老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

312;北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論(1)

2017-08-18 10:00:08 | 文学からみた介護
北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論
編集委員 大岡信 大谷藤郎 加賀乙彦 鶴見俊輔『ハンセン文学全集』1
(小説)皓星社:北條民雄「いのちの初夜」3~28頁

北條民雄『いのちの初夜』の文庫本を手にしたのは、
高校2年生のときであった
この本を教室で読んでいたとき
『いのちの初夜』という書名を女の子に見られ
好奇な目で嘲笑された苦い体験があった
このとき、私自身なぜ北條民雄が『いのちの初夜』というタイトルにしたか
理解できないでいた。
暫くこの文庫本は、書棚に眠っていた。
老人介護の世界に入り
ふと『いのちの初夜』を思い出し手にしたのは
29年前、36歳のときであった。

(1)
 癩病(らいびょう)はハンセン病とも言われている。
癩病はどんな症状であるのか、
『いのちの初夜』(15頁)に分かりやすく書かれている。
「どれもこれも癩(くづ)れかかった人々ばかりで」
というように表現されているように、
皮膚、筋肉が癩れ(崩れ)膿汁がしみだしている状態にある。
半年前に癩病であることを医師から宣告を受けた尾田高雄は、
ぽくぽくと歩きながら病院(隔離収容施設)へ向かう。
その途上で彼は
「一体俺は死にたいのだらうか、
生きたいのだらうか、
俺に死ぬ気が本当にあるのだらうか、
ないだらうか」
と自ら質(ただ)して見るのだが、
決心がつかないまま(4頁)、

病院の正門をくぐってしまう。
診察を受けた後、
看護師の風呂場に連れて行かれ、そこでは「消毒しますから・・・」
と言われ、
脱衣室とは口にも言えず、
「脱衣籠もなく、唯、片隅に薄汚い蓙(ござ)が一枚敷かれてあるきりで」(8頁)、
尾田は激しい怒りと悲しみを覚えた。
消毒液が入った浴槽から出た後、
棒縞の着物を着せられ
「なんといふ見すぼらしく滑稽な姿」
に苦笑している間もなく、
所持していたお金は病院内だけしか通用しない金券に交換されてしまった。
「親爪をもぎとられた蟹のように」なった自分の惨めさであり、
そこは監獄のような地獄のような世界であった

311;変わらぬもの

2017-08-18 00:00:08 | 老いびとの聲
変わらぬもの

多くの人たちは
渋滞にもめげず
故郷をめざす

故郷は遠くに在りて想う
人間の心は変わっても
故郷の風景は変わらぬ
その故郷には
父母は亡く (´;ω;`)ウッ…
墓の傍らに
秋桜が咲いていた