学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

森美術館「フレンチ・ウィンドウ展」

2011-06-20 19:56:48 | 仕事
休日の今日は東京へ行ってきました。

このところの展覧会準備などでコチコチに固くなった頭をほぐそうと、森美術館の「フレンチ・ウィンドウ展」を見てきました。今日は月曜日で、ほとんどの美術館は休館日になっていますが、森美術館や国立新美術館など月曜日でも開館している美術館がいくつかあるのがうれしいところ。

この展覧会は副題として「マルセル・デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」と銘打ってあります。マルセル・デュシャン賞とは、森美術館のHPの文章を借りれば「彼の功績に敬意を表してその名を冠した同賞は、フランス人作家と国籍に関係なく広くフランスに在住する最も革新的な作家を対象とし、インスタレーション、ビデオ、絵画、写真、彫刻などの造形および視覚芸術の分野でフランスのアートシーンを牽引する作家たちの活動を支援し、国際的に紹介することを目的」としています。

マルセル・デュシャンは、日常のありふれたものもアートになりえることを提言したアーティストです。例えば、男性の小便器を傾けて《泉》として発表したり、モナリザの複製画に髭を描いてみたり。この展覧会では、そうしたデュシャンの精神性を感じさせる作品をフランス現代美術の最前線として紹介しているのです。

とても見ごたえのある、面白い展覧会でした。私が気になったものをいくつか。

デュシャンのモナリザの複製画に髭を描いた作品を見て、私も学生時代に教科書に載っている作者の顔写真にいたずらで髭を描いたっけ、なんて個人的な思い出も蘇り…(笑)

小さな自転車に何十もの鍵をつけた作品。ここまで防犯すれば自転車はまず盗まれまい、でもいちいち解くのが大変だけれどね、と作者のユニークなメッセージ性が伝わってきます。

鍵といえば、大きな岩にいくつもの鍵が打ち込まれている作品もありました。解説は何もなかったけれど、人間はみな心のなかにいくつもの秘密を持っていて、それはしっかりと鍵がかけられている、という風に私には捉えられるものでした。

映像では、残念ながら作家の名前は失念しましたが、ピンクやブルーを主体としてぼんやりとして幻想的な街を表現しているものが気になりました。私には、それが東日本大震災の津波のように見えてきました…。ときどきくるくる周る白くて小さな物体は、亡くなった人たちの魂のようでもあり。私の心の中に深く訴えてくるものとして、この映像は忘れられないような気がします。

私の気ままな感想を書いてきましたが、どのアーティストもやはり現代社会とコミットしていて、様々な問題定義をしているようです。なぜアートでなければいけないのか、そうした可能性を感じる展覧会であったように思います。

展覧会を見終えたあとは、私の頭もすっかりほぐれて…、ほぐれたところで、明日からまた頑張らないといけませんね!(笑)