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福島県民健康調査検討委員会「甲状腺検査評価部会」の清水一雄部会長が辞表提出

2016-10-21 18:41:00 | 原発問題/一般


福島県民健康調査検討委員会「甲状腺検査評価部会」の清水一雄部会長が辞表提出したことが「北海道新聞」の報道で明らかになった。記事は10月21日付け。北海道新聞で原発を担当している本社報道センター・関口裕士記者によるもので、清水部会長へのインタビューの形を取っている。次回、開かれる予定の甲状腺検査評価部会で清水部会長の辞任が認められる見通しで、今後は委員の形で議論に加わるとしている(部会長を降りるだけで、評価部会の委員を辞めるわけではない)。


清水氏は、このインタビューで「(甲状腺がん患者が174人であることについて)もともと小児の甲状腺がんは100万人に数人。数字上、多発は間違いない」「通常、甲状腺がんは1対7で女性が圧倒的に多いが、チェルノブイリも福島も1対2となっており、男女比がおかしい」と主張。本人は「わからない」を強調しているものの、事実上、被曝が原因と暗に認める証言をしている(チェルノブイリでの甲状腺がんに、通常との比較で男性が多かったことは、放射能の健康被害を訴えている松崎道幸医師も同様の指摘をしている)。

清水氏は、甲状腺検査評価部会で唯一の甲状腺専門家であり、ベラルーシでの住民の診療にも当たってきた。その清水氏が部会長の立場から「逃亡」したことになる。後任の部会長の人選は不明だが、現在の部会員の中から新部会長が「互選」されることになれば、今後は甲状腺の専門家でない者が部会での議論を主導するという、およそ考えられない事態となる。

放射能と甲状腺がんとの因果関係について「考えにくい」と言い張ってきた検討委による非科学的な調査・分析・検討体制がいよいよ崩壊に向かい始めたことを示している。放射能による甲状腺がんの「多発、異常発生」が覆いがたい事実として現れてきたことを反映する動きであり、今後に注目すべきだろう。

一方、「3巡目」となる甲状腺検査に関し、福島県が今後の検査の案内を希望しない県民に「希望しない」の項目を選択できる内容の文書を送付している問題で、「政経東北」2016年10月号は、県民健康調査検討委員会の場で委員の誰も縮小に賛成していないとする重要な内容を伝えた。同誌によれば、9月14日に開催された検討委での各委員の発言内容は次の通り。

・清水一雄委員「当事者とその家族の気持ちに寄り添った対応を心掛けるべき。がんやがんの疑いと診断される人がこれだけ増えてくると、いまは『放射線の影響ではないか』という懸念も考慮に入れながら検証していくべきだろうと思っています。ですから少なくとも10年は縮小せず、いまの体制のまま検査を続けるべきです」

・清水修二委員「この委員会の目的は県民の健康を守ること、被曝の影響を確認すること」

・堀川章仁委員「チェルノブイリでは事故後5年経ってから甲状腺がんが増えていることを踏まえると、今後も継続して検査すべき」

・高村昇委員「県民の不安を解消するには、甲状腺に限らず検査を受けたい人がアクセスしやすい体制を築くことが重要。そういう意味で今後課題になるのが、受診者の年齢がどんどん上がり、県外に出て行く人が増えた際の検査をどうするかということ。現時点でも18歳以上の受診率は低いので、いまから議論を始めるべき」

・春日文子委員「一番は県民の気持ちと身体に寄り添い、長期に見守ること。そして、より一層健康的な生活が送れるよう支援すること。これからどのような影響が出るのかしっかり見ていかないと最終的な判断は下せないと思うので、少なくとも今後5年、10年は検査を続ける必要がある」

・成井香苗委員「今後も検査を続けていけば原発事故の影響はなかった、あるいはあった、いずれかの結論が出るのでしょうが、私はどちらの結果になっても被曝した子どもたちにとってはいいことだと思う。影響があれば、国に責任を認めてもらい、さまざまな対策や補償を求めればいい」

このような委員の意見を受け、星北斗・座長が「すぐに(縮小の)結論を出すことはしない」と議論を引き取っている。

山下俊一氏の「弟子」であり、県放射線健康リスク管理アドバイザーとして「安全論」を振りまいてきた高村委員でさえ、甲状腺検査「縮小」には同意せず、むしろ進学・就職などを通して県外へ転出する県民へのフォローをすべきだという正当な意見を述べている。

3巡目検査における「希望しない」欄の創設は、県が福島県小児科医会や地元紙「福島民友」を使って地ならしをした上で、検討委における委員全員の意見を無視して一方的に強行した可能性が強まった。清水氏の甲状腺検査評価部会長辞任もこうした県の姿勢に対する「抗議」と見るべきであり、今後は県に対する批判をいっそう強めるとともに、検査・治療体制の拡充を求めていく必要がある。
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