はなこのアンテナ@無知の知

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4回転の呪縛

2010年02月19日 | はなこのMEMO
 今、男子フィギィア・スケートのフリープログラムの演技を見ているけれど、順位下位の選手が果敢に4回転ジャンプに挑戦している。しかし、大技なだけにリスキーで失敗も多いし、たとえ成功したとしても、それで体力も気力もかなり消耗してしまうのか、それ以降の演技が大味になってしまう印象が拭えない。

 先日、ショートプログラム後の順位上位者による公式会見の席で、4回転には絶対の自信を持つ1位のプルシェンコ選手が、「4回転は男子フィギィアの未来だ。跳んで当然」みたいなことを言い、それに3位の高橋選手も呼応していた。私はこれはプルシェンコ選手の揺さぶり作戦だと思うんだけどなあ。これに乗ったらイケナイような気がする。高橋選手、大丈夫か?

 4回転。成功すれば9.8~13.3の加点に対し、転倒や回転不足は容赦なく基礎点から減点される。殆ど点差のない上位者にとって、4回転ジャンプに挑んだ場合、その成否が勝敗を分けることになる。一方、ショートの演技では4回転を跳ばなかったにも関わらず、4回転を成功させた1位のプルシェンコ選手と3位の高橋選手には大きな点差はつかなかった。それが意味するところは、やはりさまざまな要素の綜合がフィギア・スケートだということなのではないか?

 今朝の公式練習で、高橋選手は4回転ジャンプに2回の挑戦で2回とも失敗した。4回転は確かに華やかで圧倒的なジャンプの大技ではあるけれど、4回転ジャンプ以外の演技はスケーティングにしろ、スピンにしろ、ステップにしろ、芸術的表現にしろ、プルシェンコ選手に高橋選手が十分対抗できると思うだけに、ここで敢えてリスキーな4回転は跳ばずに、自身の得意とするスケーティングや表現力でクリーンな演技を見せて欲しいな、と個人的には思う。メダルの色なんて、彼の華麗なスケーティングに魅了されている一ファンにとっては、この際どうでも良いのです…と言っても、高橋選手は攻めの姿勢で行くのかな?


【追記 試合後】

 高橋選手。シーズン当初から宣言していた通り、やっぱり4回転ジャンプに挑んだ!「挑んで失敗するも悔いなし」と高橋選手本人が納得しているとあれば、外野は何も言えない。解説の本田武史氏も、その勇気を称えていた。見る者は失敗のないクリーンな演技を期待するものだけれど、競技者とは敢えてリスクを冒してでも、より高みを目指して挑むものなのかな?4回転は失敗したけれど、それ以外のジャンプは完璧にクリアし、スケーティングもステップもスピンも素晴らしく、最後まで見る者を魅了した演技は、彼の今季ベスト・パフォーマンスと言って良いと思う。

 優勝した米国のライサチェク選手の完璧で圧巻の演技の前には、たとえ高橋選手が4回転ジャンプを成功させていたとしても、優勝は難しかったのかもしれない。プルシェンコ選手は、さしもの王者も緊張したのか、転倒こそしなかったものの(この8年転倒なしだそうだ)、辛うじて踏ん張ったり、軸がずれたり等、”らしからぬ”演技で、看板の4回転ジャンプは成功させたにも関わらず、ライサチェク選手に逆転を許し2位となった。かつて絶対的なフィギィア・スケート王国だったロシアが、今回のバンクーバーでは次々とその牙城を切り崩され、正直驚きを隠せない。ソ連崩壊後、ステート・アマ体制が崩れてしまったからなのか?結局、4回転ジャンプを回避して、ノーミスの演技に拘ったライサチェク選手が勝利したのは皮肉なものだ。

 演技途中に靴紐が切れて中断を余儀なくされた織田信成選手の無念を思うと涙が出た。試合直後のインタビューによれば、試合前に既に靴紐は切れていたのだが、とりあえず切れてしまった部分を結んだだけで、演技に臨んだと言う。直前に交換するよりも、靴紐の結び具合がいつも通り足に馴染んだ状態で臨むのが得策と判断しての応急処置だったが、結果は裏目に出てしまったようだ。頬を濡らすのは後悔の涙なのか、インタビュー途中で言葉が詰まってしまった織田選手の姿が痛々しかった。アクシデント発生までは素晴らしい演技だったので、本当に残念だったろうな。

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