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高浜原発4号機「緊急停止」 関電の企業体質を反映 次に起きるのは大事故だ

2016-03-03 21:39:27 | 原発問題/一般
4号機、原子炉が緊急停止 送電操作中、主変圧器故障の警報(毎日)

2月29日、ようやく東電の旧経営陣らが、検察審査会の議決に基づき起訴された喜びに浸っていたのも束の間、高浜原発4号機が緊急停止という衝撃的なニュースが飛び込んできた。

概要は報道されているとおりであり、電源系統の異常のため高浜4号機で警報が作動し、原子炉が緊急停止したというものだ。これがどれだけ重大な事故かは、当ブログの「原発問題」カテゴリを常時、ウォッチしている人には改めて説明するまでもないだろう。福島第1原発の大事故も「全電源喪失」から始まったのだから。

そもそも、高浜原発3、4号機に関しては、福井地裁による再稼働禁止の仮処分命令が2015年4月に出たことにより、法的に稼働不可能な状態が2015年12月まで続いた。福井地裁は、この再稼働禁止の仮処分命令を出した裁判長を名古屋家裁に「転勤」させ、別の裁判長にすげ替えてまで12月、この仮処分を取り消す別の命令を出させたが、その仮処分取り消し開けの再稼働が、この無様な結果だ。

当ブログは、関西電力が裁判所に仮処分命令の取り消しをさせてまで再稼働を強行した背景に、関電が抱えるいくつかの「事情」があることを指摘しておきたいと思う。

まずは、「電事連会長企業」としての関電の誤ったプライド意識だ。

電力会社の親睦団体である電気事業連合会の会長は、現在、八木誠・関西電力社長が務めている(参考)。電事連会長は、福島第1原発事故以前は東京電力のポストだったが、事故後の東電が実質国有化されたのを受け、関電に変更された経緯がある(実質国有化された東電が電事連会長では、電力業界にとって都合の悪い情報が政府に筒抜けになると心配、東電が電事連会長から外されたといわれる)。

3.11以前の東電も、電事連会長企業として「自分たちが電力業界をリードしている」というつまらないプライド意識があったといわれる。東電に代わって電事連会長企業となった関電が、原発再稼働で他の電力会社に後れを取るようでは格好がつかないという、妙なプライド意識が働いたことは想像に難くない。このような妙なプライド意識は「原子力ムラ」以外にとっては迷惑以外の何物でもない。

次に、プルサーマル方式である3号機を先に再稼働した背景事情として、指摘しておかなければならないのはプルトニウム問題だ。

反原発派はもちろんのこと、一般市民の中にも「関電はなぜ、他の原子炉を差し置いて、危険といわれているプルサーマルから先に再稼働させるのか」という疑問を抱いている人は多いと思う。だが、当ブログにいわせれば、関電は高浜3号機がプルサーマル「だからこそ」危険と分かっていながら先に再稼働させざるを得なかったのである。

現在、日本の原子炉級プルトニウム保有量は47トンに達する。2012年現在では44.9トンだ(出典)。日本を上回っているのはロシア、イギリス、フランスのみ。これらはいずれも核保有国であり、非核保有国でこれほどのプルトニウムをため込んでいるのは日本だけだ。これに関しては、2014年6月、中国外交部(外務省)がプルトニウム保有量の一部報告漏れを起こした日本に対し、説明を要求するという出来事があった(参考記事―中国外交部、日本政府にプルトニウム保有量報告漏れの説明求める―中国メディア)。大半の日本人は、「核保有国の中国が何を言っているのか」という反応しか示さなかったようだが、その中国でさえ原子炉級プルトニウム保有量は0.01トン(10キログラム)。核兵器用の高濃縮ウランを含めても16トンしか保有していない。中国が日本を「隠れた核保有国」と見て、ウソ・ごまかしばかり繰り返す日本に説明を要求してきたのは当然といえる(このあたりの事情は、「隠して核武装する日本」(影書房)に詳しい)。

日本政府・原発推進派としては、ため込んだプルトニウムのせいで「痛くもない腹」を探られないようにするためにも、このプルトニウム「消化」に道筋をつけたいところだろう。しかし、この点で最も期待をかけていた高速増殖炉「もんじゅ」はもう20年以上まったく動かず、1ワットの発電もしていない。プルトニウムを「消化」する日本にとって唯一の方法、それがプルサーマルなのだ(参考記事―緊急停止の高浜原発4号機 再稼働の3号機は高リスクのプルサーマル発電(アジアプレス))。

ウラン燃料にプルトニウムを混ぜた「MOX」燃料を使用するプルサーマルについては、反原発派から「灯油を入れて燃やすことしか想定せずに作っている石油ストーブにガソリンを入れて燃やすようなもの」だとして、その危険性が指摘されてきた。福島第1原発3号機もプルサーマル方式だが、そうでなければ事故の規模はもっと小さかったかもしれない。3号機でのプルサーマル受け入れを思慮もなく決めた佐藤雄平前福島県知事の責任はもっと大々的に追及されるべきだろう。

ところで、現在、再稼働が始まった原発についていえば、川内も高浜も重要免震棟さえ存在していない(参考記事―「免震棟、9原発で未整備 安全対策遅れ浮き彫り」(福井新聞))。福島第1の事故で、辛うじてここが機能し、吉田昌朗所長以下、緊急対策を講じることができたのは不幸中の幸いだった。何度でも繰り返すが、川内にも高浜にも重要免震棟はない。福島第1クラスの過酷事故が起きた場合、緊急対策すら取れず、現地作業員が原子炉を暴走するまま放棄しなければならない事態が訪れるかもしれないのだ。

もうひとつ、福島の教訓という意味で、当ブログが皆さんにお伝えしておかなければならない事実がある。強制起訴された刑事裁判の法廷でも、東電の3人の旧経営陣は事故は「想定外」として無実を主張するだろう。だが、福島第1原発では、運転開始から40年の間に、3回も緊急停止事故が起きていたのである。

想定外ではなかった事故/トラブルを隠し続けた電力会社/これで再稼働なんてありえない(「週刊MDS」2012年7月13日号)

この記事によれば、1981年5月と1992年9月に、福島第1原発では2度も緊急停止事故が起きているが、東電は2度とも事故を過小評価、隠蔽した。事故前年の2010年夏にも、翌年の大事故を「予言」するかのような「全電源喪失」事故を起こしている。佐藤和良前いわき市議(福島原発告訴団副団長、福島原発事故刑事訴訟支援団長)は、何度重大事故を起こしても反省しない東電の姿勢を見て「次はもう事故しかない」と思ったという。

2010年の全電源喪失事故の後、「東京電力とともに脱原発をめざす会」が行った東電との直接交渉の資料は、当ブログ管理人が管理している「しらかわ・市民放射能測定所ベク知る」公式サイトに掲載している。ことの重大さがよく分かる資料なのでご紹介しておきたい。

●あわやメルトダウンの重大事故/福島第一・2号 「外部電源全喪失」

●福島第一・2号「外部電源全喪失事故」が提起した深刻な欠陥~~2010年7月9日東電本社における聞き取りから~~

安倍首相が、新規制基準を「世界一安全」だとたとえ何万回繰り返そうと、どんなに高度な安全対策を施した原子炉が納入されようと、原発を動かすのは人間だ。その人間がこの程度の意識レベルしか持ち得ないのでは、事故は防ぎようがない。それが福島の教訓ではないのか。

事故を起こす原発には、ここに示したように必ず「予兆」がある。想定外などというたわごと、寝言を誰が信じるのか。当ブログはあえて断言しよう――次の原発事故が起きるのは福井だと。

原発などしょせん人智を越えた代物だ。こんなものを安全に扱えるわけがないと認め、今すぐ原発全廃の決断をすべき時である。福島の悲劇の繰り返しはもうたくさんだ。

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