2008年の米国大統領選挙の帰趨は、ソーシャルメディアが左右した。TwitterやYouTubeでバラク・オバマのファンが広がり、オバマ陣営への小口献金は総体として莫大な額となった。オバマのスローガン「チェンジ」は、選挙の手法においてすでに実践されていたのである。
なぜソーシャルメディアがかくも盛んに活用されるのか。
サーチエンジンには致命的な欠陥がある、と本書は指摘する。ウェブの情報量が多すぎて、全体を把握するために別のツールが必要なのだ。そのツールがソーシャルメディアというわけだ。ソーシャルメディアによって、手軽に速やかに質の高い情報が入手できる、と本書は実例をあげて説く。
かくて、「グーグルの強敵は他のサーチエンジンであるYahoo! 、MSN 、Ask などではなく、ソーシャルメディアなのだ。グーグルをはじめとするサーチエンジンはこの流れに気づいていて、サービスをよりソーシャルメディアに近づけようとしている」
ソーシャルメディアは社会にどのような行動の変化をもたらすか。
例1。消費者は、気になる商品があればソーシャルメディアで評判を調べ、あるいはみんなの意見に耳をかたむけて、買うかどうかを決めることができる。
例2。企業、マーケッティング担当者は、ソーシャルメディアにおいて以前よりも容易に批判的な意見を見つけだせるから、問題発見はこちらに任せ、問題解決に時間を傾注する。有能な企業はかくのごとく批判的な意見を前向きに受け止めるが、無能な企業は逆にソーシャルメディア上の批判的な意見を隠蔽する操作に忙殺されるのだ。
ソーシャルメディアは、ビジネスモデルの変革を強いる。端的な例は、新聞にみることができる。
ビジネスモデルを変えないと、それまでのサービスをデジタル化するだけで、従前とおなじ購読料を設定することになる。この愚行の結果、世界第2位の巨大メディア企業、トリビューン社は2008年に破産申告した。
逆に、先進的な決断をしたのは「ニューヨークタイムズ」紙だ。自動的に記事がダウンロードできるサービスを設け、月額12ドルというわずかな購読料のみを課金している。バラク・オバマが小口献金を集めて、結果として何百万ドルに達したやり方に似ている。
本書には新たなビジネスモデルのアイデアが盛りこまれているから、「有能な」企業は食指をそそられるはずだ。たとえば電子書籍。これまで本の中に商品を登場させた場合の効果を測定できなかったが、ハイパーリンクを取り入れることで新たな収入源を生む、と本書は予測する。
ところで、本書にキーワードを設定するなら、「みんな」である。みんなのメディア、みんなの経済(ソーシャルノミクス)、みんなの迷い、みんなが何をしているのか知りたい、みんな必死です、みんな、みんな・・・・。
「140字」には「140字」の情報や思想しか盛りこむことはできないのだが、量は質に転化するのである。ソーシャルメディアに示されるメッセージは概して主観的なものだが、主観が多数集まれば客観性を帯びるというわけだ。まことにアメリカ的な、あまりにも大衆社会アメリカ的な。
【注】本書は、R+から献本していただいた。条件は、書評400字程度を書くこと、である。
レビュープラス
□エリック クォルマン(竹村詠美/原田卓・訳)『つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える!』 (イースト・プレス、2010)
↓クリック、プリーズ。↓
なぜソーシャルメディアがかくも盛んに活用されるのか。
サーチエンジンには致命的な欠陥がある、と本書は指摘する。ウェブの情報量が多すぎて、全体を把握するために別のツールが必要なのだ。そのツールがソーシャルメディアというわけだ。ソーシャルメディアによって、手軽に速やかに質の高い情報が入手できる、と本書は実例をあげて説く。
かくて、「グーグルの強敵は他のサーチエンジンであるYahoo! 、MSN 、Ask などではなく、ソーシャルメディアなのだ。グーグルをはじめとするサーチエンジンはこの流れに気づいていて、サービスをよりソーシャルメディアに近づけようとしている」
ソーシャルメディアは社会にどのような行動の変化をもたらすか。
例1。消費者は、気になる商品があればソーシャルメディアで評判を調べ、あるいはみんなの意見に耳をかたむけて、買うかどうかを決めることができる。
例2。企業、マーケッティング担当者は、ソーシャルメディアにおいて以前よりも容易に批判的な意見を見つけだせるから、問題発見はこちらに任せ、問題解決に時間を傾注する。有能な企業はかくのごとく批判的な意見を前向きに受け止めるが、無能な企業は逆にソーシャルメディア上の批判的な意見を隠蔽する操作に忙殺されるのだ。
ソーシャルメディアは、ビジネスモデルの変革を強いる。端的な例は、新聞にみることができる。
ビジネスモデルを変えないと、それまでのサービスをデジタル化するだけで、従前とおなじ購読料を設定することになる。この愚行の結果、世界第2位の巨大メディア企業、トリビューン社は2008年に破産申告した。
逆に、先進的な決断をしたのは「ニューヨークタイムズ」紙だ。自動的に記事がダウンロードできるサービスを設け、月額12ドルというわずかな購読料のみを課金している。バラク・オバマが小口献金を集めて、結果として何百万ドルに達したやり方に似ている。
本書には新たなビジネスモデルのアイデアが盛りこまれているから、「有能な」企業は食指をそそられるはずだ。たとえば電子書籍。これまで本の中に商品を登場させた場合の効果を測定できなかったが、ハイパーリンクを取り入れることで新たな収入源を生む、と本書は予測する。
ところで、本書にキーワードを設定するなら、「みんな」である。みんなのメディア、みんなの経済(ソーシャルノミクス)、みんなの迷い、みんなが何をしているのか知りたい、みんな必死です、みんな、みんな・・・・。
「140字」には「140字」の情報や思想しか盛りこむことはできないのだが、量は質に転化するのである。ソーシャルメディアに示されるメッセージは概して主観的なものだが、主観が多数集まれば客観性を帯びるというわけだ。まことにアメリカ的な、あまりにも大衆社会アメリカ的な。
【注】本書は、R+から献本していただいた。条件は、書評400字程度を書くこと、である。
レビュープラス
□エリック クォルマン(竹村詠美/原田卓・訳)『つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える!』 (イースト・プレス、2010)
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