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アメフト観戦記や読書日記を綴っていましたが、最近は古墳(コフ)ニストとして覚醒中!横穴式石室をもつ古墳にハマっています。

新トロイア物語

2014-03-16 23:14:57 | 読書日記
「新トロイア物語」
 阿刀田高著 講談社文庫

 立て続けになるが、阿刀田高を取り上げる。本書も、西洋の古典古代を描いた小説になる。今回も650頁を越える大長編、これを一気に2日で読み終えてしまった。内容もさることながら、分厚い本を読む体力が少し戻ってきた気がする。

 この間は、ギリシャ世界と東洋を結びつけるヘレニズム文化を生み出す契機となる大遠征を行ったアレクサンドロス大王を主人公とした小説だったが、今回はさらに時代を遡って、古典古代の始まるともいえるトロイア戦争を中心に描いている。トロイア戦争といえば、ホメロスが、英雄たちの活躍をうたった叙事詩「イリアス」の舞台となった戦争である。
 僕自身が、本書を読んで完全に勘違いしていたことに気付いた、トロイア戦争って、トロイアとミュケーナイを中心としたアカイア連合の遠征軍との戦いであり、トロイアが敗軍になるのだが、全く逆に思い込んでいて、ミュケーナイのアガメムノンは、この戦争で敗れて殺されるのだと思ってた。これが完全な思い違いだったのだな。だから、シュリーマンが発掘したのは、クレタ島にあるミュケーナイの方だと思い込んでいた。何とも情けない話であるが・・・。

 このトロイア戦争というのは、スパルタの王妃ヘレネとトロイアの王子バリスが駆け落ちをしたことから、ヘレネを略奪したものは、求婚したもの全員から報復を受けるという「デュンダレスの掟」が巻き起こした戦争である。
 その背景には、(この小説には書かれていないが)大神ゼウスとテミスによって、増えすぎた人間を減らすために仕組まれたものであったと伝えられている。当時の人間にとっちゃはた迷惑な話である。全く。
 この戦争は、10年続いたと言われる。(小説では、3年となっている。)これだけ長期間の戦争となるともはや戦を始めたきっかけというのはわからなくなっているということが往々にしてあるということなのだろう。

 かの有名なトロイの木馬も、本書では、伝説のように木馬の中に兵士が隠れていたのではなく、木馬を燃やして、神にささげることにより勝利を祈ったという形になっている。その後の地震により、砦の一部が崩壊し、そこからアカイア側の侵攻を許したと書かれている。作者は現代の小説として、荒唐無稽なできるだけ合理的に描こうとしているようだ。
 
 しかし、小説の中の登場人物がドンドン死んでいく。戦争に勝利したアカイア連合軍の指揮官たちも悲劇的な最後を遂げていく。何とも痛ましい気が読んでいてしてくる。最近、自分自身が年を取ってきたからだろうが、ちょっと死というものに敏感になっているところがあるので余計である。
 死ぬということは、避けることはできず、必ずどんな人間にも訪れるものなのだが、そうはいってもまだまだ関わりたくもない。でも死を迎えてしまうかもしれない不条理なんだなあ。ホメロスの叙事詩にも必ず死すべき人間って書かれている。そう死すべき人間ではあるのだが、簡単にそうですとも言いたくない自分がいてるのだなあ。

 本書の主人公は、トロイアの武将アイネイアスである。アイネイアスはトロイアの武将であり、このトロイア戦争に参加し、敗戦後は、仲間を率いてイタリア半島に渡り、後のローマを建国する。本書の後半は、トロイア戦争に敗れ、新天地を求めて、各地を転々とするアイネイアスの冒険物語になっている。
 これも、小説を読み進めていく途中で気づいたんだなあ。もしかして、ローマの建国に繋がっていくのかと。

 一つの伝承が、また新たな伝承につながっていくのだな。そういえば、アレクサンドロス大王のマケドニアはアキレウスの子孫だと言われている。こんなところにも繋がっている。歴史というものは不思議なものである。そして人の想いもつながっていくのである。

 本書は、吉川英治文学賞を受賞している。阿刀田高って、ショートショートというイメージがあったんだけど、こんな長編小説をかける人だったんだ。
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