老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

319;あると思うな親と金と時間

2017-08-20 16:59:31 | 老いびとの聲
川の流れは時間の流れと似ている。
もとの水にあらず(方丈記)、
今日の時間は明日にはあらず

あると思うな親と金と時間   

 齢(とし)をとったせいか{嫌だねこの言葉}
今日は日曜日であるのにもかかわらず
早起き鶏よりも早く目が覚め 3時に起きてしまった
妻は「眠り姫?」なので
私が寝床から 静かに起き出しているつもりなのだが
「眠れない。日曜日くらいゆっくり寝せてよ」と小言を頂く
隣りに寝ているbeagle・gennkiまで起きだす


今年は真夏がなく過ぎ 秋に移り往くのか
陽は短くなり 5時過ぎてようやく明るくなる
春分の日を過ぎると これから陽が長くなり 心楽しくなる
秋分の日が近づくにつれ これから陽が短くなり 心寂しくなる
齢を重ねていくほど 
時間は早く通り過ぎてしまう、と感じる
過ぎた時間は戻らず 
残された時間は少なくなるばかり
人生は砂時計のようなもの
「あると思うな親と金」
それに時間を付け足し

「あると思うな親と金と時間」
徒に時間を浪費することなく
明日なき今日{いま}を生きていこうとしようか


318;北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論(3)

2017-08-20 11:56:57 | 文学からみた介護
北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論(3)
編集委員 大岡信 大谷藤郎 加賀乙彦 鶴見俊輔『ハンセン文学全集』1(小説)皓星社:北條民雄「いのちの初夜」3~28頁

(3)

重病者に献身的に尽くしている佐柄木の姿を目の当たりにしながら、
尾田は彼に親しみと同時に嫌悪を感じながら、
病室から飛び出し、病院の裏にある松林へ這入った。
枝に巻き着けた帯に首を引っ掛け死のうとする。
歩く人の足音が聞こえてきたので、
あわてて帯から首を引っ込めようとしたとたんに、
穿いていた下駄がひっくり返り危く死に損なった。
「尾田さん」と「不意に呼ぶ佐柄木の声に尾田はどきんと一つ大きな鼓動」を打ち、
危険く転びそうになる体を支えた。
佐柄木は、「死んではいけない」と咎めることもなく
「僕、失礼ですけど、すっかり見ましたよ」
「・・・・やっぱり死に切れないらしですね。ははは」(16頁)、
「止める気がしませんでしたのでじっと見ていました」(17頁)。

続けて佐柄木は優しさを含めた声で彼に話かける。
「尾田さん、僕には、あなたの気持ちがよく解る気がします。
・・・・僕がここへ来たのは五年前です。
五年前のその時の僕の気持ちを、
いや、それ以上の苦悩を、あなたは今味っていられるのです。
ほんとうにあなたの気持、よく解ります。
でも、尾田さん、きっと生きられますよ。
きっと生きる道はありますよ。
どこまで行っても人生には抜路があると思ふのです。
もっともっと自己に対して、自らの生命に謙虚になりませう」(17頁)。

彼は尾田に「癩病に成り切ること」で「生きる道」が見つかると励ましながら、
佐柄木は重病者の介護に当たるのであった。
ここでもまた佐柄木の言葉から、生きるとは、介護とは、何かを教えられるのであった。

「じょうべんがしたい」と訴える重病者の訴えに、
佐柄木は「小便だな、よしよし。
便所へ行くか、シービンにするか、どっちがいいんだ」と問いかけるのである

彼の言葉(彼の排せつケア)から、あなたは何を感じましたか。
重病者は両膝の下は足がなく、歩くことができないこともあり、
「しょうべんがしたい」と患者から訴えられたら、
何も考えずに当然の如く尿瓶をもっていき排せつ介助を行なうのが普通である。

佐柄木は相手に「便所へ行くか、シービンにするか、どっちがいいんだ」と選択肢を与え自己決定を促していることである。
援助とは何か、援助のあり方について、佐柄木を通して北條民雄は教えてくれている。
「佐柄木は馴れ切った調子で男を背負ひ、廊下へ出て行った。
背後から見ると、負はれた男は二本とも足が無く、膝小僧のあたりに繃帯らしい白いものが覗いていた」(18頁)。

「なんといふもの凄い世界だろう」。
この中で佐柄木をはじめ多くの癩病者が「生きるといふのだ」と尾田は胸に掌をあて、何もかも奪はれてしまって、唯一つ、生命だけが取り残されたのだった」(18頁)と感じるのであった

317;上手な介護サービスの活用処方 第3話「認定調査の項目」 ①

2017-08-20 03:15:03 | 上手な介護サービスの活用処方
 上手な介護サービスの活用処方 第3話「認定調査の項目」①

認定調査員からの質問により
受身的に認定調査を受けるのではなく
認定調査を受ける本人及び家族の介護者が主体者である


主体者であるからこそ認定調査の項目とその内容を知っておくことは大切
それは
介護を必要とする本人の状態を、認定調査員に正しく伝えることにつながる

認定調査は74項目あり
6回(①から⑥まで)に分け、調査項目の内容を紹介していく

まず認定調査票の構成は3つに分かれている
「概況調査」「基本調査」「特記事項」


概況調査;調査実施者(認定調査員)、調査対象者、現在受けているサービスの状況、置かれている環境(家族状況、住宅環境、傷病、既往歴等)

基本調査;調査項目は5群に分かれている
     第1群 身体機能・起居動作           13項目
     第2群 生活機能                12項目
     第3群 認知機能                 9項目
     第4群 精神・行動障害             15項目
     第5群 社会生活への適応             6項目
     その他 過去14日間にうけた特別な医療について 12項目
     ※該当する箇所をレ点で記載していく

特記事項;基本調査の選択根拠の確認、介護の手間と頻度の3つのポイントを聴き取りにより筆記する

特記事項に記載された内容は、介護認定審査会にとって、介護の手間や頻度がどのくらい要しているのか重要な情報源になる
     
※基本調査(第一次判定)は、介護の手間は「量」として検討されているため
認定審査会(第二次判定)は、実際に行われている介助や対応などの介護の手間がどの程度発生しているのか。
 つまり介護の手間を、「量」で表現するには介護の手間がイメージしずらいところがあり、言葉により介護の手間を記載することで具体化させることにある


認定調査員の聴き取り能力は、調査員によって差が生じ、第一次判定結果にも微妙な違いが生じる(人間のやることですから・・・)
それだけに認定調査員まかせではなく、本人及び家族の介護者から積極的に、介護の手間や頻度(介護の大変さ)を話していくことはとても大切
話された内容が、特記事項に記載される