三味線弾きの日常。

おもに津軽三味線弾き唄い。
ときどき地歌・上方唄。こっそり義太夫三味線。
三味の音を一人でも多くの人に届けたい。

未来のサムライミュージシャンズ発掘コンテスト 優秀賞受賞!

片山杜秀『線量計と機関銃』。

2019年07月29日 | 読書
2012年の出版である。
副題が「ラジオ・カタヤマ【震災篇】」とあるとおり、
2011年の震災以降にラジオ番組で語られた内容をまとめた本で
ずっと読みたかったのが今になってしまった。

片山杜秀の本(5)線量計と機関銃──ラジオ・カタヤマ【震災篇】
片山杜秀
アルテスパブリッシング


しかし、2012年に読むよりも
2019年の今読む方が、この内容はより一層切実で、おそろしい。
つまり、震災直後よりも今の方が、状況は悪くなっていると感じさせられるのだ。
2011年3月以降の数か月で、著者が危惧した民主主義の崩壊は
2019年の今、さらに進んでしまっている。
「3.11と12.8」と題された章の中で、
3.11は戦争が終わった8.15ではなく、
これから泥沼の戦争に進んでいこうとする12.8に、より似ていると
著者は指摘しているが、それに肯く人は今の方が多いのではないだろうか。
多すぎる情報、隠されている情報、難しすぎて正解が見えない情報、
カオスの中で私たちは判断することができなくなっていく。
なんともうすら寒い話だ。

タイトルになっている「線量計と機関銃」は
機械文明の起点と極限を示している。
拳銃やライフルを撃つためには訓練が必要だったが、
機関銃は素人による大量殺人を可能にしてしまった。
そのようにして、あらゆる分野で、人の訓練や鍛錬は無意味化し、
使い捨ての存在になっていく、その極限が原発労働者なのだ、と。
世の中に漂う無力感は、そういう日々の中から生まれてくるのだろう。
かつての炭鉱労働は歌や詩を生んだが、
現代社会においては、それは不要不急のものとして切り捨てられるのだ。
大阪市音楽団や文楽のように。(これも2011年の出来事だったのか、と改めて気づく…)

いちばん印象的だったのは第1章。
緊急地震警報の作曲者が、『ゴジラ』の作曲家・伊福部昭の甥だという話は
他のところで前にも見たことがあって知っていたのですが、
その伊福部昭は、『ゴジラ』の前年に『ひろしま』、
そのさらに前年に『原爆の子』という、いずれも原爆をテーマにした映画の音楽を担当しており、
さらにさかのぼって戦時中、強化木材の研究中に自身も被爆していた、という話。
何かに導かれるようなその繋がりに、戦慄を覚えました。

オリンピックまで一年を切って浮足立つ今こそ、
もう一度、あの時に立ち返って考えなおすべき時なのでは。と、
強く感じた一冊です。
(超真面目なブログになりました。)



Shamisen + vocal 静月
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►演奏予定
8月31日(土) 天Qレディースナイト
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