学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

きわめて実験的な展覧会講評(仮)

2008-03-23 21:45:44 | 展覧会感想
圭さんが遅れて展覧会の会場へ入ってくる。
「遅れて悪かった。ちょっと混雑していたものでね。」
「いいさ、僕も来たばかりだもの。」
「おや、最初の絵は、坊主頭の自画像かい。しごく健康そうだ。」
「健康かどうかは知らないが、彼は実際お寺の生まれなんだからしょうがない。」
「何か良いことがあったんだろうかね。とてもいい笑いをしているよ。君、ちょっと笑ってみたまえ。」
「僕はいやさ。恥ずかしいもの。」
「じゃあしょうがない。」
圭さんはにやりと笑う。碌さんはそれを見たとたん、肩をすぼめながら、逃げるように先へ歩く。
「君の笑いは薄気味悪くっていやだ。」
「薄気味悪いのは、或意味で美の一種なんだ。ムンクを見ろ、あの『叫び』だって薄気味悪いのに美さ。何も美しいものばかりが、美ではないよ。」
「一理あるような気もするが、屁理屈でもあるような気もするね。」
「おや、今度の自画像は随分明るい色彩で描かれているな。」
「うん。顔は真正面から少し上を見上げているようだな。生気に満ち溢れている。僕はこの絵から「希望」を感じるね。」
「自画像は内面を写す鏡、とはよく言ったものだ。だが、誰かに似ているな。」
「君は絵のどこを見ているんだい。」
圭さんは絵を見ながら、腕を組んで、しきりに考え込む。
「そうか、芥川龍之介に似ているね。もしかすると芥川が生気に満ち溢れるとこんな顔をしたかもしれない。」
「佐伯祐三と芥川龍之介を組み合わせる気かい。強引な結論付け方だね。」
「まだこの頃は芥川は生きているもの。」
「生きていたって、死んでいたってそういう問題ではないさ。」

※実験的とはつまり夏目漱石の『二百十日』を模して会話形式で作ってみました。あまりよろしくありませんね(苦笑)明日はしっかりと書きます。
コメント
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