旅行2日目です。この日はちょっとタイトなスケジュール。1日で3カ所も巡ったのです。各々の場所が魅力的だっただけに、もう少しじっくり見たかったな、と言うのが正直な感想です。この「もう少し」が、再訪へのモチベーションになると思うのですが、今回ご一緒したツアーメンバーの中にも、「次回は個人で訪ねたいわね。いつかまた来られたら良いわね」と仰っている方が何人かおられました。私も同感です!
この日の最初の訪問地はリヴァプール(Liverpool)。あの20世紀のスーパーグループ、ビートルズ(The Beatles)が生まれた街です
私が英語に興味を持ったのも、中学時代、ほのかな恋心を抱いたクラスメイトが大のビートルズファンで、彼の影響で私もビートルズが好きになり、歌詞を必死に(笑)覚えたのがきっかけでした。
そして、夫もビートルズの大ファンで、彼の為にもかねがね訪れてみたいと思っていた場所でした!
ブリテン島西岸の小さな港町に過ぎなかったリヴァプールは、18世紀に入って米国のヴァージニア州や西インド諸島との交易により港湾都市として大きく発展し、大英帝国の発展にも寄与したと言われています。あの悲劇のタイタニック号もこの街で造られ、進水したのです。
『嵐が丘』のヒースクリフも、様々な国籍の様々な人種が行き交う19世紀のこの街で、キャサリンの父に拾われ、物語の舞台となる嵐が丘(Wuthering Heights)へ…
まずは英国国教会系の大聖堂としては世界最大と言われるリヴァプール大聖堂(Liverpool Cathedral)。巨大です…敷地内からの撮影では、私のコンデジのフレームには到底納まりません1904年に着工し、1978年に漸く完成したこの大聖堂の塔は101mの高さで、リヴァプールの街を一望できるそうです。
大聖堂の見事な祭壇彫刻。「キリスト磔刑」「最後の晩餐」など、福音書に記されたキリストの生涯から幾つかのエピソードが丹念に彫り込まれています。
次にビートルズゆかりのマシュー・ストリート(Mathew Street)へ。その一角にはファン垂涎の「ハード・デイズ・ナイト ホテル」が建っています。ホテル一階はビートルズ・ショップになっており、所狭しとグッズが陳列され、これまたファンにとっては堪らない場所になっています。
この店で、ビートルズの写真が刷り込まれたマグカップとマグネットを購入。夫には出来れば笑って欲しかった…緊張していたのか…
通り沿いにある、ビートルズが1961年2月9日、ライブ・デビューを飾ったキャバーンクラブ(Cavern Club)。と言ってもオリジナルは1973年に閉店しており、これは後年、元あった場所の隣に出来た新生キャバーン・クラブらしいです。
往年のキャバーン・クラブを紹介した記事がありました。『ビートルズ詳解』と言うサイトより。
キャバーン・クラブ開店
いかんせんフォト・ストップとも言うべき短い滞在だったので、外観を眺めただけの見学となりましたが、もし今後英国を訪ねる機会があれば、是非リヴァプールにも数日滞在して、ディープに楽しみたいですね。
リヴァプールは第二次世界大戦以降急速に廃れたらしいのですが、このビートルズの登場を契機に再び脚光を浴び、今では港湾地区(世界遺産)の再開発等で豊富な観光資源を有する観光スポットとして人気を集めているようです。
現地発着のツアーも多彩で、アルバート・ドック(Albert Dock)と呼ばれる港湾地区には、貿易都市として栄えたリヴァプールの歴史を今に伝えるマージーサイド海洋博物館や英国の現代アートを中心に展示するテート・ギャラリーに加えて、近年はビートルズ・ストーリーと言う施設も出来て、ファンならずとも楽しめる場所のようです。
夫はマシュー・ストリートに立つ若き日の、ちょっとふっくらとしたジョンと記念撮影です。
この後、次の訪問地への移動の途中で昼食を取りました。なかなか瀟洒なホテルのレストランでの昼食でした。
英国では団体客の場合も給仕がテーブルでまとめて飲み物の注文を取るのではなく、客がバーカウンターまで各自出向いて飲み物を買うシステムです。パブに倣った方式なんでしょうか?この方が注文も支払いもスムーズで時間もかからず合理的ですね。
今回、夫の為に地ビールを選んでみました。地ビールには珍しく飲み口軽やかなラガービールだったようです。
まずはサラダ。バルサミコ酢とオリーブで和えたグリーンサラダです。
レストランで出されるせいか、イギリス発祥のファースト・フード、フィッシュ&チップスも何だかおしゃれ(笑)。
20年前にロンドンの街角で買って食べたフィッシュ&チップスはいかにもファースト・フードと言う感じで、写真の2倍ほどの大きさの揚げたて熱々の魚フライに目の前でビネガーソースをたっぷりかけられ、山盛りフライドポテトと共に無造作に紙に包まれたのを、路上でフーフー言いながら食べた覚えがあります。味付けもボリュームも豪快でした(笑)。
10年前にはロンドンのテート・モダンの最上階?のレストランで食べたのですが、今回と同様にナイフとフォークで食べました。しかし、魚フライのサイズはやはり特大で、ポテトも食べきれないほど山盛りでした(笑)。一応レストランだったので、お値段もそれなりに高く(サービス料も含まれていたと思いますが、息子のチーズバーガーと瓶入りの水も合わせて、日本円で5000円相当でした。尤も値段に関しては為替レートの問題ですかね?)、ちょっと驚いたのを覚えています。
それらからすると、今回のフィッシュ&チップスは量や味付け共にかなり日本人向けにアレンジされているように感じます。これが本場の味と言えるかどうかはともかく、とても美味しくいただけました。
デザートはフルーツのコンポート。フツーに美味しかったです。
そして次の訪問地、チェスター(Chester)です。
チェスターはその歴史がローマ時代まで遡る城砦都市で、今でも古い城壁に囲まれた中世の建築様式を留める旧市街の街並みが美しいことで知られているようです。
写真でも分かる通り、白壁に黒い梁の木組みの建物が端正で、イングランドで最も中世の面影を残す街と言われているそうです。ツアーメンバーの中からは「ドイツの街並みに似ているわ」との声も聞かれました。
私も街に足を踏み入れた途端、タイムスリップしたような感覚に襲われました。
しかし、ザ・クロスと呼ばれる地点を中心に東西南北に広がる目抜き通りロウズ(Raws)を歩いていると、伝統建築の中に骨董店に混じってイマドキのショップが軒を並べていて、新旧のコントラストが面白かったです。
この日は金曜日。週末の午後とあって、犬を連れて散歩中の人やベビーカーを押した若い母親、そして家族連れなど地元の人々と、私達のような国内外からの観光客とで、通りは賑わっていました。
骨董店で19世紀の素敵な版画を見つけたのですが、判断に迷って買うに至らず…ここももっとゆっくり見たかったな…
繊細な装飾が施された時計台。背景の晴れ上がった青空が、その美しさを一層際立たせています。
白い矢印の部分が、旧市街を取り囲む城壁です。本来なら幾つかのポイントから階段で城壁に上り旧市街を一望できるらしいのですが、現在は工事中で城壁の上を歩くことは叶いませんでした。残念
城壁の外側にあった郵便局前のポスト。何となく気になったのでパチリ日本の赤い郵便ポストのルーツ?!
次は2日目最後の訪問地、世界遺産のポントカサステの水道橋(Pontcysyllte Aquadact)です。
Pontcysyllte Aquadact
バス移動は効率よく各地を回れるのが利点ですが、私達はバスに乗っているだけなので、いま一つ位置感覚が掴めないのがデメリットと言えるでしょうか?
ポントカサステは今回のツアーで唯一イングランドから離れて、ウェールズ地方に入った観光ポイントです。ウェールズでも北に位置するようで、チェスターからは1時間ほどで到着。
産業革命後、英国では石炭を運ぶ為に開発されたナローボート(A Narrow Boat;その名の通り幅は約2.1mと狭いですが、長さは短い物で5m、長い物は25mも!)が運河を通って、各地へと石炭を運んだと言われていますが、ウェールズ地方のような起伏の激しい地域では運河建設もままなりませんでした。そこで考案されたのが橋の上にボートを通す水道橋です。
係留されたナローボート。
中でもポントカサステの水道橋は「英国で最も長く高い水道橋」として知られ、全長約300m、高さ約38m(マンションだと14階建て程度の高さ)を誇る、建造された1805年当時の土木技術の粋を集めた橋でした。
設計したのは英国の"土木の父"と呼ばれるトーマス・テルフォード(1757-1834)。彼は石工職から独学で土木、建築学を学び、産業革命期に数々の道路や橋を手がけ、後に初代英国土木学会会長となった人物です。
左の写真は、テルフォードの生誕250年を祝して建てられた記念碑のようです。
運河の横には船引き道があり、徒歩で渡れます。私は橋の向こう側まで行き着いたのですが、怖がりの夫は途中で引き返してしまいました。ここでも中国人の団体に遭遇。やっと人が行き交える程度の幅なのに道を譲ってくれない人もいて困りました。
橋からの眺め。絶景なり。
農場…かな?
遥か遠くに別の橋が見えます。
橋の向こう側に到着。橋桁を見てみます。
元来た道を戻ります。ひたすら300m歩きます。この橋を年間1万台以上のナローボートが通過するそうです。ボートを自ら運転して橋を渡るツアーもあるらしい。
無事?到着。何よりそのスケールの大きさに圧倒されたので、橋を往復した後は思わずホッとしました。ウェールズの雄大な自然と、産業革命期の英国の土木技術の高さを体感できて、素晴らしい経験でした。
おそらく私の拙い写真では、その時の感動の半分も伝えられないと思います。多くの方々に機会があれば、是非、足を運んでいただきたい場所です。
この日の夕食は、次の宿泊地で英国第二の都市バーミンガム(Birmingham)の中心街にあるレストランパブ、「バッカス・バー(Bacchus Bar)」にて。途中、交通渋滞に巻き込まれたり、道に迷ったり?で、予定より1時間半も遅れてスタート。
まずは野菜サラダ。
メインディッシュはローストチキンを濃厚なグレイビーソースで。胸肉のパサパサ感が……もう少し何とかならなかったのかしら?
デザートのアップルパイは美味でした。
ローストチキンの味はともかく、このレストランパブ、当地でも人気店らしく、週末の夜、足の踏み場もないほど大勢の人で賑わう店の雰囲気は最高でした(やはり、ここでも若いスタッフがキビキビと働く姿が印象的でした)。
この日は特別にジャズの生演奏も。現地の人の話では、サックス奏者が英国でも期待の若手で、今後世界的に有名になるだろうとのこと。そんな人の生演奏を間近で聴けたなんて、ちょっと得した気分です。高揚感がなせる業なのか、帰り際には言葉を交わした見知らぬ現地の人と、なぜかハイタッチして別れました(笑)。
以前、ジャズ・ピアニストのオスカー・ピーターソンと上原ひろみのデュオ・リサイタルを東京国際フォーラムの大ホールで聴いたことがあるのですが、ジャズはやっぱりパブやバーのような所で聴くものなんだなと思いました。場の雰囲気って大切ですね。
食事を終えて帰る道すがら、車窓から見えるパブはどの店も大勢の人で賑わっていました。思いがけず都市に住む英国人の週末の過ごし方を目撃できて、興味深かったです。