(1)先進国では、高齢化と低出生率が悩みのタネだ。
その対策として、スウェーデンはいち早く移民政策と文化多元主義政策を推進した。1人当たりの難民受け入れは世界一高く、独国や英国は難民受け入れ率が10%強であるのに対し、スウェーデンでは90%だ。こうした施策の結果、スウェーデン人口は900万人(2004年)から950万人(2012年)に増加した。
(2)2004~12年の間の新生児のうち、16%は主にムスリムの非西欧出身の母を持つ。ここ数年の移民のうち、3分の2以上は、これら非西欧出身者だ。このムスリム化傾向は加速されつつある。
少数派民族の密集居住地(ゲットー)は、1990年には3ヵ所しかなかったが、2006年には156ヵ所に膨れ上がった。
(3)問題は、生来のスウェーデン人の就業率が80%を超えているのに対し、移民の就業率は50%程度でしかないことだ。移民の多くは就業に必要な最低限の教育や経験を持ち合わせていない上に、イスラム教の排他性が現地適応への障害となっている。さらに、これら移民の親を持った第二世代の失業率が群を抜いて高い。
移民やその第二世代の失業率の高さは、社会保障費の重い負担となっている。治安も大幅に悪化している。
移民もしくは片親か両親が移民である住民が、1997~2001年の犯罪のうち45%を占め、殺人や強姦などの凶悪犯罪においてはさらに高い比率を占める。【スウェーデン国立犯罪防止協議会】
(4)これら移民問題は、極右派が台頭しつつあるオランダや、ブルカを禁止した仏国、ベルギーなどでも頻繁に論議されてきた。
しかし、驚くべきことにスウェーデンでは、これらの問題があまり公になっていない。この国のメディアは情報統制と見なし得るほどの自己規制を敷き、移民の問題を提議しようものなら即座にゼノフォビア(外国人嫌悪者)・イスラモフォビア(イスラム嫌悪者)の烙印を押す。
2011年に右翼のスウェーデン民主党が議席を獲得するまでは、移民問題について語ることさえタブー視されていた。
昨年、スウェーデンのどの学校にもサンタクロースが来なかった。クリスマスツリーを置いている学校もなかった。宗教的配慮のためだ。
(5)メルケル首相(独)は文化多元主義の失敗を認めた。しかし、スウェーデンの指導者層・知識層は、自らの過ちを直視せず、相変わらず声高に文化多様性の必要性を唱えている。
とはいえ、スウェーデン人の75%は移民問題を認識している。40%は、この問題に関して歪曲された情報を与えられている、と感じ始めている。
(6)スウェーデンは、宗教の中立化を推進するため、すべての学校からクリスマスツリーを取り除くことまでやった。
そのスウェーデンと、棄教者は原則として死刑とするイスラム教とでは水と油だ。
スウェーデン人は、日本人同様、争い事が表面化するのを極端に嫌う。臭い物にはふた、の思想が根柢に流れている。不満が水面下で大きく膨らみつつある。
仏国や独国では、移民問題について時折ガス抜きが行われていた。スウェーデンは移民に最も寛容だったが、いまや暴発の可能性が最も高い国となった。スウェーデンで暴発が起これば、欧州文化多元主義崩壊の狼煙となる。
□竹下誠二郎(みずほインターナショナル ディレクター)「もう一つの火薬庫、爆発寸前の移民問題 スウェーデンが映し出す文化多元主義の限界」(「週刊ダイヤモンド」2013年1月19日号)
↓クリック、プリーズ。↓
その対策として、スウェーデンはいち早く移民政策と文化多元主義政策を推進した。1人当たりの難民受け入れは世界一高く、独国や英国は難民受け入れ率が10%強であるのに対し、スウェーデンでは90%だ。こうした施策の結果、スウェーデン人口は900万人(2004年)から950万人(2012年)に増加した。
(2)2004~12年の間の新生児のうち、16%は主にムスリムの非西欧出身の母を持つ。ここ数年の移民のうち、3分の2以上は、これら非西欧出身者だ。このムスリム化傾向は加速されつつある。
少数派民族の密集居住地(ゲットー)は、1990年には3ヵ所しかなかったが、2006年には156ヵ所に膨れ上がった。
(3)問題は、生来のスウェーデン人の就業率が80%を超えているのに対し、移民の就業率は50%程度でしかないことだ。移民の多くは就業に必要な最低限の教育や経験を持ち合わせていない上に、イスラム教の排他性が現地適応への障害となっている。さらに、これら移民の親を持った第二世代の失業率が群を抜いて高い。
移民やその第二世代の失業率の高さは、社会保障費の重い負担となっている。治安も大幅に悪化している。
移民もしくは片親か両親が移民である住民が、1997~2001年の犯罪のうち45%を占め、殺人や強姦などの凶悪犯罪においてはさらに高い比率を占める。【スウェーデン国立犯罪防止協議会】
(4)これら移民問題は、極右派が台頭しつつあるオランダや、ブルカを禁止した仏国、ベルギーなどでも頻繁に論議されてきた。
しかし、驚くべきことにスウェーデンでは、これらの問題があまり公になっていない。この国のメディアは情報統制と見なし得るほどの自己規制を敷き、移民の問題を提議しようものなら即座にゼノフォビア(外国人嫌悪者)・イスラモフォビア(イスラム嫌悪者)の烙印を押す。
2011年に右翼のスウェーデン民主党が議席を獲得するまでは、移民問題について語ることさえタブー視されていた。
昨年、スウェーデンのどの学校にもサンタクロースが来なかった。クリスマスツリーを置いている学校もなかった。宗教的配慮のためだ。
(5)メルケル首相(独)は文化多元主義の失敗を認めた。しかし、スウェーデンの指導者層・知識層は、自らの過ちを直視せず、相変わらず声高に文化多様性の必要性を唱えている。
とはいえ、スウェーデン人の75%は移民問題を認識している。40%は、この問題に関して歪曲された情報を与えられている、と感じ始めている。
(6)スウェーデンは、宗教の中立化を推進するため、すべての学校からクリスマスツリーを取り除くことまでやった。
そのスウェーデンと、棄教者は原則として死刑とするイスラム教とでは水と油だ。
スウェーデン人は、日本人同様、争い事が表面化するのを極端に嫌う。臭い物にはふた、の思想が根柢に流れている。不満が水面下で大きく膨らみつつある。
仏国や独国では、移民問題について時折ガス抜きが行われていた。スウェーデンは移民に最も寛容だったが、いまや暴発の可能性が最も高い国となった。スウェーデンで暴発が起これば、欧州文化多元主義崩壊の狼煙となる。
□竹下誠二郎(みずほインターナショナル ディレクター)「もう一つの火薬庫、爆発寸前の移民問題 スウェーデンが映し出す文化多元主義の限界」(「週刊ダイヤモンド」2013年1月19日号)
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