●今日の一枚 187●
Marc Johnson
The sound Of Summer Running
暑い日である。真夏だ。今日は私の街の夏祭りである。みなとまつりだ。子どもの頃はすすんで打ち囃しなどに参加しお祭り小僧だった私も、近頃は喧騒の街の中心部まで出るのが億劫であり、むしろクーラーの効いた部屋であるいは風の涼しいテラスで、ビールでも飲みながら静かな時間を過ごすのを好むようになった。今日も息子はみこしかつぎに出かけて行ったが、私は日曜大工をして、一日中家で過ごした。さすがに、家族の不満もあり、夜からの花火大会には行かねばなるまい。
暑い夏ということで、夏らしいアルバムを一枚。マーク・ジョンソンの『ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング』、1997年の録音作品(verve)だ。、ビル・フリーセルとパット・メセニーという二人のギタリストを起用したことで話題になったアルバムである。マーク・ジョンソンといえば、ベース通の間ではビッグ・ネームなのだと思うが、私などはビル・エヴァンス・トリオ最後のベーへシストという印象が強い。ライナーノーツのインタビュー記事によると、「80年代の初め、ビルが亡くなった後、その素晴らしい思い出を再現したいと試みたことがあったけれど、そんなこと絶対に不可能なことがわかったんだ。ビルはもう、いないんだから。そこから、ピアノトリオとはサウンド的にまったくかけ離れたことをやってみようと思い始めた。要するに、ピアノ・トリオとは違う可能性を探ることが、僕の進むべき道に見えたからだ。」と、マークは語り、ストレートなジャズではない分野に足を踏み入れて行ったようだ。
題名の通り、夏のアルバムである。夏のイメージ満載だ。ただ、ギラギラと太陽が照りつけるだけの夏ではなく、暑い中にも何か涼しい風のような清涼感のある。あるいはカラフルなサウンドではあるが、どこかノスタルジックなイメージのある作品である。アメリカン・ポップの最も良質な部分を、ジャズ的なテイストで料理したということになるのだろうか。
それにしても、あのビル・エヴァンス・トリオ最後のベーへシストが、こういう地点に到達したことに、改めて驚かされる。