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アメフト観戦記や読書日記を綴っていましたが、最近は古墳(コフ)ニストとして覚醒中!横穴式石室をもつ古墳にハマっています。

西の京を歩く⑤ ~薬師寺~

2018-04-30 21:40:38 | 史跡を歩く
 西の京を歩くシリーズもこれで最後、薬師寺である。本来は、この間に唐招提寺などがあるのだが、時間の関係で当日省略をした。
 薬師寺については、誰もが知っている有名な古寺で、現在、世界遺産ともなっている。私ごとではあるが、父母が薬師寺の写経をやっていて、その関係で小さいころから何度となくこの寺を訪れている。そして、子どもながらにお寺さんの法話を聞かされていた。その父母もこの世にはいない。
 その頃は、ちょうど西塔を再建しようということで勧進をしていた時だったと思う。その頃を想うとずいぶんと容子も様変わりした。西塔を皮切りに、金堂、講堂、回廊と白鳳の姿を求めていくつかの堂舎が再建されている。

 

 薬師寺は、天武天皇が皇后鵜野讃良皇女(のちの持統天皇)の病気平癒を願って、薬師寺の建立を発願する。天皇の在位中には完成しなかったが、孫の文武天皇のときに一応の完成を見ている。現在、藤原宮跡の南にひっそりと残っている本薬師寺跡がそれであると言われている。
 
 

 都が藤原京から平城京へ移ったのち、薬師寺も飛鳥を離れ平城京に移転している。但し、元の薬師寺もそのまま藤原京に残っており、平安時代までは法灯を伝えていたと言われている。
 薬師寺も中世以後、失火や戦災などで徐々に寺勢が徐々に衰退していったと言われている。

 薬師寺と言えば、国宝に指定されている東塔を見たかったのだが、この時は、110年振りの解体修理ということでたてもの自体が完全に覆屋に覆われており、まったく目にすることはできなかった。

 
 
 せっかくなので、解体修理が始まるまでの東塔の雄姿をここに貼っておこう。

 

 

 

 東塔の解体修理は、2020年までかかるそうだ。

 薬師寺というと、白鳳時代の優品、薬師如来三尊像がある。国宝に指定されており、白鳳時代の仏像の最高傑作の一つと言われている。また、この薬師如来の台座には葡萄唐草文や異国風の人物像などが意匠されており、シルクロードの終着点と呼ばれる由縁となっている。

 
 
 講堂にも、薬師如来三尊像が安置されていたのだが、いつの間にやら釈迦三尊像になっていた。昔、薬師寺のほぼ同じ時期の薬師如来があることをどう理解するのかという論争もあったような気がするが、こういう解決策もあったのか。やりますなあ。

 

 境内の東側、回廊の外に東院堂と呼ばれる鎌倉時代の建築物がある。国宝に指定されており、正面七間、側面四間で入母屋造りの横に長い建物である。奈良にある建物らしく落ち着いた感じのあるいい建物なのだが、回廊の外にあるからか何となく疎外されているような感じがする。
 東院堂には、白鳳時代の優品である聖観音菩薩立像が安置されている。聖観音菩薩像は、若々しい青年のような顔つきをされているせいか、飛鳥時代の孝徳天皇の皇子、有間皇子の姿を写したものと言われることがある。大化の改新以後の政争に巻き込まれ若くしてこの世を去らなければならなかった悲劇の皇子への哀惜の念がそういう逸話を生んだのかもしれない。
 聖観音菩薩像は、東院堂の中に上がって鑑賞することができる。(残念ながら僕が行ったときは、奈良国立博物館に出品中であり、レプリカが飾られていた。)

 

 薬師寺と言えば、堀辰雄も「大和路」の中で以下のように書いている。
 「荒れた池の傍をとおって、講堂の裏から薬師寺にはいり、金堂や塔のまわりをぶらぶらしながら、ときどき塔の相輪を見上げて、その水煙のなかに透かし彫ぼりになって一人の天女の飛翔しつつある姿を、どうしたら一番よく捉まえられるだろうかと角度など工夫してみていた。が、その水煙のなかにそういう天女を彫り込むような、すばらしい工夫を凝らした古人に比べると、いまどきの人間の工夫しようとしてる事なんぞは何んと間が抜けていることだと気がついて、もう止める事にした。
 それから僕はもと来た道を引っ返し、すっかり日のかげった築土道を北に向って歩いていった。二三度、うしろをふりかえってみると、松林の上にその塔の相輪だけがいつまでも日に赫かがやいていた。」
 堀辰雄が訪れた時の薬師寺は、今の薬師寺とは全く違った姿であったろう。仮講堂、仮金堂、東塔、東院堂ぐらいしか境内になかったであろう。その中で、東塔の相輪が甚く心に残ったのであろう。

 そういったことを考えると、薬師寺は近年最も姿を変えた古寺の一つと言えそうである。

 

 現在は、さらに拡張し、伽藍の北側に玄奘三蔵院が建てられ、平山郁夫が制作した壁画が展示されている。
 そして、薬師寺から近鉄西の京駅から帰路につくとしよう。

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