語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】世界水準の危機管理でも防げない武装勢力の襲撃

2013年01月29日 | 社会
 (1)LNGプラントの心臓部「中核装置」(地中から掘り出した天然ガスをマイナス162度で液化する設備)を手がけられる企業は、世界に5つしかない。「日揮」「千代田化工建設」(以上、日本)、「ベクテル」「KBR」(以上、米国)、「テクニップ」(仏国)だ。扱える企業が限定されるために、資源国から声がかかるのだ。
 資源の多くは政情不安定な国々に眠っていることが多く、技術を持つ企業は、必然的にそのような地域が仕事場となる。
 エンジニアリング会社は、砂漠の真ん中やジャングルの奥地で、原野を開拓して街を造成することがから始める。最終的には巨大生産設備を立ち上げる。
 プラント建設ばかりではなく、現地人の技術者教育などを通じて資源国の発展に貢献してきた。【「日揮」OB】

 (2)「日揮」にとって、アルジェリアは縁の深い国だ。1969年の「アルズー製油b所」の建設プロジェクトは、苛酷な環境下で幾多の困難に直面し、多額の損失を出して会社がつぶれかけた。それでも設備を完成させて、同国政府の信頼を勝ち得た。これが後の大型受注につながり、「日揮」は発展の礎を築いた。最初に調査で接点ができて以来、45年以上の関係がある。
 「日揮」は、2011年度の連結決算で、売上高5,569億円、営業利益670億円、純利益391億円と、過去最高益を出した。長い年月をかけ、体系化した独自のリスク管理手法により、実践と信頼を積み重ねていった。

 (3)海外に軸足を置くプラント・エンジニアリングの仕事は、困難で、リスクを伴う。
 「日揮」のリスク管理体制は、世界が認める水準だ。
 <例>カタールの気体の天然ガスを液体燃料に変える設備「パールGTLプラント」(2011年に完成)の建設現場では、世界60ヵ国以上から52,000人の作業員をかき集めたが、死者を1人しか出さなかった。

 (4)世界水準のリスク管理能力をもつ「日揮」をもってしても、また、アルジェリア国防軍が常駐していても、襲撃を防げなかった。1月26日、アルジェリア内陸部の天然ガスで起きたイスラム勢力による人質事件で、エンジニアリング専業大手「日揮」(横浜市)の国内外スタッフ10人以上が死亡した。
 プラント・エンジニアリングの世界には、「ビヨンド・コントロール」(想定されるリスク要因を徹底的に排除してもなお残る制御不能な事態)という概念がある。これが、今回、如実に示されたのだ。

□池富仁(本誌)「リスク管理で世界水準だった業績好調の日揮を襲った悪夢」(「週刊ダイヤモンド」2003年2月2日号)
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