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F-35

2013-03-04 22:55:00 | Weblog


第2次世界大戦で敗戦国になった日本に対して戦争放棄の憲法を持つように迫ったのも、朝鮮戦争が始まるや否や日本に再軍備を迫ったのも、戦闘機やイージス艦、ミサイルの類を日本に売ったのも、ショウ・ザ・フラッグ、ブーツ・オン・ザ・グラウンドと声をあげて、自衛隊を海外に出かけさせるよう仕向けたのも、みんな、アメリカ合衆国である。

何十年もの間、敗戦国日本は戦勝国アメリカのいいなりに雑巾がけに励んできた――こんな言い方をすると、石原慎太郎の口真似のように聞こえるが、それは、戦後日本の経済復興と繁栄の代償であった。吉田茂が敷いた軽武装・通商国家の路線を自民党政権は引き継いできた。

武器輸出3原則もそうした路線の中でできた原則だ。まだ、日本の政治家の間に、平和国家というイメージが国際的にアピールするという認識があった時代である。

先の野田内閣が、日本と安全保障面で協力関係があり、その国との共同開発・生産が日本の安全保障に役立つ場合、兵器の共同開発を実施する、と武器輸出3原則の例外規定を決め、この3月1日、安倍内閣が次期主力戦闘機F-35の共同開発に参加すると発表した。

その理由は①F-35の使用は日本の安全保障に役立つ②日本の防衛生産とその技術基盤の維持・育成・高度化に役立つ③日米安全保障体制の効果的な運用に寄与する、としている。

ベトナム戦争で米軍がソニーのビデオカメラを使ったスマート爆弾を使ったことがあった。家電製品の軍事応用である。今では多くの人が米国の軍事衛星を使ったGPSのお世話になっている。こちらは軍事技術の民生利用である。

武器の定義は難しいが、さすがにステルス戦闘機F-35となれば、これを武器と呼ぶことに異論のある人はいないだろう。

その武器輸出3原則も、米国向けだけは①武器技術の供与②弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産関係の武器輸出などが例外として認められてきた。これは米国に要求に応じることが、日本の安全保障に役立つという観点からだ。

F-35の共同開発の参加も、これまでの武器輸出3原則の対米例外措置の延長線上にある――という見方は大間違いで、「日本の防衛生産とその技術基盤の維持・育成・高度化に役立つ」と、日本の防衛産業育成を正面切って理由にあげた点が新しい。

尖閣など中国との反目、韓国との竹島摩擦、北朝鮮の核とミサイルなど、四海波高いおり、国民の不安に乗じて、武器商法で世界に販路を拡張しようというたくらみの始まりではないかと疑ってみたくなる。

戦争放棄の規定は原則であるとされているが、あの時代の政治を取り仕切ってきた人々にとってはそれが戦略上の方便であったように、武器3原則も時代の政治環境に合わせた方便だったのであろう。

戦後日本政治の本音とたてまえの間に生じた囲碁でいう「コウ」のようなものが次々とつぶされてゆく。日本の衆議院議員の平均年齢は52歳。憲法の戦争放棄の規定の解除まであと何年残されているだろうか。歴史は進歩するとは限らない。

(2013.3.4 花崎泰雄)


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