安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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鉄道ジャーナル休刊へ WEB移行の予定もなく事実上の「廃刊」

2025-01-23 23:32:45 | 鉄道・公共交通/趣味の話題

鉄道ジャーナル休刊へ 58年の歴史に幕「好きだったな」「やはり…」(まいどなニュース)

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1967年創刊の老舗鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」が休刊することが分かった。21日発売の2025年3月号誌面で休刊することを発表した。ウェブ版へ移行する予定はなく、4月発売の6月号で休刊する。

鉄道ジャーナルは鉄道ジャーナル社(東京都千代田区飯田橋)が編集、発行し、成美堂出版(東京都新宿区新小川町)が発売する月刊鉄道雑誌。鉄道ジャーナル社の会社概要によると、 会社の創立は1965年(当初は鉄道記録映画社)、同社の主な業務は「月刊『鉄道ジャーナル』をはじめとする雑誌・書籍の編集・出版、および映像・ビデオ作品、DVDの制作・販売」で、従業員は8人(いずれも2015年12月現在)。

同社はまいどなニュース編集部の取材に対し、「現状を取り巻く出版状況の厳しさも一因」と休刊理由を説明した。

休刊が告知された2025年3月号「氷雪の旅 思い出の夜汽車」について、同社ホームページでは「鉄道を使った旅行では季節を問わずそれぞれの楽しみがあると言えますが、冬はとくに列車が進むにつれて車窓の景色がダイナミックに移り変わる、その変化を目の当たりにするだけでも旅情が深まるのを覚えます。今月は、津軽鉄道のストーブ列車、冬の日本海を満喫できる五能線のほか、トロッコ列車に窓ガラスを嵌め、だるまストーブで暖を取ったりもできるユニークな『風っこ』冬バージョンを取り上げました」「ブルートレインが姿を消して久しく、もはや望むべくもない往年の冬の夜汽車の旅を過去の記事から再掲しました。懐かしい思い出がよみがえります。そのほかグリーン車連結で注目の中央線快速の歴史について前号に続いて後編としてまとめました」と紹介している。1月21日(火)発売で定価1200円(本体1091円)。 

SNS上では休刊に対して「表紙めくったら告知があった」「書店が激減する中で手にする機会も確かに減った」「ルポ系記事や事業者執筆の記事とか、好きだったなぁ」と惜しむ声が上がり、「昔の記事を再掲したり、ページ数減などこの1、2年の急激な劣化は目を覆うばかりでした」「昔に比べ紙質も落ち記事もスカスカだったので、やはり…という感想しか出ない」と近年の紙面の変化を指摘する声も上がっていました。

鉄道写真家の中井精也さんは「鉄道カメラマンとしての僕を育ててくれた雑誌だけにとても残念でなりません」とX(旧Twitter)にコメントしていました。

同社ではバックナンバーを販売しており、書店で取り寄せも可能。バックナンバーの注文、申し込み、問い合わせは鉄道ジャーナル社 営業部まで。

(まいどなニュース・伊藤 大介)

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このニュースを見たとき「ついに来るべき時が来たか」が率直な気持ちだった。ネット上の記事には「意外だ」という声もあるようだが、私はそうは思わない。誌面はもう何十年も前から精彩を欠いていたし、ここ数年はずっと買っていなかった。「鉄道ファン」「鉄道ピクトリアル」と合わせて「御三家」と呼ばれていたが、その中で最も破綻に近いのが「鉄道ジャーナル」であることは21世紀に入る頃からすでに囁かれていた。

最も痛いのは、種村直樹氏(故人)が離脱した後、専属のライターを育てられなかったことだ。鉄道ジャーナル専門で執筆活動をしているのは、事実上、宮原正和編集長1人だけ。それ以外はほとんど全員が他媒体との掛け持ち。しかも他媒体のほうがメインで「ジャーナル」にも「ついでに」書いている、というスタンスの人ばかりだった。

記事の内容も、ジャーナルでなければ読めないというクオリティの高いものは影を潜めていた。「鉄道の将来を考える専門情報誌」を標榜しながら、鉄道をめぐる諸問題をきちんと掘り下げたものは多くなく、近年は一般経済誌の鉄道特集記事のほうがはるかに面白いのだからどうしようもない。週刊「エコノミスト」で定期的に行われる特集記事は読み応えがあるし、東洋経済オンラインの鉄道コーナー「鉄道最前線」や朝日新聞の「テツの広場」には興味深い記事が多い(ちなみに、JR北海道の運賃値上げ公聴会や、北海道内のローカル線問題をめぐっては、この両媒体からは私も何度か取材を受けたことがある)。

正直なところ、種村氏が離脱したときが「店じまい」のチャンスだったし、このときに余力を残した状態でWEB転換などに踏み切っていれば、その後の展開はまったく違ったかもしれない。近年は、枝久保達也氏、小林拓矢氏などの有力な若手も外部ライター陣に加わり、盛り返しのムードも見られただけに残念ではある。ローカル線問題に関しても「廃止ありき」ではなく、活用策を提唱するなど是々非々かつ複合的な論評活動ができるという意味で、私も枝久保氏や小林氏に対してはそれなりに評価もしている。

ただ、ここ数年は「鉄道ジャーナルがライター集めに苦労している」という話が漏れ伝わってきていた。「まいどなニュース」の取材に対するジャーナル社の回答は「現状を取り巻く出版状況の厳しさも一因」とのあいまいな理由だが、このようなライター集めの苦労に加えて、印刷費や輸送費の高騰などの様々な影響が少しずつ積み重なった結果としての休刊ということだろう。

「御三家」の書店での売れ行きはファン>ジャーナル>ピクトリアルの順で、決して売れていないわけではないと思うが、この中で真っ先に休刊になるとすれば「ジャーナル」だといわれ、実際にその通りの結果になったのは、結局は編集方針の中途半端さに尽きると思う。「ファン」は鉄道雑誌の最古参で発行部数1位であることに加え、「鉄道友の会」の会報的位置付けもあり今後も発行を続けなければならない動機がある。

「ピクトリアル」は「ジャーナル」ほどには売れていないと思うが、鉄道界の最新の動きを追うことに関してはWEBには敵わないと割り切り、特定鉄道会社や特定の車両形式を深く掘り下げるという、他にはなかなか真似のできない編集方針があり、資料的価値が高い。極端に言えば、ピクトリアルの記事は「今日読んでも、明日読んでも、10年後に読んでも資料的価値が変わらない」ことに強みがある。鉄道図書刊行会は「鉄道要覧」(国交省鉄道局監修・年1回)の発行なども請け負っており、ピクトリアル誌ももうしばらくは続くだろう。

コロナ禍以降、表面化したローカル線の危機は相変わらず続いているし、新幹線の開業も昔のように諸手を挙げて歓迎されるばかりでもなく、費用対効果や並行在来線など「負の側面」もクローズアップされる時代になった。鉄道そのものにいい話題がないことも鉄道雑誌を苦境に追い込んでいる理由だと思う。御三家の一角が崩れた後、二大誌となるファン、ピクトリアルが引き続き多くの人に読まれることを願っている。


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