NUMO幹部の不適切発言、首相「話にならない」と謝罪 予算委(朝日)
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石破茂首相は3日、原発の運転で生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選びをめぐって、資源エネルギー庁や原子力発電環境整備機構(NUMO)が説明会で不適切な発言をした問題について、「大変申し訳ない。絶対にあってはならないこと」と述べ、衆院予算委員会で謝罪した。
最終処分場選びを巡っては、東京都内で1月23日にあった説明会で、参加者から「最終処分場を北方領土に建設しては」との意見が出た。これに対し、NUMO幹部が「一石三鳥四鳥」と答えていたことが明らかになっている。
予算委では、立憲民主党の神谷裕議員がこのやりとりを踏まえ、「北方領土の関係の皆さんにとって、本当に看過できない発言だ」と追及。認識を問われた石破首相は「話にならない。発言がいかなる意図であったかわからないが、やはりゆるみとか、おごりとか、思いあがりとか、そういうものがあったと思っている。政府の責任者として深くおわびを申し上げる」と謝罪した。
武藤容治経済産業相は「職員やNUMO幹部の発言については本当にまったく配慮に欠ける軽率な発言であった」と説明した。
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1月23日、都内で開催されたNUMO主催の説明会で、会場参加者が「最終処分場を北方領土に建設しては」と発言したことに対し、経産省幹部が「魅力的な提案」、NUMO幹部も「一石三鳥四鳥」などと返答していたことが報道された。2月3日の衆院予算委では、神谷裕議員(立憲・北海道10区)の批判に対し、石破首相が「お話にならない。(関係者に)緩み、おごりがあった」と陳謝した。
しかし、これを単なる経産省やNUMOの「緩み、おごり」ですませると事態の本質を見誤る。これらの動きは、「国境の島に核のごみを埋めれば、怖がって外国人か近づかなくなり、日本の領土が守られる」などと主張する右翼レイシスト集団による差別排外主義策動の一環と見る必要がある。
日本最東端の南鳥島に核ごみ処分地を作るよう求める主張が、松浦祥次郎・原子力安全推進協会顧問によって、電力業界紙「電気新聞」紙上で行われている(参考:2020年5月7日付け「電気新聞」時評 ウエーブ「南の島に目をむけると」)
市議会が突如、核ごみの最終処分場候補地への応募を求める請願を採択した長崎県対馬市では、2023年秋、比田勝尚喜市長が「採決結果が賛成10:反対8」の僅差であることを理由に受け入れを拒否した。これに対し、翌2024年3月の対馬市長選に「核ごみ受け入れ」を公約として、比田勝市長(自公推薦)の対抗馬として立候補したのが荒巻靖彦なる人物である。結果は惨敗だったが、そもそも関西在住の荒巻がなぜ対馬市長選なのか。
実は、荒巻は「在特会」関西支部長を務め、過去にはヘイトスピーチなどが原因で3度も逮捕歴があるレイシスト犯罪者である。活動仲間には川東大了もいる。川東も、大阪市「ヘイトスピーチ禁止条例」成立後、この条例による「氏名公表第1号」となったレイシストである。
実際問題、こうした国境地帯に核のごみが持ち込まれる可能性はどの程度あるのか。私は、対馬、寿都、神恵内など国境地帯でも人の居住する地域であればあり得ない話でもないが、南鳥島のような地域に持ち込むのはかなり難しいとみている。本州から数千km離れていても、船による輸送であれば技術的に可能であるものの、最近の燃料費高騰などを考えると、輸送費が高くつきすぎて現実的ではないだろう。
実際、上記リンク先の電気新聞記事で、松浦顧問自身「交通運輸の困難」があることを認めている。輸送費を無尽蔵につぎ込めるなら話は別だが、それはいずれ税金か電気料金となって利用者・国民に転嫁される。物価高に苦しむ日本国民がそれを許容するかどうかはわからない。特に日本人の場合、費用対効果が見えない事業にはシビアになる傾向があるので、1ワットの発電もしない核ごみの地層処分事業に巨額の費用を費やすことに関しては、認めない可能性が高い。
放射能ごみの地方への押しつけや、東京・中央の支配層による地方蔑視という観点でこれらの動きを批判することはもちろん重要だが、それだけでは十分とは言えない。ロシアや中国・北朝鮮国境に近い北海道の寿都町や神恵内村、韓国との国境に近い対馬、日本最東端の南鳥島など、国境地帯でばかり核のごみ問題が勃発している背景に、レイシストによる差別排外主義の動きがあることを重要な論点として指摘しておきたいと思う。