、ひょんなことから隣に越して来たシングルマザーの一人息子オリバーの面倒を見ることになる。誰の目にもヘンテコな組み合わせだが、これもまたバディ・ムービーのひとつと言えるだろうか?ヴィンセントの破天荒な指南で、ひ弱なオリバーが成長して行く姿が見もの。

Dear ダニー 君へのうた(DANNY COLLINS) ★★★★kirakira2:老境に入ったアル・パチーノの、俳優としての魅力を再認識させてくれる作品。相手役のアネット・ベニングも相変わらず素敵。

(21)キングスマン(KINGSMAN: THE SECRET SERVICE) ★★★★:英国紳士コリン・ファースを、あの「キックアス」の監督マシュー・ボーンが、007ばりの格好いいスパイに仕立て上げる。とは言え、相変わらず監督の暴走?は止まらない。ただのスパイ映画では終わらない(苦笑)。

(22)アントマン(ANT-MAN) ★★★★:アメコミ史上最小のヒーローが大活躍のアクション・ムービー。ヒーローの人間臭さ、ダメさ加減が、他のアメコミ・ヒーロー達とは一線を画す。マイケル・ダグラスの化けっぷりにも驚く。

(23)ぼくらの家路(JACK) ★★★★:今や「ネグレクト」は洋の東西を問わず社会的な問題。豊かな社会の中で路頭に彷徨う幼子の姿が切ない。無責任な大人に腹が立つ。

(24)カリフォルニア・ダウン(SAN ANDREAS) ★★★☆:原題はカルフォルニアを南北に縦断する巨大活断層の名前。映画やドラマでもおなじみの街を巨大地震が襲う。ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンが、いかにも頼りなる父親を演じて意外性ゼロなディザスター・ムービー。

(25)カプチーノはお熱いうちに(ALLACCIATE LE CINTURE/FASTEN YOUR SEATBELTS) ★★★☆:イタリア映画。本作でもヒロインが選ぶパートナーにお国柄を感じてしまう。邦題からラブコメを連想したが、意外にもシリアスな展開に。かと言って、原題を見ても、あまりピンと来ない。比喩的なタイトルって難しい。




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