●今日の一枚 147●
Clifford Brown = Max Roach
高名な批評家、後藤雅洋氏は『新ジャズの名演・名盤』(講談社現代新書)のクリフォード・ブラウンに関する項目を次のような文章ではじめている。
《 クリフォード・ブラウンは、ハード・バップ以降の最高のトランペッターである。まず、ここのところを押さえておきたい。 》
まことに断定的な言い回しであるが、これに異を唱えるジャズ聴きはそう多くはないであろう。それほどまでにクリフォード・ブラウンのトランペットは素晴らしい。もちろん私も後藤氏の言に異存のあろうはずがない。
明るく翳りのない張りのある音色ははちきれんばかりに輝かしく、そのアドリブはまるでひとつの曲であるかのようにスムーズでよどみなく、そして美しい。演奏は、いつだって熱気とエモーションに溢れ、ブラウニーの額から汗がほとばしるのが見えるようである。
1954年録音の大名盤『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ』(Emarcy)、私の20数年来のお気に入りのひとつである。どの演奏も素晴らしいが、⑥ ジョードゥ は白眉である。私にとっては、この曲を聴くためのアルバムであるといっても過言でなく、とくにCD時代にはいってからはこの曲だけを繰り返し聴くこともしばしばである。
クリフォード・ブラウンは、この時期としてはめずらしく麻薬に手をだすこともないクリーンな演奏家だったが、1956年に交通事故によってわずか25歳で夭折してしまった。ブラウニーの死と前後するようにマイルス・デイヴィスがプレッステッジに「ING四部作」を発表し、以後トップトランペッターの地位に躍り出ていく。後藤雅洋氏は前掲書において、もしもブラウニーが生きていたらジャズシーンはどうなっていただろうと想像し、次のように書いている。
《 クリフォード・ブラウンに対する評価は変わりなかろうが、マイルスに対する世評は当然ブラウンとの対比のうえで若干の変化があらわれていたのではなかろうか。 》
いわれてみれば、同感である。