「九月の空」
高橋 三千綱著 角川文庫
この小説も、先日書いた「スローカーブをもう一球」と同様に、次女にお勧め本をということで本棚から取り出してきて、再読をしたもの。
僕が、この本を読んだのが、確か高校1年生の時であったから、30年近く前になるのか。恐ろしい・・・。
本書は、「五月の傾斜」「九月の空」「二月の行方」の3篇の連作小説から構成されており、「九月の空」は、1978年第79回芥川賞を受賞している。
当時、この小説の文体に非常に引かれて、しばらく高橋三千綱の小説ばかり読んでいたときがある。簡潔で、都会的なドライな感性をもった文体に惹かれたものだった。そして文章を書くとき、○○○な刹那という表現を良く使ったものだ。
この小説は、剣道部に所属する小林勇を主人公とする、剣道への情熱をストイックに表現した青春小説である。男臭い学生生活の中、時折女性へのほのかな感情をが出てくる。(この年齢になって読むとちょっと恥ずかしい気持ちになるが・・・。)思春期の少年の感情を素直に描いていて、好感の持てる小説であった。
この時代、まだまだ高校にすら苦労をして通学する時代だったのだなあと思う。(そういえば、大学生の時は、自分で学費や生活費を稼いでいる学生がいた。)そういった経済的困難にもまっすくに受け止めている主人公の姿にも好感が持てた。
青春時代に、この小説の主人公のように愚直に、ストイックに何かに取り組むことがあってもいいと思うし、こうあってほしいとも思う。
高校時代に、一つのことに一心不乱に取り組みことは悪くないことだ。そんなところを読み取って欲しい。
(ただ、「二月の行方」の表現でちょっとどぎついところがあるのがなあ・・・。)
青春時代に、ぜひとも読んで欲しい一冊のような気がしているのだが、どうでしょう。
ちなみに、最近知ったことなのだが、この小説「九月の空」は、石野真子をヒロインに映画化がされていたらしい。(そんなイメージとは違わないような気がするな。)それだけである。
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