学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

未来の学芸員たちへ その2

2007-04-17 19:23:51 | Weblog
「展示を見て考える」
今日は展覧会を観て、学ぶべきことをお話しましょう。

我々は、絵を見て楽しむために展覧会へ足を運びます。
連なる展示作品を見て、自分なりの感想を持つことでしょう。
それはとても大事なことです。
でも、ちょっと視点をずらしてみましょう。
どの展示にも学芸員の心は込められているもので、
それを汲み取ることも展覧会を楽しむポイントですし、
学芸員を目指す人にとっては勉強の1つです。

たとえば、極端な話ですが、展示室に入って、
何か大きな作品がバンっと正面に展示されていたとする。
インパクトのある絵を入り口に配置する理由は、見学者を
展覧会に引き込む効果を狙っていると同時に、担当の学芸員が
この展覧会において、重要な位置づけをしている絵と考えていいでしょう。
そこで、どうしてこの展覧会において、この絵が重要な位置づけを
されているのかを考えてみるのです。
画家にとって重要な契機となる絵?
この時代を代表する絵?
など、自分なりに意見を持ってみましょう。
何も正面に飾られた絵ばかりが重要ではないので、
周りにこだわったレイアウトがなされている絵や
一つだけ別に展示されている絵なども、同じように重要なものとして
考えることができます。

次に、展示作品の配置を見てみましょう。
そこにも学芸員なりの工夫がされているはずです。
例えば、大きい絵の隣に小さな絵を持ってくると、
小さな絵が大きい絵の強さに負けてしまって、
かわいそうな状態になってしまいます。
小さい絵や印象が弱い絵をいかに立派に見せるかも学芸員の
腕の見せ所。
どんな工夫が凝らされているかを観てみましょう。

また、これは私の工夫ですが、展示室のかどには鮮やかな色の作品を
配置することです。
カドは、スポットライトを当てても(照度には限界がありますので)
どうしても暗くなります。そこで、わざと色が鮮やかで、強い絵を
配置することで、暗さを感じさせない工夫しています。
何気なく展示されているように思えて、そこには学芸員なりの
アイディアがつまっているのです。

展覧会を見に行ったときは、展示されている絵だけを見るのではなく、
担当した学芸員の気持ちになって、展示作品の配置や工夫を考えて
みることも大事なことです。自分が学芸員になったつもりで、
展示を見てみるとまた違った面が見えてきて勉強になることかと
思います。