老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

323;上手な介護サービスの活用処方 第4話「認定調査の項目」 ②

2017-08-21 19:49:24 | 上手な介護サービスの活用処方
上手な介護サービスの活用処方 第4話「認定調査の項目」 ②

【身体機能・起居動作】に関する認定調査項目 13項目ある
1-1 麻痺等の有無について、あてはまる番号をすべて〇印をつけてください(複数回答可)
1.ない  2.左上肢  3.右上肢  4.左下肢  5.右上肢  6.そのた(四肢の欠損)

    ここでは脳血管障害後遺症による麻痺を調査するのではない

《上肢の麻痺有無確認》
座位(椅子に座る)の状態で、下記の動作を行う

肘を伸ばしたままで、腕を前方及び横に、自分で持ち上げ、静止した状態で保持できるかどうかを確認する

腕が肩の高さまで上がらなければ、上肢は麻痺「あり」とチェックされる
猫背の人は、あごの高さくらいまで腕をあげることができなければ、上肢は麻痺「あり」とする


※上肢に、感覚障害としての冷感、しびれ感があてっも、麻痺等は「ない」として判断される

《下肢の麻痺有無確認》
椅子に座り、膝を伸ばし、下肢を水平位置まで上げ、静止した状態で保持できるかどうかを確認する
※下肢に感覚障害としての冷感、しびれ感があてっも、麻痺等は「ない」として判断される

1-2 拘縮の有無について、あてはまる番号をすべて〇印をつけてください(複数回答可)
1.ない  2.肩関節  3.股関節  4.膝関節  5.その他(四肢の欠損)

肩関節、股関節、膝関節は、他動運動(他の人が動かす)してみて、関節の動く範囲に制限があれば、拘縮ある項目にチェックを行う

家族の介護者は、おむつ交換の際の股関節や膝関節の動きに制限がある場合は、認定調査員に話すとよいでしよう


※下記以降は、1桃色・2黄色・3緑色 で対応している

1-3 寝返り  
1.つかまらいでできる
2.何かにつかまればできる
3.できない

1.仰向けに寝た状態で、何もつかまらないで寝返りができる
仰向けができなく、横向きに寝た状態から、うつ伏せができれば、寝返りができる、とされる


2.ベッド柵、ひも、サイドレール等に何かにつかまれば寝返りができる

3.介助なしでは、自力では寝返りができない場合は「できない」が選択される


1-4 起き上り
1.つかまらいでできる
2.何かにつかまればできる
3.できない


1.身体の上にふとんをかけないで寝た状態から上半身を起こすことができるかどうかを確認する
何もつかまらないで起き上りができる
ベッド上に手や肘をつきながら起きる場合も「できる」になる


2.ベッド柵、ひも、サイドレール等に何かにつかまれば起上がりができる
自分の膝の裏をつかみ、反動をつけて起き上がれる場合は、「何かにつかまればできる」を選択する
体を支える目的で手や肘をふとんにしっかりと加重して起き上がる場合は、、「何かにつかまればできる」を選択する


3.介助により起き上りを行っている場合は、起上がりが「できない」になる
途中まで本人が起き上りができても最後までできなく介助を受けたときも「できない」になる



1-5 座位保持
1.できる
2.自分の手で支えればできる
3.支えてもらえればできる

4.できない


1.背もたれがない状態での10分間程度座位ができるかどうか
背もたれが介護者の手による支えがなくても、座位保持ができる場合は「できる」を選択


2.背もたれは必要はないが、手すり、柵、座面、壁を「自分の手で支えれば」座れる

3.背もたれや介護者の手で「支えてもらえれば」座位保持ができる


4.できない場合の選択 


322;2つの笑い

2017-08-21 17:00:34 | 老いの光影
2つの笑い元教師

いまはまだら認知症で86歳の女性
週に3回デイサービスを利用されている
スタッフの言葉や動きを
よく人間観察している

或る日
ふと私に呟く
心から笑っている人の顔は
気持ちが安らぐ
仕事の笑いは
嘘の笑い つくり笑いなので
気持ちが伝わらない

言葉も同じ
同じ言葉を話されても
気持ちが伝わらない言葉もあれば
本当に心配してくれている言葉もある

ひとりで暮らしていると言葉を忘れてしまう
デイサービスに来ると
人間の声が聴こえる

321;北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論(4)

2017-08-21 11:48:53 | 文学からみた介護
北條民雄“いのちの初夜”(ハンセン病文学)からみた介護論(4)<
編集委員 大岡信 大谷藤郎 加賀乙彦 鶴見俊輔『ハンセン文学全集』1(小説)皓星社:北條民雄「いのちの初夜」3~28頁


(4)

隔離収容施設に入所し、最初の夜(初夜)を迎え悪夢から目が覚めた尾田、
全身に冷たい汗をぐっしょりかき、胸の鼓動が激しかった。
深夜の病室を見渡すと、「二列の寝台には見るに堪へない重症患者」の光景が眼に映り(22頁)、
癩菌は容赦なく体を食い荒らし死にきれずにいる癩病患者の生き様に、
尾田は「これでも人間と信じていいのか」と感じ、まさに「化物屋敷」であると(23頁)。
小説を書いていた佐柄木は、筆を止め「尾田さん。」と呼ぶのであった。
同室の癩病者(男性患者)は、癩菌が神経に食い込んで炎症を起していて、一晩中呻きやうな切なさですすり泣いている。
「どんなに痛んでも死なない、どんなに外面が崩れても死なない。癩の特徴ですね」と、佐柄木は話す。(25頁)
ある癩病患者(男)は、咽喉に穴があいていて、その穴から呼吸しながら五年生き延びてきた。
頚部には二、三歳の小児のような涎掛けがぶらさがっていた。
癩重病患者が棲む(住む)隔離収容施設(病院)の内部は、異常であり怪奇な人間の姿が繰り広げられていた。

佐柄木は、癩病者として生きていくことへの思いを、興奮しながら尾田に語るのである。

「人間ではありませんよ。生命です。生命そのもの、いのちそのものなんです。
・・・・ただ、生命だけが、ぴくぴくと生きているのです」
「廃人なんです。けれど、尾田さん、僕らは不死鳥です。
新しい思想、新しい眼を持つ時、全然癩者の生活を獲得する時、再び人間として生き復るのです」(26頁)。


佐柄木が尾田に熱心に語ったところは、この小説の核心部分である。
癩病患者としての苦悩や絶望から抜け切れないのは、過去の自分を探し求めているからだ。
癩病に罹ってしまった自分は、
(もう)人間ではなく、「癩病に成り切る」ことで、再び人間として不死鳥の如く蘇る。
尾田は癩病を宣告され、病室に案内された後も死のうと思い松林の中に行ったものの死に切れない。
同室の重病癩者から見れば、(現在の)尾田はまだ軽症ではあるが、彼らの姿はやがて自分も同じく癩菌により体が蝕まれていく。
死への不安、苦悩、絶望を抱き、悶々としながら癩病者が棲む病院で、
初日の夜を迎えた彼は、
黙々と重病患者に対し献身的に尽くす佐柄木から、
癩病者であっても「いのちそのものなんです」「癩病者に成り切ることです」「きっと生きる道はありますよ」と話しかけられた。
尾田は、癩病者として「生きて見ること」を思いながら、夜明けを迎えた。


「苦悩、それは死ぬまでつきまとって来るでせう」(28頁)。
佐柄木は盲目になるのがわかっていても癩病者として生きている人間の「いのちそのもの」を、
新しい思想、新しい眼で捉え、書けなくなるまでペンを持つと語る言葉に、
尾田と同じくこれからどう生きていけねばらないのか考えさせられた。

癩病が進行しこの世とは思えない「人間ではない」姿になっても、それでもなお生きており、「いのちそのもの」であること
そして再び人間として生きていく癩病者の「いのちそのもの」を感じとった初めての夜、尾田にしてみればまさに『いのちの初夜』であった

320;犬助け

2017-08-21 04:03:36 | 犬と人間
犬助け

今日は人助けではなく犬助け
那須アウトレットに行こうと
ラパンショコラを運転していたら
目の前に柴犬似の雑種犬が
舗装道路にうずくまっていた
ショコラから降り犬の傍に近寄った
「犬君」と声かけても反応なし
体を揺すってもピクともせず
死んでしまったのかな、と思いきや
犬は突然目が開き
よろよろしながら立ち上がった
「あっ! 生きている」
嬉しくなった
が、極限の空腹のせいか
歩くもふらふらであった
私の足元にすり寄り体をつけてきた

薄く剥がれた青色の首輪をしていた

(野良犬ではなかった)
毛並みは艶もなく老犬であった
老犬になり心無い飼い主が遺棄したのであろうか
そうだとしたら許せない


助手席にいた妻は
「家に戻りドッグフードと水を持って来ようよ」
と話しかけられ
私はショコラをUターンさせ自宅に戻った

ドッグフードと水を持ち
元の場所へ戻る
犬君では味気ない呼び方なので
「清水」と呼んでみた
缶蓋の容器にドッグフードを入れ
老犬の前に置いたが
警戒し食べようとはしない
妻が掌にフードを乗せ口元に差し出すと
安心したのか老犬は食べ始めた
体が衰弱しているとき
人間も介助により口元へ運んでやると
病人は口にする
掌には温もりがある
喉も乾いていると思い
容器にペットボトルの水を灌ぐ
老犬の体に水が沁み込んでいく

老犬は舗装道路の端を歩き
足元もふらつきはなくなってきた
交通事故に遭わないよう
後ろ姿を見送った