学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

未来の学芸員たちへ その3

2007-04-18 21:04:50 | Weblog
今日はテレビ取材を受けました。
なんと2局!(残念ながら2局とも地方の放送局です)
いつもながら緊張しますね。
新聞とテレビの効果は絶大で、掲載・放送後は
入館者数が随分上がります。
美術館にとっては、とてもありがたいことです。

「図録をどう活用するか」
みなさんは、展覧会へ行ったら図録を購入しますか?
見学した図録は絶対に買う方、満足のいく展示だったときには買う方、
あるいは全く図録に興味がない方、色々いらっしゃることと思います。
私の場合は、自分の仕事にどうしても必要な図録であったり、
そうでなくとも満足のいく展示内容であれば購入します。

展覧会図録は、一般の本屋で手に入れることができません。
(なかには横浜美術館のように販売されている場合もありますが)
そのうえ、ほとんどが高額です。
お金に余裕がない学生にとっては、なかなか購入しにくいかと
思います。
ですから、私は何が何でも購入したほうが良いとはいいません。
でも、せめて自分が面白いと感じた展覧会の図録は買っておくべきでしょう。

では、展覧会図録をどう活用するか。
図録は大きく分けて2つの構成から成り立ちます。
学芸員や評論家による論文と、展示作品の写真です。

論文は、学芸員が調査・研究を発表する大事なステージです。
いわば最新の研究成果が図録で読めるわけです。
私は、重要だと思われる箇所に線を引いて読んでいます。
学芸員の主張がわかりやすくなりますし、読み返すときに
非常に便利になるからです。
学生は、論文の内容もさることながら、文章の書き方も
模倣するべきでしょう。
絵画に対する考え方、見方、あるいは文章の構成やリズムなどに
優れていると思う学芸員の文章を何度も読んで、自分が授業や
ゼミでレポートを書く際の参考にしてみる。
学芸員に必要な論文を書く力が少しずつ付いているくるのでは
ないでしょうか。(むろん、論文に必要なのは文章の構成力と
独創的な発想力。しかし、いくら独創的な発想があったとしても、
文章を構成する力がなくては相手には伝わらないのです。まずは
文章の流れを学び、そして自分なりに作ることから始めるべきでしょう。)

作品の写真については、自分が気になった作品の写真横に
展覧会で観たときの印象を書き込んでおきます。
これも自分なりの絵に対する印象を書き込んでおくことで、
絵画に対して考える力を養うとともに、自分の感性を確認できる作業です。
また、再度その絵を見る機会があった場合に、最初に見たときとは違った
印象がないかどうか比較するすべにもなります。
(再度同じ絵を見る機会はなかなかないかもしれませんが、私の場合、
安井曽太郎の絵と再会する機会が多く、絵に向かって、久し振りだね、
と友達に話しかけるように言いたくなることがあります。:笑)
名作と呼ばれる小説は、読んだ年齢で異なる印象を受けるとは申しますが、
絵画についても同様のことがいえるでしょう。
論文を書く際には、自分の感じた印象がとても大事になります。

最近の図録は、鉛筆やペンによる書き込みをするのがもったいない
くらい素晴らしくデザインに凝ったものもあります。
絶対に書き込みをしなければならない、とは申しません。
そんなときはノートに感じたことや必要なことを書き込んでおくと
いいでしょう。