●今日の一枚 33●
Holly Cole Trio
Yesterday & Today
Holly cole trio の 1993年、録音作品、Yesterday & Today を今聴いている。なかなか聴き易くていい。ボーカル、ピアノ、ベースという編成は、意外にいい。サウンドに落ち着きと深みがあり、しかもアコースティックな雰囲気がよく伝わってくる。Holly cole は、この編成のトリオに限る。一時、エレクトリック路線、ポップス路線に移行したようだが、最近また戻ったらしい。当然だ。このようにマッチするトリオはなかなかあるものではない。このトリオでは、ベースの役割が重要だ。深く柔らかい音で、ピアノやボーカルともよく絡むのだ。でしゃばらす、かといって引っ込みすぎず、全体のサウンドをしっかり支え、アクセントをつけ、そして包み込んでいる。
Holly cole trio は、いまや日本ではけっこうな人気を誇っているようだ。ミーハーといわれるかもしれないが、私はこのトリオが好きで、CDも数枚所有している。このアルバムは、買ったばかりの頃はピンとこなくて、CD棚に放置してあったのだが、ちょっと前にたまたま取り出して聴いてみたらこれが思いのほか良かった。以来、仕事の最中などにときどき取り出しては聴いている。① Alison が好きだ。一緒に口ずさんでしまう。エルヴィス・コステロの曲がこんな風に料理されるなんて素敵だ。ホリー・コールの良さは何といっても、曲の解釈の仕方にある。あの曲をこんなふうに料理しちゃうの……、というのがたくさんあるのだ。そのことこそが、JAZZ的であるといえるだろう。
ところで、雑誌Swing Journalに 「Swing Journal 選定ゴールド・ディスク」というのがあるが、多くのジャズ・ファンが嘆くように、その選定基準・選定理由が不明確で、なぜこの作品が選ばれるのか、なぜこの作品が選ばれないのかが理解できないことが多い。以前は、この「Swing Journal 選定ゴールド・ディスク」を信用してレコード・CDを購入し、失望したことが何度もあった。Swing Journal誌に巨額の広告料を支払い、カラーの大きな広告をのせることが条件だという噂を聞いたことがあるのだが、本当だろうか。実際、最近は、毎月同誌にカラー広告が載るヴィーナス・レーベルのCDが、選定ゴールドディスクとなることが多いようだ。
ホリー・コール・トリオは、日本でも人気が高く、それなりにいい作品もあると思うのだが、なぜかSwing Journal誌で取り上げられることが少ない。選定ゴールド・ディスクどころか、紹介記事もほとんどない。不思議だ。1992年の「日本ゴールドディスク大賞」の新人賞とジャズ部門賞を受賞しているのにである。ジャズとして認識されていないのだろうか。ちなみに、近年、大人気の綾戸智絵さんの紹介記事もほとんどない。綾戸智絵さんに対する賛否はあろうが、少なくともジャズシンガーの範疇で扱うことには多くの人は異論はないと思うのだが……。
ジャズ雑誌も経営的に大変なのはよくわかるが、メディアとしてジャズ作品の良し悪しを伝える使命があるだろう。その意味でSwing Journal誌には紹介記事についてフェアであってもらいたい。