
黒ねこちゃん(小2):
レッスンに来たら、まずピアノのそばに掛けてあるブローチを 胸に付けてもらって、それからピアノを弾きます。
なぜなら、そのブローチは、付けるとピアノが上手に弾ける「魔法のブローチ」だからです。
それは1ヶ月ほど前のこと。
たまたま、先生が近所の人から「私にはもう派手だからあげるわ」と言われ、もらってきて、ポンと置いてあったブローチに、小さい女の子たちの目が釘づけになりました。
鳥の姿をかたどったそのブローチは、子どもの手のひらくらいの大きさがあって、トサカや長い脚は金(のように見え)、全身はぎっしりとダイヤで覆われ(ているように見え)ている、めちゃめちゃ豪華なブローチなのです。
「わぁー、すごい綺麗!」とうっとりする黒ねこちゃん。
「付けてあげようか?」と先生。
「えっ、いいの?!」
「いいよ。レッスンの人は誰でも付けていていいってことにしようか」
「うん!そうしたらね、ピアノが上手に弾けるの!」
「そうだね!魔法パワーのブローチだから」
「うん!」
そうしてピアノを弾いたら…見よ、魔法パワーあらたか。
とても上手に弾けたのは、黒ねこちゃんが息をつめるほど真剣に集中して弾いたせいじゃなく、きっと魔法のパワー。
「ほらね!?」
弾き終わってホッと息をつき、満足感いっぱいの黒ねこちゃん。
「ほんとだ!ブローチ付けたら上手に弾けたね!」と先生。
「でしょ?!」
「じゃ、これから毎週、これ付けて弾くことにする?」
「うん、そうする!」
というわけで、それから1ヶ月余。
今日も魔法のブローチをつけてレッスンに励む黒ねこちゃんであった。