語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】E・ケストナー「ホテルでの男性合唱」 ~人生処方詩集~

2015年11月01日 | 詩歌
 これはぼくの部屋であって しかもぼくの部屋じゃない
 ベッドが二つ 手をつないで立っている
 ベッドが二つだ 一つしかいらないのに
 だって ぼくはまたひとりになったんだから

 トランクがあくびしている ぼくも疲れた気がする
 きみは ずいぶんちがった男のとこへ走った
 ぼくはあの男をよく知っている ぼくはきみのために無事を祈るよ
 それから もうすこしで祈るとこだ きみがいつまでも着かないでくれたらと

 ぼくはきみを行かせるんじゃなかった
 (ぼくのためにじゃない ぼくはよろこんで独りでいる)
 しかしとにかく 女があやまちを犯したいときは
 はたで邪魔してはいけない

 世界はひろい きみはそのなかで迷子になるだろう
 ただねがわくは あんまり遠くに迷いこまぬように
 ぼくは 今夜はよっぱらって
 きみが幸福になるように いささか祈ろう

□エーリヒ・ケストナー(小松太郎・訳)「ホテルでの男性合唱」(『人生処方詩集』、岩波文庫、2014)
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 【参考】
【詩歌】E・ケストナー「絶望第一号」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「顔を交換する夢」 ~人生処方詩集~
【詩歌】戦争を礼賛する牧師 ~E・ケストナーによる諷刺~

【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路

2015年11月01日 | ●佐藤優
 ①児玉昌己『欧州統合の政治史 EU誕生の成功と苦悩』(芦書房 2,500円)
 ②二至村菁『米軍医が見た占領下京都の600日』(藤原書店 3,600円)
 ③菅直人『総理とお遍路』(角川新書 820円)
   
 (1)ユーロ危機、ギリシャ危機、シリアからの大量難民流入などの要因が、EUにいかなる影響を与えるかを読み解くことが、国際情勢分析の鍵になる。
 ①は、EUの歴史と構造的に抱える問題を解き明かした優れた本だ。文も読みやすい。
 <欧州議会からこの過程を見れば、行政府の選出については大統領を選ぶ米国型ではなく、イギリス型の議院内閣制的な手法をもって進むことを意味した。
 加盟国の主権的権限のEUへの移譲と制限は、EUの行政府の長の選出にまで及んでいる>
と著者は指摘する。EUの政治的統合は、むしろ強化されつつあるというのが最近の傾向なのだ。
 一部のエコノミストが唱えるEU解体論が、素人談義である、ということが本書を読むとよく分かる。

 (2)②は、1947~49年、京都に赴任した米軍軍医の私信を中心に、当時の状況の再現を試みた意欲的作品だ。
 戦時中、中国東北部で人体実験を行った七三一部隊に関する記述が興味深い。1950年代後半に、七三一部隊の隊長を務めた石井四郎・元陸軍中将が訪米した際に、占領軍の一員として日本に勤務した軍医と面会したときのエピソードが特に興味深い。
 <サムス准将はチャックに、シロウ・イシイは優秀な医学研究者で、七三一部隊で部下たちがおこなった実験の責任をすべて自分が負い、また七三一部隊の研究を許し、みずからもかかわられた皇族方をかばって秘密を守ってきたのだ、と話したという。
 年齢は十歳ちがっても、本来ふたりは医学研究にふかい興味を持って戦争の二十世紀を生きてきた軍医どうしではあった。サムス准将が長年会いたいと願い、自宅へ迎えたということは、今後CIAファイルなども検証しつつ石井元中将が米軍占領下で果たした役割をあらためて思い測るよすがとなろう>
 人体実験に魅力を感じる医師の心理を解明することは重要だ。

 (3)③は、合理的思考しかできないように見られていた政治家が、四国八十八札所のお遍路の経験を通して超越性を獲得していく過程を記したユニークな当事者日記だ。
 特に菅元首相の時間理解の変化が興味深い。
 <とにかく、異次元だった。違う星に行って帰ってきたような感覚。
 時間の流れがまったく違う。ゆっくりしているんだ。一歩一歩、歩くので、クルマで10分のところがだいたい1時間かかり、クルマで1時間のところが1日かかる>
 マキャベリストとみられている菅直人という政治家の背後にある誠実な知識人としての姿が見える。

□佐藤優「進むEUの政治統合 ~知を磨く読書 第123回~」(「週刊ダイヤモンド」2015年11月7日号)
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 【参考】
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか

【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
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【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
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【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
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【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
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【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
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【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
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【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~

2015年11月01日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)今年の「全国糖尿病週間」は11月9~15日だ。全国で糖尿病発症予防と重症化予防に向けた啓発活動が行われる。

 (2)「国民健康・栄養調査(2013年)」によれば、国内の
   糖尿病有病者:HbA1c(国際基準値)6.5%以上or医療機関で治療中の者
の割合は、
   男性:16.2%(6人に1人)
   女性: 9.2%(10人に1人)
 50代以降に有病率が増加することが示されている。
 50代以降は、男女ともいわゆる更年期に入る(男性も、だ)。加齢とともに性ホルモンや副腎アンドロゲンなど抗糖尿病に働くホルモン群の分泌が低下し、多かれ少なかれ発症リスクが上昇。
 加齢は免れない移譲、その他のリスクへの手当が肝心だ。

 (3)まして秋の検診で
   空腹血糖が黄信号or空腹時血糖は正常でもHbA1cが5.7~6.4%
の人は、すでに「前糖尿病」状態だ。
 速やかに自分の食習慣を見直そう。ついでに過体重も是正したい。

 (4)日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイドラインによれば、糖尿病の発症リスクを明らかに下げる食品は、次のものだ。
   「食物繊維」
   未精製穀類などの「低GI食品」
 GI:グリセミック・インデックスとは、食物中の糖質の吸収度合いを示したもので、食後2時間のうちに血中に入る糖質の量を反映している。GI値が高い食物は、発症につながる食後高血糖を引き起こしやすいのだ。
 実際、日本人対象者を含む複数の試験結果からは、次のことが報告されている。
   ①「白いご飯」(高GI食品)
   ②食物繊維をたっぷり含む緑色野菜(低GI食品)
のそれぞれについて、
   ①が1杯(158g)増加するごとに、糖尿病発症リスクが11%上昇する。
   ②の摂取量を1日約120g増やすと、糖尿病発症リスクが14%減少する。
 このほか、日本人男性を対象とした試験では、
   ③魚介類の摂取量が多いほど、発症リスクが低下。
   ④青魚に含まれるお馴染みのEPAやDHAの摂取量が良い。

 (5)ということで、モデル晩ご飯は、秋の味覚と食物繊維満載の
   「キノコご飯と秋鮭、青菜のおひたし添え」
はいかが? ただし、ご飯のお代わりはないものとして。

□井出ゆきえ(医学ライター)「全国糖尿病週間(11月9~15日) 前糖尿病の方は食習慣の改善を ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(週刊ダイヤモンド」2015年10月日号)
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 【参考】
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~