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「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」での遺族・藤崎光子さんの訴え

2017-05-05 22:39:41 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

4月22日、兵庫県尼崎市で開催された「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」での遺族・藤崎光子さんの発言内容の動画をYoutube「タブレットのチャンネル」にアップロードしましたのでお知らせします。なお、関連記事も併せてご覧ください。

170422JR福知山線脱線事故遺族の訴え 藤崎光子さんノーモア尼崎集会

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ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」報告資料

2017-04-25 22:33:34 | 鉄道・公共交通/安全問題
4月22日、兵庫県尼崎市内で「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」が例年通り行われ、約130人が集まりました。今年の集会は「国鉄分割民営化30年を検証する」がメインテーマに、坂口智彦・国労中央執行委員長が記念講演。安全問題研究会もJR北海道の現状について報告を行いました。

以下、安全問題研究会が行った報告の内容をアップします。これ以外の主な内容は以下の資料の通りです。なお、JR福知山線脱線事故「遺族からの訴え」(藤崎光子さん)については、動画で録画していますが、youtubeへのアップが終わっていません。アップでき次第ご紹介します。

170422「ノーモア尼崎!生命と安全を守る4.22集会」配布資料

170422安全問題研究会報告のPDF版(以下の内容と同じものです)

170422記念講演・JR30年~坂口智彦国労委員長(音声ファイル・約35分)

集会参加者からの報告記事(レイバーネット日本)「重大事故の責任いまだ問われず~ノーモアJR尼崎事故!命と安全を守る4.22集会」

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ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」報告資料~全営業キロの半分が廃線の危機! JR北海道の経営破たんを招いた国鉄「改革」

2017.4.22 安全問題研究会

 JR北海道は、島田修社長が2016年11月18日に記者会見し、宗谷本線名寄~稚内間など計13区間について、同社単独では「維持が困難」になったことを公表した。対象区間のうち3区間(輸送密度200人未満)はバス転換が適当とし、残る10区間(輸送密度200人以上2000人未満)についても、上下分離方式などの地元負担が必要としている。



 廃止路線が旧産炭地の路線や盲腸線中心だった国鉄分割民営化当時と異なり、今回の13区間には、根室線帯広~釧路~根室間、釧網線東釧路~網走間など、主要都市間輸送を担う基幹路線のほとんどが含まれている。営業キロで見ても1,237kmと、JR北海道全体(約2,500km)の半分に相当する。もしこのすべてが廃止や地元負担となった場合、地元の社会経済に与える打撃は計り知れないものになる。

 すでに、JR北海道は2015年9月、「2015年度末までには社員の給与支払いに充てる資金がマイナスに陥る」として国から1,200億円の緊急支援を受けている。民間企業であれば、労働者の賃金が支払えない状態は事実上の倒産とされる。今回の発表は、実質的にはJR北海道の「破産宣言」に当たる。この際のJR北海道の試算では、同社が経営破たんに陥るのは「2018年度」となっていたが、試算よりはるかに早く破たんした。

 JR北海道は新幹線含む全線が赤字であり、経営破たんの原因が、北海道だけを単独の会社とした国鉄分割民営化の枠組み自体にあることは当然だ。民営化初年度(1987年度)決算で、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずかに2.5%、JR四国が1%、JR九州が3.6%に過ぎなかった。JR北海道全体の営業収入(919億円)は東京駅の収入(約1000億円)より少なく、JR東日本1社だけでJR7社の営業収入の43.1%を占めていた。

 2017年2月17日、衆院予算委で本村伸子議員(共産党)が行った質問によれば、JR東海の鉄道事業営業収益は5,556億円であるのに対し、JR北海道は-483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1,242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそ国鉄「改革」とJRの歴史であったことが鮮明になった。

 儲かる路線で儲からない路線を支えていた国鉄時代の内部補助制が分割で崩壊、儲かる路線の利益はJR本州3社の経営者が分捕り、北海道、四国、九州の損失は地元自治体・住民に押しつけられた。国鉄を葬った者、1047名の国鉄労働者を路頭に迷わせ、それ以外の多くの国鉄労働者を自殺に追い込んだ者、東京駅より少ない収入のJR北海道にできもしない「自立」を迫り、経営破たんに導いた者の責任を追及しなければならない。

 経営破たんの原因として、民営化に当たって政府が用意した経営安定基金の運用益が、低金利によって約4,000億円も減少したことに加え、2009年の「高速道路1,000円乗り放題」政策による乗客の逸走(自動車への転移)も大きい。JR北海道の経営を支えていた長距離旅客は、1,000円高速政策が終了後も今なお鉄道に戻っていない。

 長距離旅客減少による経営悪化は、安全崩壊となって表面化。2011年の石勝線トンネル内における特急列車火災事故、2013年の函館本線における貨物列車脱線事故と続いた。その後のレール検査データの組織的な改ざんは、JR会社法に基づく初の監督命令の発出に加え、当局の強制捜査、起訴によって刑事事件に発展した。この間、2人の社長が自殺している。

 JR北海道社内に設けられたJR北海道再生推進会議は、同社が民営化以降の30年にわたって、本来であれば安全投資に回すべき費用を、高速バスや航空機との競争の中で高速化に充てていたと指摘。2011~13年にかけ相次いだ事故やトラブルは、30年にわたった安全軽視と怠慢の明らかな帰結だ。再生推進会議は、こうしたJR北海道の安全軽視と怠慢を棚に上げ「安全か路線かの二者択一」を会社に迫る提言をまとめたが、地域公共交通、住民の足が守られるよう願う地元の意思を無視した一方的な提言であり、認めることはできない。

 北海道で生産された農産物は、全国津々浦々に鉄路で運ばれ消費されている。北海道から本州に向けて運ばれる鉄道貨物の4割は食料品輸送であり、ホクレン(農協)がみずからコンテナを製作、北海道新幹線の開業に伴って並行在来線が経営分離された第三セクター「道南いさりび鉄道」にも農協が出資しているほどである。この陰には保線や除雪などの莫大な経費を、北海道民が本州より高い運賃を通じて負担している事実もある。

 仮に道内の鉄路がなくなった場合、同じ輸送力を確保しようとするとどのようなことが起こるだろうか。青函トンネルを挟んだ青森~函館~札幌間に限っていえば、500t×51本(上下合わせて)の貨物列車で1日当たり25,500tもの貨物が運ばれている。仮にトラック(10t車)で置き換えるならば、1日当たり延べ2,550両もの車両と延べ2,550人もの運転手が新たに必要になる。ネット通販拡大による小口荷物の激増とトラック運転手の不足で首都圏などではすでに指定期日・時間通りに宅配便が届かないことが常態化しており、こんな時に大量輸送に適した鉄道を廃止してどうするのか。

 一方、北海道庁内に設けられた北海道鉄道ネットワークワーキングチームは、JR北海道が単独では維持困難とした13線区に関する鉄道網のあり方として、(1)札幌市と中核都市を結ぶ路線、(2)広域観光ルートを形成する路線、(3)国境周辺・北方領土隣接地域の路線、(4)広域物流ルートを形成する路線、(5)地域の生活を支える路線、(6)札幌市を中心とする都市圏路線――の6類型に分類。(1)については「維持すべき」、(2)及び(5)は地域で検討、(3)は鉄路の維持が必要、(4)は総合的に対策を検討、(6)は「道内全体の鉄道網維持に資する役割を果たすべき」――とそれぞれ位置づけ、6類型のうち「(1)が石北線、(3)に宗谷線が該当」とした。特に(2)と(5)については、地元との協議の結果次第では廃止~バス転換を容認するものであり、道が地元路線を守るどころか、一部線区の廃止に積極的に手を貸すものになっている。

 2002年の鉄道事業法「改悪」によって路線の廃止が許可制から届出制となり、鉄道会社は廃止届を出せば1年後に路線を廃止できるようになった。国交省には廃止を繰り上げる権限だけが与えられ、廃止を差し止める権限がないなど問題だらけの改悪であった。だが、ローカル線廃止のこれまでの例を見ると、地元自治体との協議が整うまでは廃止届を出さないという「紳士協定」はとりあえず守られており、2016年12月に行われた日高本線の廃線提起の席でも、JR北海道は「地元同意のない状態では廃止届は出せない」と、地元同意がないままの廃止届の強行提出を一応は否定している。

 2017年2月8日の衆院予算委で、松木謙公議員(民進党)の質問に対し、麻生太郎副総理兼財務相が「JR九州の全売上高がJR東日本品川駅の1日の売上高と同じ。JR四国は1日の売上高が田町駅と同じ」「貨物も入れて七分割して、これが黒字になるか。経営がわかっていない人がやるとこういうことになる。(JR北海道をどうするか)根本的なところをさわらずしてやるというのは無理」と答弁するなど、危機感は自民党内の一部にも広がりつつある。(参考資料――衆院予算委員会会議録 平成29年2月8日

 国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。

 2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流である。国鉄「改革」から30年。耐用年数の切れた「民営JR」体制を根本的に改め、再国有化など、国民の足の復活を求める広範な闘いに今こそ踏み出すときである。

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市民に支持された「安全問題」でのストライキ

2016-12-11 18:04:54 | 鉄道・公共交通/安全問題
サムネイル写真=スト決行を予告する労働組合の掲示(クリックで拡大)


なぜ臨港バスは36年ぶりのストに踏み切ったのか(神奈川新聞)

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【文化部=齊藤大起】最長16時間に及ぶ勤務の「拘束時間」の軽減を求め、川崎鶴見臨港バス(川崎市川崎区)の運転士らが36年ぶりのストライキに踏み切ってから1週間。その訴えは、バス業界全体で長時間勤務や休日出勤が常態化している厳しい労働環境を浮き彫りにした。

■6時間の「中休」

 「カネじゃない、安全のために訴えている」。同社の労働組合幹部は話す。労働条件を巡る「秋闘」の一環で12月4日、組合は24時間の時限ストを実施、横浜市鶴見区を走る一部路線を除き、全ての運行を止めた。

 会社に求めたのは、労働時間外の休み時間である「中休」を減らすことだった。バスは朝夕のラッシュ時間帯に運行が集中し、日中は間隔が空く。そのため、中休を挟んで1人が早朝から夜まで担当することが多い。

 以前は早朝から午後早くまでの「早出」と、午後から深夜までの「遅番」を別々の運転士が担当することが多かったが、同社は「2人を要していた仕事を1人に担当させれば効率よく走らせられる」との理由で、中休の必要性を説明する。

 だが、6時間ほどもある中休は「拘束時間」には含まれるものの労働時間とは見なされず、若干の手当が付くほかは無給。街中へ出たり、いったん帰宅したりできる自由時間とはいえ「夕方からの乗務に備え緊張状態は続く」と労組は主張する。営業所の仮眠室で休憩する社員もいるという。帰宅が遅いことで家族と過ごす時間も削られる。

 中休を含む勤務は、組合の話では総数の約4割に上り、5年ほど前は週1回程度だった頻度が週2、3回に。会社側は「営業所ごとに異なり、一概に割合は示せない」とするが、組合員の一人は「人命を預かる重大さを分かってほしい」と訴える。

■実効性薄い基準

 「そもそも、運転士を守るべき規制が脆弱であることに問題がある」。労働経済学が専門で、バスやタクシーなど運輸業界の実態に詳しい北海学園大の川村雅則教授は指摘する。

 実際、同社が「法令の範囲内で勤務を組んでいる」と強調する通り、16時間に及ぶ「拘束」は、厚生労働省の基準に収まっている。

 同省は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)でバス運転士の拘束時間を1日16時間、週71時間半まで許容。同基準の意義を「バス運転者の労働条件を改善するため」としつつも「労働実態を考慮して基準を定めた」と、むしろ長時間拘束を容認している形だ。

 その上、睡眠不足への対策も十分でない。労働後の休息を11時間と定めた欧州連合(EU)に比べ、同基準は8時間。例えば、午後11時までハンドルを握った運転士に、翌朝7時からの運転を命じることができるのだ。

 川村教授は調査で「十分な睡眠時間がとれない」と訴える運転士が半数近くを占め、健康や安全に影響を与えている現状を指摘。「自動車には鉄道や飛行機のような自動制御装置がなく、運転者の状態が安全を左右する」として、規制強化を訴える。

 しばしば、バス会社に寄せられる「運転士が無愛想」「運転が乱暴」といった苦情にも、川村教授は着目。「背後に長時間労働による疲労があるのでは、と想像してほしい」と話す。

■背景に規制緩和

 だが、現実は真逆だ。2000年以降の規制緩和のあおり受け、バス事業は過当競争の渦中にある。運転士の給与にも反映している。

 厚労省の統計を基にした川村教授の分析によると、かつて全産業平均を上回っていたバス運転士の平均年収は同年に逆転し、15年は427万円と全産業平均の548万円の8割未満に。15年にわたり120万円以上も下がり続けている計算だ。

 そもそも、かつて全産業平均を上回っていたのも、バス運転士の総労働時間が一貫して長いためで、給与水準が高いからではなかった。川村教授は、運転時間の長さが収入を左右する給与体系自体が、望まない超過勤務や休日出勤を強いられる「強制性と自発性がないまぜになった長時間労働」を生じさせていると指摘。「基本給で生活できる社会を築くべきだ」と話している。
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神奈川県川崎市を営業区域とする「川崎鶴見臨港バス」の労働組合(臨港バス交通労働組合)が、12月4日(日)、1980年以来、実に36年ぶりの24時間ストライキに踏み切った。会社側は、表向き、組合側との協議を続けているようにホームページ上では説明していた。だが、誠意のある姿勢とはとても言えなかったらしく、結局、労使交渉はまとまらないまま、組合側は24時間ストを打ち抜いたようだ。

公共交通機関のストが頻発していた1980年代まで、これらのストに対する市民感情は、賛否相半ばしていた。支持する声ももちろん強かったが、交通機関利用者からは迷惑だとして組合側を批判する声も多かった。こうした批判を気にして、交通機関の労働組合から、いつしか戦術としてのストライキは消えていった。

その結果、記事にあるように、人命を預かる重要な仕事であるにもかかわらず、バス運転手の待遇は全産業平均を下回るようになった。公共交通企業の人員削減と、生活に必要な賃金を確保するための両面から、運転手は長時間労働を受け入れざるを得なくなった。過酷な勤務実態が社会問題化した夜行高速ツアーバスはもちろん、最近は一般の路線バスでも、以前なら考えられなかったようなお粗末な事故が起きるようになってきている。

川崎鶴見臨港バスの、6時間の「中休」を間に挟んだ16時間拘束の勤務形態は、バス労働者の労働条件悪化の象徴例だろう。「中休があるからいいじゃないか」という声もあるだろうが、それは現場実態を知らないからだ。6時間後にまた勤務が控えていると思うと気が休まらないし、仮眠を取ったところで熟睡もできず、疲れも取れないのは当然だ。実質的には拘束時間と言ってよい。「カネじゃない、安全のために訴えている」という労働組合幹部の発言からは、ひしひしとした危機感が伝わってくる。

驚いたのは、インターネット上でこのストライキを「支持」する声が相次いだことだ。例えば、スト決行を伝える臨港バス交通労働組合関係者と見られるツイッターや、ニュースサイトのコメント欄には、次のような感想が書き込まれている。

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・労働者には不当搾取に抵抗する権利がありますからね。ストライキに踏み切った鶴見臨港バスの労働者の皆様には敬意を表すとともに、全面的に支持したいと思います。

・ストライキを馬鹿にしたり、うざいとか迷惑って言ってる奴らは何なの? 条件さえ守ればストライキは労働者の権利なんだよ。ストライキを起こさせたり、ストライキが起こってもある程度は対応出来る仕組みを作ってない企業に文句を言うべき。

・最近落ち込むことも多かったけど、朝バスがストライキ起こしたニュースを見て少し元気になった。ストライキ起こせるあたり日本もまだ捨てたもんじゃないね。労働環境に関する暗いニュース多いから尚更。

・ストライキしてるバス会社があるのか。労働者がものを言える社会は健全だと思う。

・ストライキ権が認められない世の中になったら、ブラック企業がやりたい放題になるよ。ストライキって、世の中に多大なる影響が出るからこそ、やる意味が出るんじゃないのかね。何の影響もないストライキやったとこで、意味ない気がするんだけど。

・この問題を放置しておくと、大きな事故が増える気がする。既に、東急バスで運転士が運転中に眠くなって電柱に激突なんて事故も起きたし…

・バスの運転士は高い運転技術と責任感そして緊張を強いられる。そういう職種の人が安月給で長労働時間っていうのはおかしな話。

・命を預けるわけだから、運転手さんにはベストな状態で働いてもらいたい。
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相次ぐ公共交通の事故とブラック企業の蔓延で、今、明らかに潮目は変わった。ストを支持する多くの声を聞くと、川崎鶴見臨港バス労働者でなくとも元気が出てくる。これらの声が、ストを打ち抜いた労働者に届くよう願っている。

今回、ストライキが市民に支持された理由としては、安全問題を基軸に据えたことが大きいと思う。通勤ラッシュへの影響が最も少ない日曜日をスト決行日に選んだことも、敵に回す市民・利用者を最小限にとどめたいという執行部の判断によるものだろう。こうした柔軟な戦術も、市民の支持を得るために重要なことだと思う。

安全問題研究会は、先のコメントに見られるように、バスの安全問題にも重大な関心を持っている。国交省は、ツアーバス事故で命と将来を奪われた犠牲者たちに謝罪もしないまま、バス事業の規制強化に舵を切ったが、これは2000年の道路運送法改正による規制緩和を事実上、誤りと認めるに等しい。引き続き、当研究会は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の改正など、実効ある法制度の整備を求めて行動を続けていきたいと考えている。

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<安全問題研究会コメント>法令違反高速バスへの罰則強化する改正道路運送法成立~実効ある規制と監査体制の充実求める~

2016-12-05 22:53:14 | 鉄道・公共交通/安全問題
1.法令違反を犯した悪質な高速バス会社に対する罰則強化を盛り込んだ道路運送法改正案が、12月2日、参院本会議において全会一致で可決、成立した。この改正法では、国が行った改善命令に違反した場合にバス会社に課せられる罰金を、これまでの100万円から1億円に引き上げたほか、バス会社の経営者に対し、初めて懲役刑も新設。また、これまで無期限であったバス事業の免許を5年ごとの更新制とし、定期的に悪質業者を排除できる体制を整備した。安全問題研究会は、今回の法改正を高速バス事業の安全強化への第1歩として歓迎する。

2.今回のバス制度見直しは、今年1月、長野県で起きたスキーバス事故を踏まえたもので、遺族から厳罰化を求める声が高まったことを受けたものである。従来、国交省は「支払能力の低い中小業者への配慮」として罰金を100万円としてきたが、相次ぐバス事故の原因となった2000年の道路運送法「改正」(バス車両を5台所有していれば誰でもバス事業に参入できる)に合わせた実効性を欠くものであり、また鉄道や航空機における安全配慮義務違反の罰金1億円と比べてもあまりに低額であった。

3.人命を預かる公共交通の分野から法令違反を繰り返す悪質業者を排除するためには、一度の違反行為で会社が倒産するほどの厳しい罰則でなければならない。今回の罰金上限の引き上げは、悪質バス会社の大半を占める中小業者にとっては厳しいリスクを伴うものになろう。同時に、法令を守っていては運行ができないほどの無理な旅行計画を押しつけてくる旅行業者に対し、バス会社が罰則を理由に拒否しやすくなることが期待される。さらに、中小業者の淘汰が進んでバス会社の数が減れば、旅行業界に対するバス業界の発言力が増すことにつながる。

4.国土交通省に設置された「バス事業のあり方研究会」の報告を受け、2013年、国は「新高速バス制度」に移行。(1)ツアーバスにも道路運送法を適用し、旅行業者が責任主体となって貸切バス事業者に運行を委託するツアーバスの業態を廃止、(2)自社でのバス車両保有、バス停の設置、運行の事前届出を義務づけ、(3)ワンマン運転について上限規制を導入――などの対策を講じたにもかかわらず、2014年の北陸道バス事故と今回のスキーバス事故が発生している。あずみ野観光バス事故(2007年2月、27人死傷)、関越道バス事故(2012年4月、7人死亡)が発生した2013年の規制強化直前の5年間と比べても、死亡事故の発生ペースに変化はほとんど見られない。

5.原因として、国による規制強化の実効性が担保されていないことを指摘しなければならない。国交省には、全国に約12万社もあるバス・タクシー・トラック業者の監査官をわずか330人しか置いていない。今回の法改正では、バス会社を巡回指導する民間機関を設立するとしているが、国交省の監査官を増員しないまま、民間機関への「業務丸投げ」で実効性あるバス事業の監督ができるわけがない。当研究会は、引き続き、国に対し、国交省監査官の増員など抜本的な安全対策を強く求めてゆく。

6.また、相次ぐバス事故の背景に、旅行業者による無理な運行計画の押しつけがあるにもかかわらず、旅行業者に対する規制措置が盛り込まれなかったことに対して、当研究会は強い不満を表明する。事故原因を作った旅行業者にも、一定期間、業務停止や旅行業免許取り消しを行えるような強い罰則を設けなければ、せっかくの規制強化も中途半端なものに終わりかねない。

7.悲劇的なバス事故が相次ぐ中で、今回の法改正を後押ししたのは、抜本的な対策を求める事故遺族やこれを支援する市民の声と闘いの力である。当研究会は、「闘いなくして安全なし」との教訓を改めて心に刻み、公共交通の安全向上のため、今後もあらゆる努力を続ける。

 2016年12月5日
 安全問題研究会

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【管理人よりお知らせ】組織罰を実現する会総会・公開シンポ「組織罰を実現するために」にご参加ください

2016-04-21 21:17:32 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

来る4月23日(土)、兵庫県伊丹市内で「組織罰を実現する会」主催の公開シンポ「組織罰を実現するために」が開催されます。同時に、この集会で「組織罰を実現する会」が正式に発足します。

この会は、JR福知山線脱線事故遺族らが、企業犯罪の際、法人に罰金刑を科することのできる「組織罰」を法制度として実現するために、広く国民運動を起こそうとの趣旨で設立するものです。福知山線脱線事故をめぐる歴代社長の裁判などを通じて、企業役員を「個人罰」で裁くことしかできない現行刑法の限界が、広く指摘されるようになってきました。

その後、福知山線脱線事故の遺族たちは、組織罰を実現するため、2年前から勉強会などを続けてきました。その成果を踏まえ、いよいよ組織罰法制の整備に向けた運動が、この会を通じて正式に始まることになります。

公開シンポ「組織罰を実現するために」は、パネリストに柳田邦男さん(作家)、郷原信郎さん(元検事)をお迎えし、組織罰法制の必要性と、その実現のための方策を議論していただきます。柳田さんは、企業が引き起こす事故などの問題に詳しく、JR福知山線脱線事故に関しても積極的な提言を続けてきました。また、郷原さんは、企業法務、コンプライアンス分野に詳しく、また元検事でもあることから刑事司法分野にも明るい方です。

集会は、以下の日時、場所で開催されます。詳しくは、チラシ(サムネイル写真:クリックで拡大)もご覧ください。

日時:2016年4月23日(土)14:00~16:30(開場13:30)
場所:伊丹スワンホール地図

入場無料・予約は不要です。なお、「組織罰を実現する会」については、併せて、以下のニュース記事をご覧ください。

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<JR福知山線脱線>「組織罰」制定へ署名活動 遺族ら表明(2016.4.13 毎日)

 JR福知山線脱線事故の遺族らが13日、大阪市内で記者会見し、重大事故を起こした企業や法人の刑事責任を問う「組織罰」の制定に向け、署名活動や国会への働きかけなどを始めることを明らかにした。今月23日に「組織罰を実現する会」を発足させる予定で、代表に就く大森重美さん(67)は「多くの人の命が奪われた事故で、組織の誰も責任を問われない事態はおかしい。組織罰の必要性を訴えたい」と話した。

 遺族らは2014年に「組織罰を考える勉強会」を設立。専門家の意見を聞くなどして約2年議論し、企業などが起こした事故で職員らに業務上過失致死罪が成立する場合、法人自体に罰金を科す両罰規定を取り入れた特別法の制定案をまとめた。対象を死亡事故に限った特別法とし、処罰対象の拡大を抑えた。安全対策が十分だったと立証できた場合は免責されるようにし、安全対策の進展や真相解明に役立てる。

 23日には勉強会を衣替えして「組織罰を実現する会」を発足させ、兵庫県伊丹市のスワンホールで午後2時から組織罰の実現を考えるシンポジウムを開く。他の事故遺族との連携やホームページでの情報発信も進める。

 脱線事故では業務上過失致死傷罪で起訴されたJR西日本元社長は無罪が確定。同罪で強制起訴された歴代3社長は1審で無罪、検察官役の指定弁護士側が控訴したが棄却され上告中。【田辺佑介】
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【管理人よりお知らせ】ノーモア尼崎事故! 生命と安全を守る4.17集会にご参加ください!

2016-04-15 22:06:55 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

直前のご案内になってしまいましたが、あさって4月17日(日)、尼崎市で「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.17集会」が開催されます。尼崎事故以降、毎年この時期に開催されている集会です。昨年は統一地方選のため5月の開催となりましたが、今年は再び以前の開催時期に戻っています。

今年の集会では、「公共鉄道を守る労働組合の役割~JR関連企業での組織拡大の経験」と題して、国労東日本前執行役員の青柳義則さんが講演します。長野でのバス事故など、相次ぐ公共交通の安全崩壊を踏まえ、職場段階から利用者の命を守るため、物言う労働組合の拡大が必要との視点からお話しします。

なお、当ブログ管理人が、JR北海道の安全問題、ローカル線廃止問題について、短い報告を行うかもしれません(実現するかどうかは不明です)。詳しい開催内容は、チラシ(サムネイル:クリックで拡大)をご覧ください。

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長野バス事故の原因とその背景 このままでは事故はまた繰り返される

2016-01-17 13:03:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
長野県・碓氷バイパスで起きたスキーツアーバス事故は、若者を中心に14人(乗客12名・運転手2名)が死亡する惨事となった。自然災害などバス事業者の責任でない事故を除けば、1985年1月の犀川スキーバス事故(死者25人)以来の悲劇だ。未来ある若者の犠牲が日本社会に与えた損失は計り知れないほど大きい。

ツアーを企画した旅行会社「キースツアー」と運行を請け負ったバス会社「イーエスピー」社のずさんな管理体制については、メディアで報道されているとおりだろう。キースツアーに関していえば、事故前から利用者のインターネット上での評価もさんざんだ。バス以外にも、同社が手配したホテルについて「部屋にバスタオルや歯ブラシすらない」「ホテルというより合宿所」「怒りを通り越し、もはやネタ(笑わせるための過剰な演出を意味する若者用語)としか思えない」などという手厳しい評価が並ぶ。「安かろう悪かろう」の典型例と言ってよい。

運転手に対する採用時健康診断の未実施(労働安全衛生法違反)、運行前に「無事到着」の書類を作成し押印(有印私文書偽造)、運行前点呼の未実施(道路運送法違反)など唖然とする実態があり、両社が責任を免れないのは当然だ。とりわけ、「無事到着」の書類を事前に作成していたことは、行政への虚偽報告に当たることから、捜査、調査の経過によっては、今後、送検~起訴などの事態も予想される。

事前の運行計画では高速道路を通行することになっているにもかかわらず、真冬の夜間に急峻な山道を含む一般道(国道18号碓氷バイパス)に承諾なくルートを変更したのはなぜなのか、解明すべき謎も多く残る。

一方で、この手の事故が起きるたびに思うことがある。悪質業者の責任を問うだけでよいのか、監督行政の責任はないのかということだ。安全問題研究会として指摘しておかなければならないのは、7人の死者を出した関越道バス事故(2012年)の後、国土交通省が遅まきながらも「バス事業のあり方検討会」を設け、高速ツアーバスの業態を廃止。団体ツアーバスにも道路運送法を適用、バス停を利用させるとともに、運転手ひとりあたりの連続運行距離を従来の670キロメートルから400キロメートル(夜間)に制限する規制強化を行ったにもかかわらず、再び大事故を招いたという点だ。

『(バス事業のあり方検討会の報告を受けて発足した新たなバス事業制度は)規制強化にはなりません。なぜかというと、ツアーバスが無くなってすべてがこれに移るならマシかなとは思いますが、要するに傭車を認めているわけですから、……事故が発生した場合、傭車では誰が一体責任を取るのか』『ツアーバスはバス会社がお客さんと契約することはほとんどなくて、旅行業者がする。そして「新高速バス」はその旅行会社に何台か(バス車両を)保有させて運行させる。路線行為を行わせた上で、その時の需給によって他社のバスを使えるようにする。……すると今のツアーバスはそのまま委託すれば走れるわけですから、基本的なものは変わっていません』『高速ツアーバスが始まった当初はディズニーランドのチケットをセットで販売していましたが、これと同じように観光チケットや宿泊などをセットにすれば従前のツアー旅行になりますので、「新高速バス」に移行しなくても違法にはなりません』(『高速ツアーバス乗務員は語る 規制緩和と過酷な労働実態 家族は乗せたくない』(2012年、自交総連、日本機関紙出版センター)より抜粋)

こんな重大証言をするのは、自交総連大阪地連書記次長の松下末宏さんだ。格安だけが売り物だったツアーバス会社の4割を廃業に追い込み、鳴り物入りで発足したように見える「新高速バス制度」も抜け道だらけ、穴だらけで規制強化の体を成していないというのだ。結局のところ、「旅行業者は格安でツアーを募集、バス会社に対する強い発言力を利用して無理な運行条件を押しつけ」「旅行者はバス運行現場の実態を知ることもなく、乗客に対する責任も負えない」というツアーバスの最も本質的な部分に国交省は何ら手をつけず、事実上放置したのだ。

しかも、監査や行政処分も中途半端で大甘だった。国交省は、イーエスピー社が運転手の採用時健康診断を怠っていたとの理由で、事故2日前に同社に行政処分を下したが、その内容は同社が7台保有するバス車両のうち1台だけを使用停止にするというものだった。全車使用停止の処分にしていれば、結果は違ったものになった可能性がある(松下さんが指摘する「傭車」という抜け道がある限り、仮に全車使用停止の行政処分が下ったとしても、キースツアー社は他社に運行委託すればよいだけであり、行政処分に実質的意味もない。だが、外国人観光客の急増による最近のバス需要の逼迫により、全車使用停止の処分が下っていれば、急な傭車の手配ができず、事故につながる危険なツアーを中止に追い込むことができた可能性はある)。このように考えると、目先だけの制度変更でお茶を濁しながら、危険な格安ツアーバスの本質的部分には何ら手をつけず、悪質業者に対しても、ないよりマシとさえ言えないような大甘の行政処分で済ませていた国土交通省の責任を、当研究会としてはやはり問わざるを得ないと考える。

バス事業のあり方検討会を受けて新高速バス制度が発足した直後の2013年8月4日付で、安全問題研究会はコメントを発表。新高速バス制度への移行を基本的には歓迎しながらも、このように指摘した。

『過当競争の中、バス事業者は間断のないコスト削減圧力にさらされている。この機会に、当研究会は国交省に対し、バス事業者に対する不断の検査、チェックの徹底を期するよう改めて求める。もしこの検査、チェックが有効に実施されなければ、今回のせっかくの規制強化も画餅に終わるであろう』

すでに報道で指摘されているように、規制強化後もバス業界は運転手の人手不足、過当競争に苦しんでいる。今回の事故は、2年前、当研究会が新高速バス制度への不安を感じて発した警告が最悪の形で現実になったことを示した。事故再発の危険性を感じながら止められなかったことは、当研究会としても痛恨の極みである。

「バス事業のあり方検討会」の議論には、バスファン向けの趣味雑誌「バスラマ・インターナショナル」編集長の和田由貴夫さんも有識者委員のひとりとして参加した。報告書がとりまとめられるに当たり、和田さんは「バス事業のあり方検討会」事務局に宛てて意見書を提出している。「今こそ、バスのあり方の検討を」と題された意見書では、次のような傾聴に値する提言が行われている。単なる趣味雑誌編集長としての域を超えた、このような大局的な考え方こそ、今後のバス事業にとって最も必要なことだと当研究会は考える。

『公共性が高いバス事業に関しては規制緩和という前提条件の正否も議論の俎上に上げるべきではないだろうか。……バスの安全は制度が保障するものではなく、最終的にはドライバーに委ねられているという事実は、安全教育に厳しい事業者や現場には共通した認識である。本委員会にも労組の代表が参加し有益なご意見を述べられたが、近年は大手事業者が非採算部門を子会社に委託する例が多く、そこで働くドライバーには組合がない例が多い。その人々は津波で防潮堤が破壊された沿岸部で仕事をしているようなものである。……利用者にとってのバスは、よりよい生活の道具になることが求められている。それには「健康で持続可能=ロハス」が前提だが、日本のバス業界は、残念ながら現場のドライバーを含めて歯を食いしばって懸命に維持している実情にある。「年始も祝日も勤務があり、休暇が取りにくい。拘束時間が長いが賃金は安い」という産業が「健康で持続可能」といえるのだろうか』

国土交通省とバス業界は、今こそ、この和田さんの意見に真剣に耳を傾けるべきだ。そうでないと、悲劇はまた繰り返されると、改めて当研究会は警告する。

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笹子トンネル天井板崩落事故、中日本高速に5億円賠償命令

2015-12-22 23:54:12 | 鉄道・公共交通/安全問題
笹子トンネル事故4億円賠償命令=中日本高速の過失認める―横浜地裁(時事)

笹子トンネル崩落訴訟判決 遺族「組織罰に道」(神戸)

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 笹子トンネル天井板崩落事故で松本玲さん=当時(28)、兵庫県芦屋市出身=を亡くした父邦夫さん(64)は「分厚い判決文を娘の遺影に供えたい」と中日本高速道路側の過失を認めた横浜地裁判決を評価。だが、家族を失った痛みは癒えず、母和代さん(64)は「娘の声は聞かれない。メールも来ない。遺族は死ぬまで遺族」と涙ぐんだ。(1面参照)

 判決後、原告ら遺族5人が横浜市内で会見。邦夫さんは「判決にはびっくりした。同じような事故の裁判で原告に有利な判決は少ない。期待はあまりしていなかった」と打ち明けた。

 夫妻は結審まで15回に上った口頭弁論にほぼ出席。自宅の芦屋市から横浜地裁に通い続けた。これまでの裁判で会社側は「工作物責任は認めるが、検査しても事故は予見できなかった」と一貫して過失を否定してきた。

 娘のペンダントを着けて地裁に赴いた和代さんは「私たち一般市民と、安全管理のプロであるはずの会社の感覚に大きな違いがあることを知り、痛めつけられた裁判だった。でも、きょうの判決には感謝の気持ちでいっぱい」と語った。

 事故後、夫妻は日本の刑法では企業の刑事責任を問えないことを知り、尼崎JR脱線事故の遺族らと組織罰を考える勉強会にも参加してきた。邦夫さんは「日本での組織罰に道を開いた歴史的な判決」と力を込めた。(藤森恵一郎)
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2012年12月の中央自動車道・笹子トンネル天井板崩落事故をめぐって、亡くなった9人の遺族が道路管理に当たっていた中日本高速道路(株)(NEXCO中日本)などに対して損害賠償を求めていた民事訴訟で、横浜地裁が今日、NEXCO中日本とその道路保守子会社の2社に対し、4億円の賠償を命ずる判決を出した。この種の事故としては異例の高額賠償であり、当ブログと安全問題研究会はある意味で驚きをもって受け止めている。

旧日本道路公団から民営化された他の高速道路会社(NEXCO東日本、西日本)では行われていたトンネル天井や壁面の打音検査などの義務を果たさず、目視のみの検査態勢で老朽化したトンネルを放置してきたNEXCO中日本。責任認定のハードルは、常識的に考えればかなり低いと考えられたものの、最近は企業側が「予見不可能」と主張すれば何でも責任が否定されるのが既定路線になりつつあり、当ブログは判決の行方を危惧していた。不通となっていたトンネルの通行再開を控えた2013年2月には、インターネットメディアの記者として事故現場の取材も行っている。

死者ひとりあたり約4,900万円という今回の賠償額は、1991年の信楽高原鉄道事故(死者42人)において裁判で確定した賠償額の約5億円(死者ひとりあたり換算で約1,200万円。参考記事)と比較しても4倍に相当する高額賠償となった。

こうした背景には、犠牲者が若者だったこともあり、逸失利益(その人が寿命まで生きていた場合にいくらの収入を得られたか)相当分が大きく認定されたという可能性はある。しかし一方でこのところ日本企業の責任体制やガバナンス(企業統治)のあり方に対する批判がかつてなく高まっていることも併せて指摘しておく必要がある。この手の事故では例のない高額賠償が認められた背景に、このような日本企業の「総無責任体制」に一石を投じたいという司法の問題意識が反映した結果と評価できるだろう。

引用した神戸新聞の記事は、JR福知山線脱線事故が起きた兵庫県の地元紙らしく組織罰に言及している。福知山線事故の遺族と交流し、組織罰の学習を続けてきた遺族は今回の判決を「日本での組織罰に道を開いた歴史的な判決」としている。当ブログと安全問題研究会は、早くから英国の法人故殺法の例にならい、日本でも同様の組織に対する刑事罰制度を整備するよう呼びかけてきた。だが、刑事裁判では過失認定のハードルが高すぎ、裁判は企業優位になりやすい。また、経済界の代理人である自民党が圧倒的多数を占める現在の国会の議席構成では、組織罰法制の整備の見通しは立たない。当面は、刑事訴訟に比べれば過失認定のハードルの低い民事訴訟の場で、米国に見られるような「懲罰的高額賠償」の判例・裁判例を積み上げながら、過失による事故を引き起こした大企業を包囲していく闘いが重要だ。

このように考えるなら、この種の事故では前例のない高額賠償を勝ち取った今回の判決は、日本における企業への「懲罰的賠償」を実現する最初の入口に立ったと積極的に評価できるものだ。NEXCO中日本は控訴することなく、今回の判決に従って速やかな賠償を行うべきである。

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JR西、人為ミス「処分せず」遺族には賛否両論

2015-12-06 23:24:07 | 鉄道・公共交通/安全問題
<JR西日本>人為的なミス 起きても「処分せず」(毎日)

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 ◇脱線事故受けて 報告促進で再発防止が狙い

 JR西日本は運転士らの人為的なミス(ヒューマンエラー)を、事故が起きた場合も含めて懲戒処分の対象から外す方針を固めた。ミスを確実に報告させ、再発防止につなげるのが狙い。2005年4月に兵庫県尼崎市で発生したJR福知山線脱線事故を受けた措置で、来春の導入を目指している。飲酒や故意など、悪質性が高い場合は従来通り処分する方針。同社によると、鉄道業界で初の試みだという。

 福知山線事故を巡っては、運転士に対する懲罰的な再教育「日勤教育」が背景にあったと指摘されている。JR西は事故後、停車駅を通過するオーバーランなどの比較的軽微なミスについては懲戒処分の対象から外した。人的・物的な被害があった場合や事故の危険性があった場合は処分の対象としていた。

 こうした方針に対し「依然として原因究明より個人の責任を追及する風潮がある」という批判が根強かった。事故の遺族とJR西、有識者でつくる「安全フォローアップ会議」は昨年4月の報告書で「『ヒューマンエラー非懲戒』の方針を決定し、社員に周知・徹底すること」と提言していた。

 非懲戒の制度はミスの責任を現場の社員に押しつけず、会社組織の問題として捉える考え方に基づく。航空業界では既に導入されている。同社のある幹部は「ヒューマンエラーは一定の確率で必ず起こる。そこを叱っても問題は解決しない。正直に状況を話してもらい、その背後にある問題に対処することが大切だ」と話した。人命が失われた事故で処分しないことが社会的に許容されるのかという疑問もあり、JR西は線引きの基準作りを進めている。

 福知山線事故で長女容子さん(当時21歳)を亡くした兵庫県三田市の奥村恒夫さん(68)は「ヒューマンエラーは誰にでも起こり得る。当然の措置だと思う。気の緩みにつながらないよう、JR西は人の命を運んでいるという自覚をしっかり持ってほしい」と語った。【戸上文恵、田中謙吉、生野由佳】
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尼崎事故から今年で10年。節目の年も終わりを迎えようという頃になって、JR西日本がヒューマンエラー(故意以外)を社内処分の対象にしないという新方針を打ち出した。記事にあるとおり、安全フォローアップ会議の提言を受けての措置だ。当ブログは、ようやくここまで来たかという思いと、この程度のことを決めるのになぜこれほどまでに時間がかかるのかという思いが交錯している。懲罰的「日勤教育」が事故の背景であることは当時から言われていた。また、処分や責任追及が前面に出すぎることは、かえってミスが報告されず隠されることにつながるとして、ヒューマンエラーを免責にすべきだということも識者の間では事故直後から早々と主張されていたことである。

ただ、尼崎事故の刑事裁判(特に山崎社長裁判)が進行していく中で、当初は大半の遺族が、事故の原因究明と再発防止がきちんと行われるなら、刑事責任の追及はしなくてもよいという立場を取っていた。しかし、JR西日本の不誠実な姿勢、また事故調報告書の漏えい問題が起きるなどの事態が重なる中で、一部の遺族がJR西日本に対する不満を募らせた結果、「原因究明と再発防止の願いが叶わないなら、せめて刑事責任の追及を」と次第に立場を変えていったのがこの10年の歴史だったのである。

この事故を発生以来10年間、ずっと見続け、一部の遺族とは交流もしてきた当ブログとしては「原因究明と再発防止がきちんと行われるなら、刑事責任の追及はしなくてもよい」という遺族の気持ち、「原因究明と再発防止の願いが叶わないなら、せめて刑事責任の追及を」に変わっていった遺族の気持ち、どちらもよく理解できる。原因究明・再発防止を重視した場合、加害者が何らの社会的制裁も受けず安穏とした生活を送り続けることは、被害者からすれば心情的に受け入れ難い。だからといって責任追及を重視し過ぎると、加害者が制裁を受け被害者の心は晴れるかもしれないが、責任追及を恐れて原因究明・再発防止に必要な情報が報告されないようになり、次の被害者を生んでしまう可能性がある。

このように、原因究明・再発防止策の構築と責任追及は、両方追求できればそれに越したことはないが、ある意味ではトレードオフの関係にあり実際には難しい。どちらを重視すべきかについては遺族・被害者の間にも意見の違いがあり、JR西日本に対するこの10年間の評価(企業体質が変わったか変わっていないか)とも絡んで大きく遺族・被害者を隔てる原因になっている(参考記事:「JR人為ミス非懲戒 「運転士だけの責任では」「命預かる責任負うべき」事故遺族の賛否分かれる」12/4付「産経」)。ここ数年は、前者を重視する人と後者を重視する人との間で次第に共同行動が難しくなってきており、その意味からも10年という時の流れを感じる。

現時点で、当ブログのような部外者が今後を予測することは難しく、また遺族を差し置いてそのような予測は本来すべきでないのかもしれない。しかし、あえて今後を予測すると、時の経過とともに未収集の証拠が散逸するなどして加害者の責任追及は次第に難しくなるから、代わって遺族・被害者の活動は再発防止策の構築(原因がわからなければ再発防止策は構築できないから、これには原因究明が当然含まれる)と伝承活動に比重が移っていくだろう。公共交通の事故という意味で尼崎事故と共通点を持ち、20年先を行っている日航機墜落事故が今、まさにそのような状況になっているからである。

また、責任追及は「その事故限り」であるのに対し、原因究明・再発防止策の構築は将来の事故を予防することによって、それをはるかに超える人々に恩恵を及ぼし、社会的損失の発生をも防ぐことができる。事故発生から時間が経てば経つほど原因究明・再発防止策の構築のほうが責任追及よりも社会的価値が大きくなるといえる。ただ、日本の主要大企業がそうであるように、原因究明・再発防止策の構築をしようにもガバナンスが不在でどうにもならない場合がある。そのような場合のための「ベストではないとしてもベターな選択肢」として、責任追及というオプションも残しておくべきであろう。

尼崎事故から10年、日航機墜落事故から30年の節目の年であった2015年も、残すところ1ヶ月足らずとなった。今年を締めくくるにふさわしいニュースだと思い、久しぶりにこのブログで取り上げた。来年も、尼崎事故をめぐる3社長の裁判は最高裁に舞台を移して継続する。当ブログは、最後の瞬間までこの裁判を見届けるつもりである。

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【安全問題研究会コメント】日航機墜落事故から30年~空の安全をより高め、未来に引き継ぐために~

2015-08-12 20:08:34 | 鉄道・公共交通/安全問題
1.単独機の死亡事故としては世界の航空史上最悪となった1985年8月12日の日本航空123便旅客機墜落事故から30年の節目の日を迎えた。安全問題研究会は、亡くなられた520名の乗客・乗務員に改めて深く哀悼の意を表する。

2.御巣鷹の悲劇から30年の間に、日本と世界の空を取り巻く情勢は大きく変わった。日本航空は、事故当時の半官半民の国策会社、ナショナルフラッグから完全民営化された。JAS(日本エアシステム)との統合に見られる無理な拡大戦略を採り続け、2010年には経営破たんした。この過程で、会社に批判的な労働者を中心に165名の不当解雇が起きた。

3.スカイマークなど「第3極」として誕生した新規航空会社は、日本の空の寡占状態に風穴を開けたが、公共交通での競争政策の激化は多くのトラブルも生み出した。スカイマークは経営破たんし、全日空との経営統合により再建を目指すことになった。日本の空は、一部のLCC(格安航空会社)を除き、かつての2強による寡占時代に還りつつあるかに見える。

4.安全問題に目を転じると、この間、ボンバルディア製航空機や、B787型機による相次ぐ重大トラブル(発煙など)が発生した。これらの機体はいずれも、経費削減など経済優先思想の下に開発されたという特徴を持っており、こうした経済優先の航空政策や技術開発が安全に重大な影響を与える例が近年特に目立っている。

5.一方、この日航機墜落事故を最後に、30年間、日本国内で営業飛行における航空機の墜落事故がなく、また乗客にひとりの死亡者も出さずこの日を迎えられたことは、当研究会にとって大きな喜びである。これは、御巣鷹の教訓からしっかりと学び、各現場で奮闘してきた航空労働者が達成した偉業であり、当研究会は、日本国内におけるすべての航空労働者に最大級の謝意を表明する。

6.当研究会は、30年間、片時もこの事故のことが頭から離れることがなかった。80年代後半から90年代は、主として運輸省航空機事故調査委員会(当時)が発表した報告書の分析や文献調査を中心にこの事故の真相究明に取り組んできた。2000年代に入り、ボイスレコーダーの音声が流出して以降は、乗務員の会話の聴き取りや書き下ろし、また事故現場である「慰霊の園」への訪問などを行ってきた。30年もの長きにわたってこのような活動を続ける原動力となったのは、人生を最も悲劇的な形で断ち切られ、理不尽な最期を迎えなければならなかった犠牲者に少しでも報いたいとの思いであり、また事故調が発表した報告書への疑問と怒りであった。

7.節目の今年も、当研究会は現場となった御巣鷹の尾根への慰霊登山を行った。520人の悲しみをたたえた山は、30年の歳月を経てもなお鎮まることなく、慰霊登山を行うすべての人に安全とは何か、私たち全員がこれからの時代をどのように生きるべきかを問いかけている。この問いかけに答えることこそ、犠牲者と同時代を生き、悲劇を次の世代に継承する使命を背負った私たちの責務である。

8.最近では、鉄道や高速バスなど公共交通事故の遺族や関係者のみならず、エレベータ事故の遺族や東日本大震災の関係者などが、険しい登山道を相次いで上り、御巣鷹の尾根を目指している。当研究会が慰霊登山を行った当日には日本航空の客室乗務員の姿もあった。被害者・加害者の立場を超え、社会の安全のために行動する人々をひとつに結びつける存在として、御巣鷹の尾根は今、不可欠の場所となっている。

9.私たちの果たすべき課題は多く残されている。この事故の風化、幕引きを許さず、引き続きその真相究明と情報公開を政府に求めていくことが必要である。同時に、高齢化した遺族に寄り添い、遺族との共同の中から事故を次の世代に向け継承するための活動を強化することである。市民と航空労働者の奮闘で築いた「日本国内での30年間墜落ゼロ、乗客死者ゼロ」を今後も永遠の目標として続けていくことは、何にも増して重要な課題である。

10.当研究会は、こうした課題を達成するため、今後も全力を尽くす決意である。

 2015年8月12日
 安全問題研究会

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サムネイル写真=当ブログ管理人の自宅の本棚

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