●今日の一枚 155●
Nina Simone And Piano !
こういう音楽を聴くとあまりに自分自身にフィットしすぎてどうしていいかわからなくなる。自分の「演歌的」な部分が刺激され、細胞のひとつひとつが音に共鳴し始めるような感覚に襲われて怖いほどだ。
1968年録音のニーナ・シモンのピアノ弾き語り盤『ニーナとピアノ』……。もちろん、黒人的なソウルを感じるのだが、私はもっと、人類史的なネイティブな何かを感じてしまうのだ。美しいとか感動的とか以前に、身体が細胞が反応してしまう。そして、ああ私は生きているなどとわけのわからぬことを考えてしまう。
しかしそれにしても、そのソウルフルなボーカルに比して、このピアノのまっすぐで端正な響きは何だろう。クラシックのおぼえのあるニーナにしてもれば当然のことなのだろうが、一見正反対に思えるボーカルとピアノがきちんと溶け合い、互いに支えあっているのがすごい。八木正生は「セロニアス・モンクのピアノも凄いが、ニーナのピアノも凄い」といったそうであるが、それも納得できるような響きである。