WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

I Just Dropped By To Say Hello

2007年04月05日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 150●

Johnny Hartman

I Just Dropped By To Say Hello

Watercolors_12  今、深夜の3時だ。昨夜は、妻と長男が実家に泊まりにいったため、次男と二人だった。ふたり残されたわれわれは、男同士の共犯関係のような感情で、妻たちに内緒で焼き肉屋で飯を食べ、サウナに行ってゆっくりと寛いだ。まだ小学3年生の次男は、私との秘密の行動にかなり満足したようで、帰宅するとすぐに眠ってしまった。わたしも一緒に寝たのだが、意に反して目が覚めてしまったのだ。

 ジョニー・ハートマンの1963年録音作品『アイ・ジャスト・ドロップト・バイ・トゥ・セイ・ハロー』(impulse) 、コルトレーンとの競演盤とほぼ同時期の録音だ。ジョニー・ハートマンのようなスタイルをクルーナーというのだそうだ。クルーナーとは、語りかけるようなソフトな発声でなめらかに歌うスタイルのことだ。ささやくようにゆったり、しっとりと歌うそのボーカルを聴いていると、もっと英語が理解できたなら、感動はさらに深まるだろうになどと思ってしまう。深夜で音量を絞って聴いているため、ハートマン独特の低音の響きを体感することはできないが、そのかわりクルーナー唱法の趣をじっくりと味わうことが出来る。ハンク・ジョーンズのピアノがリリカルですばらしい。ところどころで絶妙のアクセントをつけるケニー・バレルとジム・ホールのギターもなかなかいい。

 ところで、このアルバムを知ったのは比較的新しく、雑誌『サライ』2005.2.3号の特集「レコードを今こそ聴き直す」の中で、オーディオ評論家の菅野沖彦氏のレコード棚に飾ってあるのを見たのがきっかけだった。渋くて趣のあるジャケットだと感じたのだ。菅野氏はその記事の中で、レコードについて次のような傾聴すべき発言をされている。

「レコードを聴くには、盤面に触れないように丁寧にジャケットから出し、ターン・テーブルに載せて、針を慎重に置く。そうした一連の儀式が必要でした。レコードをかけるのは受身の行為ではなく、聴き手も参加する演奏行為なのです。」「プレーヤーの扱い方にも面白みがある。工夫次第で自分の好みの音が出せるんです。CDに比べて、人とのかかわりが濃密なんですね。」「大きくて目立つLPのジャケットは芸術性が高いうえ、時代の証言者でもある。レコードは音楽だけでなく、芸術や歴史をも含んだ、総合的な文化遺産なんです。」

 残念ながら、私がもっているのはCDだ。

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