学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

一枚のメモにまつわる記憶

2007-03-07 21:46:21 | Weblog
机の中を掃除していたら、1枚のメモを見つけました。
内容は、展示プランの組み立て方。
私が新人の時分、展示作品の陳列がうまく行かず、悩んでいたとき、
当時の館長が参考までに、と書いて下さったものです。
その文章を御紹介しましょう。

展示は、起承転結である。
メリハリを効かせて、観者の眼を楽しませるように作る。
繰り返しているな、と思わせながら、ドカンと変化を見せたり。
自分でいいようにやる。
陳列を楽しんでいれば、見る人にも通じる。
具象的なものと、抽象的なものをあまり混ぜて並べると
見苦しい。といって、漠然と分けても。
うまく合わせる。流れるように。そして考えさせるように。

以上が、館長のメッセージです。
メモには、具体的な指示が書かれていません。
展示プランは、あくまで私の考えにゆだねられているのです。
漠然とした言葉が続きますが、自分の意見を無理強いしなかった
館長らしいメモ。
この当時、私は楽しみながら展示を行う余裕がまるでありませんでした。
むしろ、仕事が苦痛で逃げ出したくなる心地。
メモを頂いた後、自分を信じて、陳列作業を行いました。

具象と抽象の配置には、随分悩まされましたが、
館長は「新人の割には上出来だね。」と、展示を褒めて下さいました。

一枚のメモが、そんな記憶を呼び起こしました。