飛鳥にある県立万葉文化館、2001年に開館し、万葉集をテーマとする博物館である。最近は、駐車場や展示室が無料で利用できるのでよく利用させてもらっている。特にミュージアムショップで、奈良の情報誌「ならら」を売っているのでその本を買うことも多い。
その万葉文化館には、万葉集に関する草木を植栽した庭園があり、その庭園内には5つ万葉歌碑が設置されている。そのうちの一つ。
雨が降った後なので、歌碑が濡れていて非常に字が読みにくくなっているが、「春日なる 三笠の山に 月の舟出づ 遊士(みやびを)の 飲む酒坏に 影に見えつつ」と書かれている。歌の調子が、57577となっておらず、577577となっている。これを旋頭歌といい、古事記、日本書紀、万葉集などで見られる形式で、万葉集では、62首収録されている。そして、このうち35首が柿本人麻呂歌集がら採録されている。
歌意としては、春日の山に、月の舟がでている。風流士が飲む酒坏にその影を落としている。という内容である。月の舟という表現は、たぶん、柿本人麻呂の「天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ」という歌を意識しているのではないだろうか?
空を海に、月を舟に、そして星を林に見立てる雄大なイメージの世界を、今から、1300年程昔の人が歌に詠んでいるというところが驚きである。そして、この歌も、春日の山に舟のような三日月が出ている。と詠んだのを受けて、風流を解する男たちの酒坏に、その月の影が浮かんでいると別の人が歌ったのだろうか。ロマンチックな世界であるなあ。
酒宴の中で歌われたのだろうか。この歌は、柿本人麻呂歌集からのものではなく、奈良時代に詠まれたものと考えられている。そう聞くと非常に貴族趣味的な気がする。
最初に、この歌碑を見つけた時はちょうど梅雨のころ。周辺には紫陽花の花がきれいに咲いていた。
これも最近の心境の変化だが、こういう草花をきれいなあと思ってみることが多くなった。コロナ感染症対策として外出禁止をしたおかげで空気が澄んできたような気がする。そして、周りの景色が凄く鮮やかに見えるように思うのだが、それは気のせいなんだろうか?どうだろう。
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