語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中東】「イスラム国」打倒か「アサド政権打倒」か ~フランスのジレンマ~

2015年11月25日 | 社会
【中東】「イスラム国」打倒か「アサド政権打倒」か ~フランスのジレンマ~
 
 (1)11月13日、パリ北郊の競馬場「スタード・ド・フランス」における爆弾テロによる死者は129人、負傷者350人余(うち重体約100人)に達した。
 サッカー場付近での自爆のほか、レストランなど4か所を同時に襲って警備を分散させた後、コンサート・ホールに突入、舞台の上からAK47自動小銃の弾倉を次々に交換しつつ観客に銃弾を浴びせる巧妙な手口は、戦闘に慣れた者のしわざと推定される。

 (2)犯行声明を出した自称「イスラム国」(IS)に決定的な反撃を行うのは、戦術的に容易ではない。
 フランス空軍は、昨年9月19日からイラク領内のIS拠点の航空攻撃に参加し、今年9月27日からはシリア領内での攻撃にも加わったが、出撃機数は形ばかりの6機程度だった。当時、フランス空軍はアラブ首長国連邦のアブダビに戦闘機「ラファール」9機を置いていた。
 今回のテロ事件後の11月15日、フランス空軍はヨルダンからこれまで最多の戦闘機10機でシリア北部のラッカ(ISの“首都”)を2日間攻撃し、「2目標を破壊した」と発表した。
 しかし、これまで米軍、ロシア軍などがラッカを何度も叩いても決定的効果はなかった。10機、爆弾20発では大打撃を与えられない。

 (3)米軍は、アブダビやカタールにF15Eなど戦闘機30機、B-1B爆撃機6機などを配備し、アラビア海と地中海には空母各1隻を派遣し、IS攻撃を行ってきた。しかし、出撃した戦闘機などが攻撃目標を発見できず、爆弾、対地ミサイルなどを付けたまま基地に戻ることが多かった。
 パキスタン、アフガニスタン、イラクなどで民間人誤爆の例が少なくないため、パイロットは確実に敵とわかる目標を攻撃するよう指示されている。だが、ISか一般人かを空から見分けるのは不可能に近い。かくて、爆弾を投下できないまま戻ることになりがちだ。
 今後、フランスがシリア周辺に配備機数を急増させたり、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」(戦闘機、爆撃機32機搭載)を派遣しても、バルス首相が叫ぶ「ISを全滅させる」目標は達成しがたい。

 (4)11月13日の自爆テロ以前から、米軍では「少なくとも目標探知には地上部隊の投入が必要だ」という意見が高まり、特殊部隊50人をシリアに潜入させることになった。
 シリア政府は、米軍などのIS航空攻撃は黙認しても、「アサド政権打倒」を公言した米国の地上部隊の入国を許可していない。無許可の入国は国際法に違反する。

 (5)もし、フランスが本気で「IS全滅」をめざすなら、アサド政権と和解し、シリア政府軍と協力してシリアの二大反政府勢力の
   ・IS(推定兵力3万人)
   ・アルカイダ系「ヌスラ戦線」(同調する雑多な勢力を含め1.2万人)
を相手に戦い、地上戦による内乱の鎮定をめざすしかない。

 (6)内戦が終結すれば難民の流出は止まる。その後各国が復興を援助すれば、国外に逃れたシリア難民400万人、国内避難民760万人も帰郷できる。
 だが、アサド政権が倒れたら、次にISとヌスラ戦線の内戦が起こる公算が大だ。いずれが勝とうが、難民は安心して帰郷できない。
 だから、ロシアだけでなく、米、英、独なども事実上アサド政権存続を容認して停戦をはかる方向に傾くなか、フランスはなぜか「アサド退陣」を強硬に主張してきた。今回のテロ事件は、オランド大統領に戦略の再考を迫っている。

□田岡俊次「IS打倒は困難なフランスのジレンマ」(「週刊金曜日」2015年11月20日号)
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【本】ゲーテさん こんばんは

2015年11月25日 | エッセイ
 (1)18~19世紀の、今では古典となった作品は、著者の生前には概して認められず、死後に評価されることが多かったらしい。ところが、『若きウェルテルの悩み』は、刊行直後からベストセラーとなった幸運な作品である。
 それでも、ゲーテは生前は詩人・作家としてよりも行政マンとし知られた。詩人・作家よりも行政マンのほうが、当時は社会的評価が高かったのだ。
 小さな公国の行政機構の中とはいえ、枢密顧問官にのぼりつめたから、能吏には違いなかった。鉱山の再開発をはじめ、財政改革に東奔西走している。傍ら、あの膨大な詩、小説、劇を書いているのだから、そのエネルギーには恐れ入るするしかない。かてて加えて、文学とは関係のない鉱物学や植物学に関する知識も本職はだしの域に達しているから、彼が生みだした戯曲の主人公ファウストに比肩する怪物だ。

 (2)本書は、こうした巨人ゲーテの人と作品をやさしく解説する。くだけたタイトルに見られるように、若者に受けそうな軽い筆致が特徴だ。
 たとえば『ウェルテル』。当時の通信事情、整備されつつあった郵便馬車網という新しいメディアを反映している点に着目し、書簡を今日のe-maiにl、書簡体小説をパソコン小説になぞらえる。この古典ががぐんと身近に感じられるではないか。

 (3)池内紀はしかし、単なる解説者で終わっていない。人間性の探究者でもある。
 たとえば、ゲーテの青年期にはやった「自然に帰れ」(ルソーに由来すると言われるが出典不明)について、池内は次のように書く。
 <ついでながらルソーの語ったような「善き田舎人」は、人生読本とかオペレッタには登場しても、現実には存在しないことを私たちは知っている。素朴で正直で陽気な人もたまにはいるかもしれないが、おおかたは頑固で、陰気で、欲ばりである。首にリボンを結び、頭に麦わら帽子をのせているかもしれないが、それは決して純朴さの保証ではない。いつも嫉妬深く隣近所に目をくばり、 わが庭とわが家とわが収穫物を疑りの眼差しで、いわば爪と歯で見張っている>

 (4)「善き田舎人」にはあまり愉快ではない記述で、皮肉すら感じられるのだが、幸い、これはゲーテの時代の「善き田舎人」だ。人間性も時代と国是が反映されるのだ。

□池内紀『ゲーテさん こんばんは』(綜合社、2001/のちに集英社文庫、2005)
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【旅】倉敷、大原美術館

2015年11月25日 | □旅
 ヒマラヤザクラ
 
 
  

 明治4年のポスト(書状集箱)
 
 

 モネの睡蓮の池を模した池、於アイビースクウェア
 
 

 バーナード・リーチ「鉄秞抜絵兎文大皿」
 

 バーナード・リーチ「ガレナ秞筒描蛸文皿」
 

 大原美術館東洋館にて
 
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【旅】屋島

2015年11月25日 | □旅
 屋島遠望
 

 屋島に隣接する島、周辺の海
 
 

 屋島寺本堂
 四国88箇所霊場の84番札所。
 朱塗りの佇まいが特徴の古刹。1618(元和4)年に竜厳上人が再建した。建物は、桃山時代のものと伝えられていたが、1957(昭和32)年の解体修理の際に鎌倉時代の古材や建築法が発見された。鎌倉様式に復元され、今日に至る。
 屋根は、一重の本瓦葺の入母屋造り。内部は前2間が外陣、後3間が内陣と脇陣の仕様。内陣中央に唐様の須弥壇があり、本尊の観音坐像を納める唐様の厨子が安置されている。
 

 蓑山大明神
 屋島寺の境内に鎮座する石像の大狸(屋島の太三郎狸)雌雄二体。日本三名狸の一。太三郎狸は、弘法大師が霧深い屋島で道に迷った折、老人に化けて道案内をしたり、屋島で数多くの善行を積んだため、地主の神として本堂の横に祀られた。家庭円満、縁結び、子宝の福運を運ぶ。
 

 血の池(瑠璃宝の池)
 弘法大師が屋島寺伽藍を南嶺に移す際、「遍照金剛、三密行所、当都率天、内院管門」とお経を書き、宝珠とともに納めて池にした。源平合戦のとき、檀ノ浦で戦った武士たちが血刀を洗ったため、「血の池」と呼ばれるようになった。
 

 瓦投げ
 
 

 鬼ヶ島(女木島)
 

 屋島から展望する島々
 

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