WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ザ・グレイト・ジャズ・トリオのアット・ザ・ヴィレッヂ・ヴァンガード

2006年08月11日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 29●

The Great Jazz Trio   

At The Village Vanguard

Scan10008_6  今日はしばらくぶりに休みをとった。完全オフは本当にしばらくぶりだ。昼間は子どもたちと遊んだり、勉強を見てやったりで、やっと夜になって、自分の時間がもてた。

 The Great Jazz Trio At The Village Vanguard (1977年録音)。久々に聴いたが、やはりすごい作品だ。なにしろ、1970年代のピアノトリオ作品といえば、この一枚にとどめをさす、といわれる作品である(『名演Modern Jazz』講談社) 。何がすごいって、もちろんハンク・ジョーンズではない、ロン・カーターでもない。このアルバムを名盤たらしめているのは、トニー・ウィリアムスのドラムだ。トニー・ウィリアムスのドラムが、2人の先輩に対して、「ほら、もっとやれよ」とあおっている感じだ。ロン・カーターとハンク・ジョーンズもトニーに触発されて、緊張感のある創造性に富んだプレイを展開する。ライブ盤はこうでなくちゃいけない。そもそも、意外なことだが、このトリオの結成を言い出したのは、一番若いトニー・ウィリアムスその人だったようだ。

グレート・ジャズ・トリオは、その後もハンク・ジョーンズをリーダーとして頻繁にメンバーを入れ替え、現在存続している。

 中山康樹は『ジャズの名盤入門』(講談社現代新書)のなかで、このアルバムについて、

《GJTは、トニーのいた時代につきる。事実トニー脱退後は「ほとんどフツーのピアノトリオ」に変質、意外性も意表をつく展開もスリルもサスペンスも激減した。》

と語った。ちょっといいすぎであるが、基本的には私も同感である。

 なにせ、トニー・ウィリアムスは、わずか17歳であのマイルス・デイビス・クインテットに抜擢され、黄金時代をつくりあげた天才ドラマーなのである。