学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

未来の学芸員たちへ その4

2007-04-20 21:51:44 | Weblog
「学芸員には何が求められる?」
今日は、学芸員の採用や今、学芸員に求められていることを
中心に書きたいと思います。

みなさんご存知の通り、学芸員の募集は滅多にありません。
私の経験では、募集は大きく2回。
6月頃に一般公務員の採用試験と共に募集があり、
その後、年を明けて2、3月頃に集中します。

採用試験については、以前、私が2006年11月7日のブログで
ある程度御紹介しましたので、試験対策については、
そちらの文章を読んでいただければと思います。

みなさんのなかに、学芸員になるには大学院を出ていなければ
ならないのではないかと思われている方がいらっしゃると思います。
でも、大学卒でも充分に学芸員になることが出来ます。
現に私は大卒で学芸員になっています。
また、私の周りにも大卒の学芸員は大勢居ますから、
試験を受けるときは、自分は大卒だから・・・と
不安げになる必要は特にないと思います。
勉強してきたことに自信を持つことがなにより大事!

今、学芸員に最も求められていること。
私は柔軟で、独創的な発想力ではないかと思います。
近年、どの美術館もワークショップなどの教育普及事業に
力を入れて、美術館をより多く人に利用してもらおうと
努力を続けています。
展示も、教科書のようにずらりと無機質に並べるのではなく、
見る人が面白く絵を見られるように、何かしらの工夫している美術館を
数多く観る事が出来ます。
(特に小規模の美術館が頑張っているように思います。私個人としては、
板橋区立美術館、宮城県のリアス・アーク美術館、美術館ではないですが、
群馬県立歴史博物館が面白い展示をしています)
また、もっと大々的な企画となると、美術館が中心となって、
町全体を盛り上げる企画を打ち出すなど。
それらを見てもわかるように、知識よりもむしろ、
独特な発想力とフットワークのよさが必要になってきているように
思うのです。勉強を積み重ねた知識を、独特の発想でお客様に紹介する、
といったところでしょうか。
無論、フットワークや仕事に負けない体力も必要ですね!

これから学芸員を目指される方、
参考になりましたでしょうか。
少しでもお役に立てたのなら本望です。
私自身もまだまだ勉強を積まなければならない身です。
随分えらそうなことを述べてしまったかと思いますが、
これらのことは全て私の経験から述べたことです。

未来の学芸員さん。
夢を追い続けて、頑張って下さい!

閑話休題

2007-04-19 20:52:52 | Weblog
昨日までは、学芸員としての知識について
御紹介しました。
他にも身に付けて置くべきことは沢山あります。
・資料や文献を探す技術(図書館司書を学ぶと良いですね)
・写真撮影の技術(デジカメで構図の勉強をする)
・パソコン(館によってはHPの管理を任されることもあります)
ここまでやっておくと、学芸員になったときに、
あまり困らないかと思うのですが・・・。
そこまで勉強している時間もないことと思いますので、
あくまで理想ですので、参考までに。

明日は、試験についてお話しようと思います。

未来の学芸員たちへ その3

2007-04-18 21:04:50 | Weblog
今日はテレビ取材を受けました。
なんと2局!(残念ながら2局とも地方の放送局です)
いつもながら緊張しますね。
新聞とテレビの効果は絶大で、掲載・放送後は
入館者数が随分上がります。
美術館にとっては、とてもありがたいことです。

「図録をどう活用するか」
みなさんは、展覧会へ行ったら図録を購入しますか?
見学した図録は絶対に買う方、満足のいく展示だったときには買う方、
あるいは全く図録に興味がない方、色々いらっしゃることと思います。
私の場合は、自分の仕事にどうしても必要な図録であったり、
そうでなくとも満足のいく展示内容であれば購入します。

展覧会図録は、一般の本屋で手に入れることができません。
(なかには横浜美術館のように販売されている場合もありますが)
そのうえ、ほとんどが高額です。
お金に余裕がない学生にとっては、なかなか購入しにくいかと
思います。
ですから、私は何が何でも購入したほうが良いとはいいません。
でも、せめて自分が面白いと感じた展覧会の図録は買っておくべきでしょう。

では、展覧会図録をどう活用するか。
図録は大きく分けて2つの構成から成り立ちます。
学芸員や評論家による論文と、展示作品の写真です。

論文は、学芸員が調査・研究を発表する大事なステージです。
いわば最新の研究成果が図録で読めるわけです。
私は、重要だと思われる箇所に線を引いて読んでいます。
学芸員の主張がわかりやすくなりますし、読み返すときに
非常に便利になるからです。
学生は、論文の内容もさることながら、文章の書き方も
模倣するべきでしょう。
絵画に対する考え方、見方、あるいは文章の構成やリズムなどに
優れていると思う学芸員の文章を何度も読んで、自分が授業や
ゼミでレポートを書く際の参考にしてみる。
学芸員に必要な論文を書く力が少しずつ付いているくるのでは
ないでしょうか。(むろん、論文に必要なのは文章の構成力と
独創的な発想力。しかし、いくら独創的な発想があったとしても、
文章を構成する力がなくては相手には伝わらないのです。まずは
文章の流れを学び、そして自分なりに作ることから始めるべきでしょう。)

作品の写真については、自分が気になった作品の写真横に
展覧会で観たときの印象を書き込んでおきます。
これも自分なりの絵に対する印象を書き込んでおくことで、
絵画に対して考える力を養うとともに、自分の感性を確認できる作業です。
また、再度その絵を見る機会があった場合に、最初に見たときとは違った
印象がないかどうか比較するすべにもなります。
(再度同じ絵を見る機会はなかなかないかもしれませんが、私の場合、
安井曽太郎の絵と再会する機会が多く、絵に向かって、久し振りだね、
と友達に話しかけるように言いたくなることがあります。:笑)
名作と呼ばれる小説は、読んだ年齢で異なる印象を受けるとは申しますが、
絵画についても同様のことがいえるでしょう。
論文を書く際には、自分の感じた印象がとても大事になります。

最近の図録は、鉛筆やペンによる書き込みをするのがもったいない
くらい素晴らしくデザインに凝ったものもあります。
絶対に書き込みをしなければならない、とは申しません。
そんなときはノートに感じたことや必要なことを書き込んでおくと
いいでしょう。


未来の学芸員たちへ その2

2007-04-17 19:23:51 | Weblog
「展示を見て考える」
今日は展覧会を観て、学ぶべきことをお話しましょう。

我々は、絵を見て楽しむために展覧会へ足を運びます。
連なる展示作品を見て、自分なりの感想を持つことでしょう。
それはとても大事なことです。
でも、ちょっと視点をずらしてみましょう。
どの展示にも学芸員の心は込められているもので、
それを汲み取ることも展覧会を楽しむポイントですし、
学芸員を目指す人にとっては勉強の1つです。

たとえば、極端な話ですが、展示室に入って、
何か大きな作品がバンっと正面に展示されていたとする。
インパクトのある絵を入り口に配置する理由は、見学者を
展覧会に引き込む効果を狙っていると同時に、担当の学芸員が
この展覧会において、重要な位置づけをしている絵と考えていいでしょう。
そこで、どうしてこの展覧会において、この絵が重要な位置づけを
されているのかを考えてみるのです。
画家にとって重要な契機となる絵?
この時代を代表する絵?
など、自分なりに意見を持ってみましょう。
何も正面に飾られた絵ばかりが重要ではないので、
周りにこだわったレイアウトがなされている絵や
一つだけ別に展示されている絵なども、同じように重要なものとして
考えることができます。

次に、展示作品の配置を見てみましょう。
そこにも学芸員なりの工夫がされているはずです。
例えば、大きい絵の隣に小さな絵を持ってくると、
小さな絵が大きい絵の強さに負けてしまって、
かわいそうな状態になってしまいます。
小さい絵や印象が弱い絵をいかに立派に見せるかも学芸員の
腕の見せ所。
どんな工夫が凝らされているかを観てみましょう。

また、これは私の工夫ですが、展示室のかどには鮮やかな色の作品を
配置することです。
カドは、スポットライトを当てても(照度には限界がありますので)
どうしても暗くなります。そこで、わざと色が鮮やかで、強い絵を
配置することで、暗さを感じさせない工夫しています。
何気なく展示されているように思えて、そこには学芸員なりの
アイディアがつまっているのです。

展覧会を見に行ったときは、展示されている絵だけを見るのではなく、
担当した学芸員の気持ちになって、展示作品の配置や工夫を考えて
みることも大事なことです。自分が学芸員になったつもりで、
展示を見てみるとまた違った面が見えてきて勉強になることかと
思います。

未来の学芸員たちへ その1

2007-04-16 19:49:30 | Weblog
今日は朝から雨模様。
気温も上がらず、折角の休日なのに、
天気が悪いと気分もあまり高揚しませんね。

さて、先日、後輩が学芸員に採用されたニュースをお伝えしました。
彼のように学芸員になりたい、と思う学生はとても多いことと思いますが、
実際に学芸員になれる人はほんの一握り。
現実として、大体の学生が、途中で進路を変更していきます。
でも、どうしても学芸員になりたい、という方のために、
学生時代はどんなことを学んでおくべきなのか、
そして就職のためにどんな行動を起こすべきなのかを私なりに
数日間にわたって綴っていきたいと思います。
私もまだ学芸員としてのキャリアは少ないのですが、
未来を担う学芸員のために、少しでもお役に立てれば、
と書いてみることにしました。

「本を読んで考えること」
学芸員として、必要なことはまず幅広い知識を
持って居ることです。基本的なことですが、
とても大事なこと。
では、どんな本から読んでおくべきなのか。
まずは、自分の興味ある分野から読んでみるのが一番いいでしょう。
私の場合、伊藤若冲が好きな画家だったので、彼に関する
本から読み始めました。
読み終えたら、考えてみる。
何を考えるのかというと、何でも良いです。
本の作者はこう言っているけど、自分はそうは思わないとか、
画集を観て、作家の心のなかを想像してみたり。
とにかく作家や絵に対して自分の意見を持つことです。
間違っているんじゃないかとか、そんなことは気にせずに、
感じたことをノートに箇条書きで書いておきましょう。

でも、残念ながら本からは生きた学問は得られないのです。
実際に本で読んだ作家の絵を見に行く行動が必要になります。
学芸員を目指す人が、本物を観ないで、頭の中だけで考えていては
絶対にいけないことです。
学生はお金があまりないと思いますので、遠くの美術館には
行くことはできないと思いますが、できるだけ本で知った作家の絵を
観ておくべきでしょう。(限定された絵を見に行こうとすると、
きりがないし、不可能に近いので、その作家の絵ならどれでもいいと思います)
人間は自ら行動して得た知識は忘れないもので、本で学んだことを
本物で確認し実際に感じることで本当に知識になるといえるでしょう。

知識を得ようと本ばかり読み漁るのは、私はあまりオススメしません。
本はあくまで考えるきっかけとなるアイテム、と考えるべきでしょう。





初心に帰る

2007-04-15 16:08:44 | Weblog
私がブログをはじめてから、半年が経過しました。
月日が経過するのは、本当に早いものです。
今日、少し時間があったので、過去に自分が書いた
ブログの内容を読み返していたのですが、
最近は、全然「学芸員の日記」になっていないな、と
少し反省…。

ブログを始めたばかりのころは、日々の具体的な業務や
展覧会の感想、オススメの美術書などを紹介していたのに、
近頃はさっぱり…。
ただ、日々の出来事を綴るだけでは、ただの日記であって、
「学芸員の日記」と名乗るわけにはいきませんよね…。

明日から、初心に帰って書き込みを続けていきたいと思います。

うれしいニュース

2007-04-15 15:04:51 | Weblog
昨夜、うれしいニュースがありました。
大学の後輩が、学芸員に採用されたのです。

彼とは高校からの付き合いで、
その頃から学芸員になる夢を持っていました。
このたび、その願いが叶い、
私事のようにうれしく思います。

本当によかった(涙)
これからは同じ学芸員同士、
お互い刺激しあいながら、頑張ることができれば!
と思います。

初めのギャラリートーク

2007-04-14 23:17:19 | Weblog
今日は展覧会初日で、ギャラリートークを
行いました。
展示作業に手がいっぱいで、ギャラリートークの
原稿を作っている時間もあまりありませんでしたが、
何とか無事終えることができました。

私がギャラリートークで意識していること。
1.ジェスチャーを交えて話す。
2.専門用語は極力使わず、ゆっくり話す。
3.自分だけ一方的にしゃべらず、参加者に意見を求めたり、
  時々間を置いて、絵を見るゆとりの時間を設ける。
4.原稿はほとんどみない。自分の言葉で話す。

基本的なことですけれど、慣れないうちはなかなか…。
これはやはり経験で培われるものですね。
私はギャラリートークが好きで、お客様とコミュニケーションを
取るのがとても楽しみなのです。
好きこそ物の上手なれ、ということでしょうか(笑)


新しい展示へ

2007-04-14 00:13:05 | Weblog
もう日付が変わってしまいました。

ようやく昨日(13日)、展示替え作業が終わりました。
1週間、展示替えのために休館し、最終日に終了です。
今回は少し段取りが悪かったかな、と反省しています。
また、今回はほとんど自分ひとりで展示替えをしたので、
今までで一番愛着のある展覧会になりそう。
展示替えをひとりで行うなんて、普通ありえないこと
なんですけれど・・・。

こうして出来上がった展示室を見渡してみると、
感無量。でも、ちょっと物足りないところもあったり。
今日(14日)は早速ギャラリートーク。
作品の魅力を伝えられるように頑張ります!


体力が無くなったと実感するとき

2007-04-10 22:08:55 | Weblog
今日から展示替えのため、しばらく休館です。
展示替え休館日のときに、親友から言われた一言。
「職員は長期休暇なんでしょ。」
だったら嬉しいのだけど(笑)

展示替えのときに感じること。
それは体力の衰え・・・。
特に脚立を何度も上り下りするので、
足への疲労度が高く。
今日はもう疲れました。

先週まで開催していた作品を全て収蔵庫に
引き上げ、新しい展示作品の陳列をしました。
事前に考えていたレイアウトどおりに
配置をしてみるものですが、やはり頭で考えたものと、
実際において見るのとでは印象が随分違います。

明日はいよいよ作品を壁面にかけていきます。
明日が正念場ですね!
頑張ります。