難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

難聴者と手話

2007年07月22日 18時12分58秒 | エンパワメント
070722_1403~001.jpg070722_1409~001.jpg難聴者協会の例会で、ろうの講師に「手話の魅力」について講演会を開くと定員を上回る1**人以上の参加があった。

東京都は中途失聴・難聴者手話講習会を開催して30年になる。
難聴者が手話を学ぶ魅力は自分を取り戻せることだ。
手話を学ぶ過程で自分の障害とコミュニケーションの意味を再確認する。

しかもクラスには自分以外にはいないと思っていた同じ難聴、中途失聴者がいることを知り、孤独感が消えていく。

難聴者、中途失聴者が失った聴力の代わりに新しいコミュニケーション手段を身に付けることは大きな意味がある。


難聴者自身が同じ難聴者のコミュニケーション手段の獲得のサポートをし、ピアカウンセリングもしながら、また自立した難聴者の姿のロールモデルを示している。
各クラスの講師、助手がチームを組み、難聴者のエンパワメントを促進している。


もっと難聴者の手話の学習について、積極的に受けとめたい。


ラビット 記 



2007全米アジアン・デフ会議(2)

2007年07月09日 03時16分49秒 | エンパワメント

rabit-2007-07-08T21-07-34-1-s.jpgサンフランシスコの風さんから、便りの(2)


ラビット 記
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プルー博士の調査によれば、仲間から尊敬されている成功した聴覚障害者には以下の要素が共通して見られるということです。

1)集中して聴く(リスニング)の力
2)教師の励ましがあった
3)似たような経験を持つ仲間との交流をもっている
4)忍耐力
5)並ならぬ努力をすることをいとわず誇りを持っている
6)ポジティブな考え方、楽観的
7)自己コントロール
8)教育上、就職上の目標を持っている
9)サポートシステム(困ったときや必要なときに頼れる家族や友人などのネットワーク)がある

言わずもがなのリストですが、9)のサポートシステムはまさに以前わたしがここで取り上げたクリーム入りドーナツのことでした。真ん中のクリームが自己で、その周りを囲むパ ンの部分を、友人、学校や職場、家族、セルフヘルプグループに4分割しています。

全ワークショップ・プログラムを通して音声通訳・手話通訳がいました。そして要望した人のためにはCART(パソコン同時入力字幕システム)もあり、数年ぶりにCART入力者のLeeさんに出会い、個人的にも感慨ぶかい会議でした。
ちなみに3年後の2010年にはニューヨークでの会議開催が決まっています。今から楽しみです。
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2007全米アジアン・デフ会議(1)

2007年07月08日 21時07分35秒 | エンパワメント
070629_0846~001.jpgサンフランシスコの風さんから、便りが届いた。

聴覚障害の問題を多角的にとらえる場があるというのは、とてもうらやましい。
日本はまだ団体別分野別の集会、取り組みが中心だ。

我が国にも先進的に取り組まれている人はいるが、横の繋がりが弱いように思う。
オージオロジーの専門家も少なく、難聴児教育分野で発達したこと、高齢者施策の中でも、介護、徘かい問題優先で難聴問題は後回しにされてきたこと、成人難聴者団体の活動も啓発やコミュニケーション支援に集中せざるを得なかったことが一員だろう。

優れた取り組みや研究を実施するための条件が備えた環境も作りたい

ラビット 記
……………………………
その後お元気ですか。暑中お見舞い申し上げます、かな?それともまだうっとうしい梅雨の空?

7月2,3日と全米アジアン・デフ会議に参加してきました。この会議は同名のセルフヘルプ組織(NADC=National Asian Deaf Congress)が3年に一度行っているもので、今年は6月30日から7月4日までサンフランシスコのハイアットホテルで開かれました。

タイトルのとおり、これはアジア系アメリカ人、またはアジア諸国からの移民でデフ、つまり聾である人たちのための大会なのですが、白人でもアジアに関心の強い人、難聴者、健聴者でもアジアか聴覚障害に関心の高い人も参加していました。
わたしはこれまでHLAA(全米難聴者組織) 、ALDA(中途失聴者組織)などの大会に出てきましたが、アジアン・デフの大会が一番居心地よかったように感じました。もちろん姿形が似通ったアジア系が多かったことが一種の安心感をもたらしたこともありますが、この大会の参加者が非常にバラエティに富んでいたことが大きな理由です

老若男女あり、アジア系、白人、ラテン系、聾者、難聴者、中途失聴者、健聴者など、様々な背景をもつ人たちが集まっていました。難聴者で人工内耳をつけた人にも会いましたし、重度のデフでもはっきり話す人もいたし、日本からも参加者がいて、彼らは英語もアメリカ手話も完璧ではなかったと思いますが、こちらの人たちとよ
く交流をしていました。

午前、午後に2コマずつ、同時進行のワークショップが3つあり、アメリカでアジア人というマイノリティでありながら障害を持つことの意味を深く問うもの、障害者差別を人種問題に絡めつつ自分のうちにある差別意識を問うもの、聾の両親に生まれた健聴の子どもたちの心理問題を扱うパネルディスカッションなどを通して、突き詰
めれば、アジアという文化圏の美徳を再確認し結束を強めながら互いに切磋琢磨しあおう、という非常に肯定的な大会の基調が感じられました。

それにしてもすごいと思ったのはワークショップは全部で20近くはあったのですが、そのうち半数は博士号か修士号以上の持ち主で、アメリカの聾教育の裾野の広さを感じさせられました。
もちろん彼ら本人たちの並々ならぬ努力があったことは言うまでもありませんが。
わたしが参加したワークショップのひとつはシンディ・プルー博士の「聴覚障害者が学校や職場で成功するには」で、以前取り上げたセルフ・エスティーム(「健康的な自己イメージ」とわたしは訳しましたが、最近日本の友人が「自尊感情」という訳語を使っていました)をまさに取り上げた内容でした。

(2)につづく。




難聴者運動の新しい課題

2007年06月17日 16時35分57秒 | エンパワメント
070616_1512~001.jpg070616_1539~001.jpg難聴者は社会の理解が不十分な上、自身にも理解するための情報や自己学習やトレーニングする機会もないままだ。

難聴者運動としては、聞えのバリアフリーの拡大やコミュニケーション支援に取り組んできたが、難聴者自身が自分を高める場を求める運動がほとんどなかった。

難聴者協会や各グループの活動に参加することが自己実現を図るひとつの形であるが、個の人間としてはもっと幅広い自己実現を求められて良い。
そのための必要なのは難聴者の「エンパワメント」(自己実現促進支援)の考え方と実際のシステムだ。

日本の難聴者は三層構造ではないか。
最初の一群は、人口も多い高齢難聴者群、高齢化して難聴になり自己実現を高齢を理由にあきらめやすい。
二層目は、中途失聴者、主に成人してから聴力が低下した人々だ。社会の中軸だが社会の理解と環境整備の遅れの中で苦悩している。人工内耳装用者も含まれる。
社会経験を持ち行動力のある団塊世代もここにカテゴライズする。多様性が大きい。
三層目が乳幼児からの難聴者だ。なかなかアイデンティティが持ちにくいために自己確立が遅れている。
この中に早期から集団で聴能発語指導を受けてきた人々がいる。いま40代前半だろうか。社会との関わりを積極的に持っている人も多く、注目すべき一群だ。

これらの人々に対するエンパワメントは別々に実施される必要があるだろう。

難聴者へのエンパワメントシステムは、どのような戦略が必要かまだ見えていない。
しかし、私たち自身が関わらなければ進まない。


ラビット 記
写真は横浜の赤レンガ倉庫跡。今はレストランや小物などの販売店になっている。



難聴者の聞こえない社会の音(11)

2007年06月15日 13時06分31秒 | エンパワメント
070614_1510~001.jpg070613_1239~001.jpg社内メールで、業務に関係した取り組み方を各部署に問い合わせたら、同僚から今協議しているから勝手にやらないでくれと言われてショックだった。

これは、同僚が相手と電話でやりとりしていたので、全く分からなかったからだ。
電話のやり取りだけは、近くにいても全く分からない。他の人は、誰がどういう電話していても反応する。

もっと、周囲の状況を把握してからメールしよう。
難聴者の聞こえの状況をもっと説明しないといけないか。かといって、言わないほうが悪いともいえない。この辺は、微妙な感覚が必要だ。


ラビット 記

写真は田植え前の水田と草取り役のアイガモ



難聴者自助組織の活動の意義   

2007年06月07日 09時27分17秒 | エンパワメント
070527_1144~001.jpg070527_1143~001.jpg5月最後の日曜に、難聴者協会の定期総会が開かれた

特定非営利活動法人の難聴者協会は定款に則って運営される。
収益事業の報告は税務署に総会議事録とともに提出する。監事は監督官庁の代わりに組織運営方法、事業の内容、財務体質と構造まで厳しくチェックする。特定非営利活動法人は公益性が高い事業を行っているためだ。

そのため、難聴者協会の総会は決して形式的なものではなく、協会の一年間の活動を一人ひとりの会員のものにする重要な機会として、議案の内容を十分に検討するようにしている。

各専門部は数ヶ月前から部内で話し合ってまとめた活動報告と事業計画案を一ヶ月前には事務所に提出する。
理事長は協会の事業全体の総括と計画を、会計部長も決算案と予算案を理事会で協議し、専門部報告と計画とも承認した上で、事前に会員に議案として送付している。今年は2週間だった。

また総会前日には理事と各専門部長に議案について、最後の質疑を行い、議事進行も確認する。

こうして何回も議論を積み重ねて総会に臨む

総会には600人弱の会員の過半数が成立に必要だが、程なく委任状が半数寄せられ、出席の返事も100人近くに達した。
今年はいつもと違い、市部の会場で開催したので成立を懸念したがこうした初めての参加する会員も多く、朝早くから列をなして入場を待っていた。

民主的な手順を重ねていることが会員が自分の生活のニーズ、会費の使途について理解していくと思う。

ただ、各地域の難聴者の会は10以上あるが協会の支部ではなく、一般会員もみなが専門部に入っているわけではない。
総会に参加している一般会員は鋭い質問もするので気が抜けない。

ラビット 記



聴覚障害アカデミー 聴覚障害者専門家養成オンライン講座

2007年06月05日 18時41分11秒 | エンパワメント

調布の花1サンフランシスコの風さんから、新しい情報が届いた。

ラビット 記




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ラビットさん、
前にも申したかもしれませんが、
http://blogs.dion.ne.jp/rabit/archives/5357335.html
HLAAでは聴覚障害専門スペシャリストを養成するために上記のようなオンライン講座を開設しています。
難聴者でも健聴者でも誰でも関心のある人が受講できるものです。
http://www.hearingloss.org/docs/AcademyProgramOverview2006.pdf

プログラム概要(Program Overview)を見ると、
1)入門
2)心理精神面のサポート
3)技術面のサポート
4)法律、アドボカシー、照会サービス
(これに社会啓蒙のアウトリーチを入れたい)
の4本立てになっております。

アカデミー設立に関わった人を見るとHLAAの理事長をはじめ、上記1)-4)の分野の専門家が2人ずついますね。トライキン、ハーヴェイ両教授はもちろん2)を担当しています。


つつじの花4ブログの「精神対話士」の話は興味深く読みました。さしずめ「ピアカウンセラー」のようなものかと察しました。
わたしの夢は日本にもこういう難聴者の全生活に関わる全ての分野のサポートを提供してくれるワン・ストップ総合センターができることです。
徳島の方の例じゃありませんが、「聴覚障害者支援センター」なる施設ができてもビデオの貸し出しと手話通訳者養成しかしないんじゃ、名前負けですよね。
S先生がおっしゃるSTや先日のLACEプログラムなどは3)の分野になりますね。わたしの担当は2)の心理精神面でのサポートです。最近話題になってるセルフエスティームをいかに向上させるかです。

難聴者のエンパワメントというのは上の4分野全てが網羅できてこそ成り立つと思います。あちこちつぎはぎのパッチワーク、いやもしかして今の状況は縫い目もないばらばらのパッチかな? それじゃ100年かかっても難聴者の総合的なエンパワメントはできないでしょう。。。

難聴者の素晴らしいキルトをみなで合同制作しよう!


難聴者のセルフエスティームと聴覚障害総合センター

2007年06月05日 12時30分33秒 | エンパワメント

ランキュラスサンフランシスコの風さんのメールの続きです。

難聴児、難聴者のセルフエスティームについての知見は、アメリカで聴覚障害者カウンセリングを学んだ当事者ならではのものだ。
今後とも、大いに情報や知見を提供して欲しい。

難聴者のエンパワメントは、自己を励ましあうセルフヘルプ・グループと個人・小グループを対象にしたカウンセリング、社会啓発を行うアウトリーチ活動を一体的に行う必要があると提言されている。
これは、日本の聴覚障害者情報提供施設にない視点で新鮮だ。
昨年訪れた、難聴者のためのニューヨークリーグがまさにそうした機能を有している。

ラビット 記
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クライアントのセルフエスティームを客観的にきちんと評価しようと、アメリカの精神保健界は頑張っていますが、わたしには必ずしも計れない、ふつふつと沸き起こる生きる意欲みたいな感じもあると思っています。そこまで行くと宗教とか精神性の問題になりますからちょっとずれますけどね。
難聴関係では、ブログにも紹介しましたが、やはりギャローデット大学カウンセリング部部長のAllen E.Sussman教授が元祖です(Characteristics of a Well-Adjusted Deaf Person)。
今はMichael Harvey先生なんかも聴覚障害者対象のメンタルヘルス読本を出したりしています。ちゃんとしたセルフエスティームの評価法までのせていたかどうかまではちょっと覚えていません。
聾・難聴の子どものセルフエスティームを高めるため「I'm Deaf andIt's Okay」という子供向けの本(Lorraine Aseltine著)があります。他にも類似書
はたくさんあるとおもいます。

日本(を含むアジア)では、F先生がおっしゃるように、文化・歴史的に個人主義が育たなかったので、そもそもセルフエスティームの「標準値」が存在せず、ましてやそのサブグループである難聴者の自己観を計ろうとするようなものはないのは当然かもしれません。


辻堂のコスモス難聴者一人一人のエンパワメントはその難聴者の住む社会の全個人のエンパワメントと手に手をとり進めていかねばならないでしょう。それには一般社会への働きかけも重要です。
いずれにしても難聴者には互いを励ますセルフヘルプグループ、個人・小グループによるカウンセリング、それと一般社会を啓蒙するアウトリーチ活動を全部しているワン・ストップセンターのような場所が必要ですね。

F先生にもしかしたら役立つサイト名を下にあげました。グーグルするとでてきます。
1)Psychotherapy with Deaf Clients from Diverse Groups: Chapter One
2)Proceedings of the First World Conference on Mental Health and Deafness - Keynote
Address: Dr. Allen E. Sussman
(Part II の1と8がもっとも重要と思います)
3)Building a Strong Foundation: Our Children's Self-esteem by Janet DesGeroges
(www.handsandvoices.org/articles/early_intervention/foundation)
4) Culturally Affirmative Psychotherapy with Deaf Persons by Michael Harvey
5) Psychotherapy with Deaf and Hard-of-Hearing Persons: A Systemic Model by Michael Harvey

4)と5)は書籍です。
勉強不足で学術論文などには目を通していませんが、もしもっと突っ込んだ論文とかをお探しの向きはサンフランシスコ市立図書館に聴覚障害書籍部門があるのでそこへいって(会社から歩いて5分)司書の助けを借ります。

今日のところはこの辺で失礼します。



新しいタイプのろう者、難聴者

2007年06月04日 09時41分05秒 | エンパワメント
070604_0652~001.jpg筑波技術大学大沼直紀学長が、「これからの聴覚活用を考える~早期より聴覚を活用した重度聴覚障害者本人と両親への実態調査から~」を別掲のトライアングル文庫10で報告している(P151~P161)。
これは教育オージオロジストとしての観点から、補聴器装用の意義を再確認したものだ。

この中で、「音を感じる世界と言葉を見る世界」に適合した、聴覚と視覚の併用する新しいろう者、難聴者の出現を期待を込めて紹介している。

聴覚と視覚の併用は前からしていたと思うが、補聴器の発達で音情報を取得したり、手話を使う難聴者は増えている。バイカルチャーのような聴覚障害者は確かに「新しい」聴覚障害者かもしれない。

それはさておき、こうした新しい聴覚障害者に必要のは、大沼先生の提唱する
①より良く音や音声か聞こえるような障害補償
②より良く話しコミュニケーションできるようになるための障害補償
③たとえ聞こえなくても話せなくても、伝わる代わりの言語手段による情報保障
④たとえ聞こえなくても話せなくても、伝わる代わりの機器による情報保障
⑤聞こえない・話せない障害(者を理解できる社会への啓発)
(同報告、P157)
に加えて、権利意識の獲得と制度の利用と創出が必要だ。

聴覚補償、情報保障の環境の整備は周囲の理解だけでは進まない。
社会やあるいは政治の場にも働きかけないと自分たちの権利は守れない。

子供には子供の権利条約や憲法を教えるように、聴覚障害にも障害者権利条約や憲法を学ぶ(教える)必要があるだろう 
政治家や起業家になることも出来るのだ

ラビット 記



難聴児当事者からの発信 トライアングル文庫10の発刊

2007年06月04日 07時55分03秒 | エンパワメント

トライアングル文庫1トライアングルから、「今を羽ばたく 聴覚障がい者本人が語る」というトライアングル文庫10が発刊された。
乳児期から、同じ難聴児に囲まれて成長した難聴児が成人して、様々な生き方をしている。当事者が自身の受けた教育や聴覚障害の受け止め方を綴っている。当事者からの発信という点で貴重な書物だ。

難聴者のエンパワメントの確立の一助となるだろう。

ラビット 記


難聴者、難聴児の「自己イメージ」

2007年05月31日 12時34分32秒 | エンパワメント

調布の花1サンフランシスコの風さんから、「セルフエスティーム」について、メールを頂きました。
F先生は、日本の耳鼻科医師で難聴者、難聴児のセルフエスティームについて、探求されている方です。

ラビット 記
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セルフエスティームについて、エスティームだけを手元の英英辞書で調べると、「尊重・敬慕の念」とあります。
わたしがラビットさん宛に出した2006年9月21日付けブログでは、「自己イメージ」としました。もっと突っ込んでいえば、どれだけ自分ついて納得がいっているか、健全な自己像をいだいているか、といったところです(やっぱり曖昧?)。
これは狭い意味での、あるものごと(例えば学科や特技)に対する自信とは異なり、人生のあらゆる局面に際して流れている一貫した自分に対する人間としての総合評価のことです。

ですが、F先生ご指摘のとおり、人間の発達過程や居住環境で変わりますね。まわりの社会に大きく左右されます。障害者でなくても青少年は自己評価がまだ定まっていないことが多いですし、同じ人間で
も抑圧的、否定的な場所にいればセルフエスティームは下方へ揺らぎます。

アイデンティティはセルフエスティームを形作るひとつひとつの要素のような気がします。日本人、女、中年、難聴者、云々、これらはみなわたしのアイデンティティですが、セルフエスティームのように善悪・
高低関係なく自分を形成している要素のことですね。セルフエスティームを健全なレベルに保つには、いかに自分のアイデンティティを正しく把握しているかが前提条件でしょうね。




難聴者等のエンパワメント「精神対話士」

2007年05月28日 07時21分13秒 | エンパワメント

藤色の花NPO法人「みやぎ・せんだ い中途失聴・難聴者協会の太田透さん、裕理子さんが、「精神対話士」の資格を取ったというニュースがあった。
裕理子さんは事務局長だ。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/miyagi/news/20070527ddlk04040165000c.html


赤い花「精神対話士」というのは、上記毎日新聞の記事によれば、「子供から高齢者まで悩みを抱える人の話し相手になることで心のケアを行う」人のことで、「93年に精神科医らが設立した財団法人「メンタルケア協会」(東京都)が養成・認定している。精神科医や臨床心理士のように治療は行わず、対話によって精神的な支援をするのが特徴。家族関係や病気、学校や職場のいじめなどで、孤独や心の疲れを感じている人の元へ派遣され、主に話を聴くことで相手の気持ちを和らげたり、希望を持ってもらうことを目指す」。

難聴者のエンパワメントを進めるための一つの方策になると思う。
また、セルフエスティームという観点から、難聴者、難聴児の問題を把握しようとする医師がいる。
「セルフエスティームはよりよい生き方を学ぼうとする上での基礎となる重要な自己意識であり、また生き方を学ぶ中で徐々に高められてもいく認識である」。
http://ww5.tiki.ne.jp/~yoshilin/self_es.html

これらについても、難聴者の自己確認がどういう問題を持っているか、その確立のために当事者と関係機関、支援者等の社会資源はどうあるべきかを整理して行くべきだ。

ラビット 記


聴能コミュニケーション強化プログラムLACEの開発の陰に

2007年04月06日 23時54分30秒 | エンパワメント
070404_0839~001.jpg070401_1222~001.jpgサンフランシスコの風さんからです

聴能とコミュニケーション能力強化プログラム開発の陰にロック関係者がいたという裏話です。




参考URL
http://blogs.dion.ne.jp/rabit/archives/5319863.html

ラビット

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それから先日お話ししたLACEにはこんな裏話があります。
この聴能訓練プログラムの考案者はカリフォルニア大学オージオロジー部長のスウィートゥ教授なのですが、あのように洗練されたオーディオ・プログラムにするのに関わったのが、グレートフル・デッド(アメリカで60年ー70年代にはやったロックバンド)の元サウンド・エンジニア(現在はソフトウェア・デザイナー)、ジェリー・カービー氏。

ジェリーさんは現役時代にロックの爆音を聞き続けた結果、耳鳴り難聴になってしまい、引退後、耳鳴り治療プログラムを探しているときにスウィートゥ教授に出会った。
スウィートゥ教授の医学ソフトとジェリーの音響ハードがうまく合体した成果があのLACEなのです。

LACEの歴史的背景については、ポップミュージック記者のジョエル・セルビン氏による詳しい記事がサンフランシスコのローカル紙(クロニクル)に紹介されました(2006年2月15日付)。同記者はLACEを実際に体験して効果があったことも同日付の新聞に書いています。





難聴者のリハビリテーション ピア・メンター・プログラム

2007年04月01日 11時46分05秒 | エンパワメント
通勤途上の花その2サンフランシスコの風さんから、難聴者のリハビリテーションについて、ギャローデッド大学のピア・メンター・プログラムを紹介され、その実現の抱負が寄せられた。

ラビット 記
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ラビットさん、
先日のワークショップで、参加者の方が心のリハビリについての重要性についてコメントしていましたね。
今後希望があれば日本でピアメンター講座をやってもいいと思っています。

まず、その考えが出きたのが上記ウェブサイトのギャローデット大学のオンライン講座なのです。
チャートになってるカリキュラムのところを見てください。オリエンテーション、米国の聴覚障害の現状、難聴の医学心理社会的側面、オージオロジーの基礎、補聴援助システム、ピアメンターの実践、まとめ、について各1-3単位が割り当てられています。

日本にもこんな包括的講座ができれば素晴しいとわたしは思いますが、ギャローデット大学のコースレベルを実践するには、オージオロジスト、言語聴覚士、心理カウンセラーなどの協力が必要になってきます。サンフランシスコ州立大学には同様の講座が何年も前からあってわたしはそれを履修しましたが、それは全てオンサイト、つまりキャンパスで実際に講義を受けなければなりませんでした。
それにこれは難聴者のためだけではなく、健聴者にも開かれたプログラムでした。

いずれにしても、こういった講座を実現するには長い時間と努力と運動が必要でしょう。
わたしにできることは難聴の医学心理社会的側面とピアメンターの実践のところです。つまりどのようにしてコミ能力を伸ばすかということと、心のリハビリを先輩ピアが後輩ピアにどうやって手助けするかということです。


http://cpso.gallaudet.edu/CPSO_Home/List_of_Subjects/Peer_Mentor_Program_Overview.html

Frequently Asked Questions (FAQ) about Peer Mentor
What is a Peer Mentor?

Peer Mentors are people like yourself who are deaf/hard of hearing, use accommodations, and work alongside with audiologists to make sure you get and understand what you want. Peer Mentors are determined to remove communication inacessibility challenges.

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以下のリンクが切れていたので、上記に差し替え(2010.2/8)
http://www.peers4access.org/about.html

Gallaudet University Peer Mentor Training Certificate Program consists of 2 onsite seminars on the Gallaudet University campus (one 2-day and one 5-day seminar) and 5 on-line courses using the University's on-line Blackboard software.




聴能コミュニケーション強化プログラム 新しい聴覚リハビリテーション

2007年03月25日 06時35分22秒 | エンパワメント
サンフランシスコの風さんがワークショップを開き、アメリカの聴覚障害リハビリテーションの概況について紹介された。

アメリカには聴覚障害者が3200万人もいて、難聴に関する多くの研究が進んでいる。

そうしたアメリカのオージオロジー分野では、今聴覚の活用をもっと高めれば、対人関係のコミュニケーション能力をもっと向上させることができることが強調されているそうだ。補聴器を付けるだけではなく、集中力、言語能力、対人コミュニケーション能力を高めるたトレーニングのウェブアプリケーションが開発され、新聞、テレビでも話題になっているとのことだ。

そのウェブアプリケーション・プログラムはLACE(レース、聴能とコミュニケーション強化プログラム)という。
https://www.lacecentral.com/do/gettingStartedLACE
英語版に続き、ポルトガル語やニュージーランド英語版が開発されている。日本語版は文化の違いもあり、慎重に開発が必要だと話された。

全米難聴者協会HLAAは大会の度に医学的、科学技術的な内容だけではなく、心理・精神的支援の問題についての講演をバランス良く行うそうだ。その講演の中で、こうした聴能とコミュニケーション強化の考え方も学んだりしている。

ラビット 記