(1)高福祉高負担は、企業の対外強速力を構造的に蚕食し、長期的には維持できない。
→スウェーデン経済は、高付加価値、高生産性、高技術、省労働力産業に特化している。国際経済に対してきわめて開放的である。比較優位理論が非常によくあてはまる。さらに、国際環境の時々刻々の変化に対応して、産業構造を適確に変えていく弾力性を有している。
(2)高負担は、製造業におけるコスト増を通じて工場などの海外とスウェーデン経済の空洞化をもたらし、経済成長力の低下、失業率の高位固定を惹起する。
→(1)の産業構造の弾力的変化のほか、公共部門による高福祉政策に対応する産業構造、雇用構造が形成されており、経済成長力の低下、失業問題の深刻化などの現象は、サイクリカルには認められても、構造的には確認できない。
(3)労働者側からみて、手厚い労働者保護政策や福祉政策のもとで、アブセンティズムといわれる病気休暇の濫用など労働意欲の減退がみられ、生産性の低下は避けられない。
→かかる現象が一部にみられることは否定できない。しかし、他方では、教育、訓練、積極的失業対策などの充実した施策のもとで、経済環境の変化に対応した労働力の向上もより明瞭に観察できる。一部にみられる労働意欲の減退が経済成長率や国際競争力に影響するというがごときシリアスな状況は確認できない。
(4)あまりの高負担を嫌って、富裕層の海外転出や有為の若年層の海外での就職などの逃避現象が生じている。
→典型的なやぶにらみ批判である。富裕層の海外転出は、有名スポーツ選手や有名俳優などにかぎられる。20歳台や30歳台に著しく高水準の所得があるものの、花のいのちは短くて、急速に所得水準が低下していく。このような稼得パターンのもとでの税負担は、高負担社会、とくに厳しい累進課税制の社会では非常に重くなるものだ。花の盛りの時期における低負担国への逃避は、ある意味で合理性がある。実際、これらの人々も盛りをすぎると故国に帰ってくる例も多い。普通に学業を終え、経済界で次第に地歩を築いた人々が、海外逃避する例はほとんどない。
EU内での労働移動は、原則として自由のはずだ。そのなかで、若年層は、自分たちの希望、能力、適正に合った職場を選択しているにすぎない。
1999年に行われた国際比較調査(各国の若者の自国の社会に対する満足度意識調査)によれば、満足している若者の比率がもっとも高かったのはスウェーデンで、69%に達した。他方、低い部類にはロシア、韓国とともに日本が含まれ、満足している若者は35%にとどまった。
【参考】藤井威『スウェーデン・スペシャルⅠ -高福祉高負担政策の背景と現状-』(新評論、2002)
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→スウェーデン経済は、高付加価値、高生産性、高技術、省労働力産業に特化している。国際経済に対してきわめて開放的である。比較優位理論が非常によくあてはまる。さらに、国際環境の時々刻々の変化に対応して、産業構造を適確に変えていく弾力性を有している。
(2)高負担は、製造業におけるコスト増を通じて工場などの海外とスウェーデン経済の空洞化をもたらし、経済成長力の低下、失業率の高位固定を惹起する。
→(1)の産業構造の弾力的変化のほか、公共部門による高福祉政策に対応する産業構造、雇用構造が形成されており、経済成長力の低下、失業問題の深刻化などの現象は、サイクリカルには認められても、構造的には確認できない。
(3)労働者側からみて、手厚い労働者保護政策や福祉政策のもとで、アブセンティズムといわれる病気休暇の濫用など労働意欲の減退がみられ、生産性の低下は避けられない。
→かかる現象が一部にみられることは否定できない。しかし、他方では、教育、訓練、積極的失業対策などの充実した施策のもとで、経済環境の変化に対応した労働力の向上もより明瞭に観察できる。一部にみられる労働意欲の減退が経済成長率や国際競争力に影響するというがごときシリアスな状況は確認できない。
(4)あまりの高負担を嫌って、富裕層の海外転出や有為の若年層の海外での就職などの逃避現象が生じている。
→典型的なやぶにらみ批判である。富裕層の海外転出は、有名スポーツ選手や有名俳優などにかぎられる。20歳台や30歳台に著しく高水準の所得があるものの、花のいのちは短くて、急速に所得水準が低下していく。このような稼得パターンのもとでの税負担は、高負担社会、とくに厳しい累進課税制の社会では非常に重くなるものだ。花の盛りの時期における低負担国への逃避は、ある意味で合理性がある。実際、これらの人々も盛りをすぎると故国に帰ってくる例も多い。普通に学業を終え、経済界で次第に地歩を築いた人々が、海外逃避する例はほとんどない。
EU内での労働移動は、原則として自由のはずだ。そのなかで、若年層は、自分たちの希望、能力、適正に合った職場を選択しているにすぎない。
1999年に行われた国際比較調査(各国の若者の自国の社会に対する満足度意識調査)によれば、満足している若者の比率がもっとも高かったのはスウェーデンで、69%に達した。他方、低い部類にはロシア、韓国とともに日本が含まれ、満足している若者は35%にとどまった。
【参考】藤井威『スウェーデン・スペシャルⅠ -高福祉高負担政策の背景と現状-』(新評論、2002)
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