語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (承前)

(5)何がキリスト教信仰を守るのか
 イエスの言行のほとんどは実証できない。キリスト教は、イエス・キリストの解釈をめぐり、常に分裂する可能性を孕んでいる。
 イスラム教については、ムハンマドは人間だから、どんな実証によってもムハンマドの存在は脅かされない。
 ただし、補足すれば、ムハンマドの存在をめぐって議論は少なからず起こっている。シーア派の中には、ムハンマドではなく娘婿のアリーに本来は啓示が下るはずだったと考えている人もいるので、ムハンマドとアリーのどちらを重視すべきか、という議論がある。
 この議論は、日蓮宗の宗徒にとって仏教を興したブッダと日蓮宗をつくった日蓮のどちらを基本にするか、という問答に似ている。日蓮宗の大多数はおそらく日蓮と答えるだろう。
 ただし、ムハンマドの解釈をめぐる混乱は、イエス・キリストのそれより格段に少ない。キリスト教は、イエス・キリストの解釈をめぐって分岐、分裂を繰り返してきた。
 イエス・キリストの実証性については、「近代プロテスタント神学の父」シュライエルマッハーの影響が非常に大きい。彼は、現実に存在する教会は実証的なものだ、と語った。当時、プロイセン国家と教会は一体化していた。その教会と離れた場での神学はあり得ない。具体的に証明できる現実の問題のなかでしか、神については語れないと彼は唱えたのだ。
 つまり、神が人間に直接的に働きかける超越や啓示などを押しのけて、人間がつくった実証可能な教会こそが大切だという考え方だ。
 その結果、教会も信仰も救いも、国家や国家が定めた制度の一部にされてしまう。キリスト教が持つ超越性も危うくなり、キリスト教自体が成り立たなくなってしまう可能性がある。
 トマス・ホッブス『リヴァイアサン』における教会論によれば、普遍的な教会が存在し得るか、という疑問に対してホッブスは、地上に「普遍的な教会」はあり得ないと結論づけた。ここでいう普遍的教会は、神に代わって人間の救済を担保できる人間がつくった組織、と考えるとわかりやすいかも。
 では、何がキリスト教信仰を守るのか。
 ホッブスは国家という答えを導きだした。
 彼自身は、キリスト教を信仰する場を確保して、人間の救済を担保するためには教会は存続させなければならない、という考えだ。それなら、国家が聖書の選定、国民が信仰すべき教会を指定すべきだと結論づけた。国家が教会の上位に立ち、国民のキリスト教信仰を担保する必要があるというわけだ。
 国家はいくつもあるので、教会もいくつもあることになる。よって、普遍的な教会は存在できない。逆に言えば、普遍的な教会があれば国家は存在できない。
 実際にそのシステムを突き詰めたのが、20世紀初めにドイツで起きた「ドイツ・キリスト者」運動だ。国家と教会を結合させる運動だ。
 まず反ユダヤ主義を表明して、聖書のなかから旧約聖書や「パウロの手紙」などのユダヤ教に連なる文献をすべて排除した。その後「福音書」「使徒言行録」を中心とした新しい聖書を編纂した。
 その結果、キリスト教とナチスが結びついた。アドルフ・ヒトラーを現実的な救い主にするロジックを組み立て、ナチスの共鳴者だった神学者ミュラーを監督とした帝国教会を創設し、第三帝国の国教とした。
 「ドイツ・キリスト者」運動を起こしたのは、主にドイツ・ルター派の人びとだ。ヒトラーはルターを尊敬していた。帝国教会ができてから、ドイツ国内のほとんどの教会が傘下に入った。
 超越性を排除した教会は、ナチス時代のドイツに帝国教会という形で存在したことがあったわけだ。
 それは宗教の自殺だった。キリスト教どころか宗教でなくなったのだから。
 日本も教会の上位に国家が立つというシステムを取り入れて国家神道をつくったが、日本の国家神道は「宗教ではない」という立場をとった。最初から、宗教として自殺しないですむ構成にしていた。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (承前)

(4)サクラメントとは何か
 現代における神学の流れに大きな影響を与えたのは、「現代神学の父」カール・バルトのサクラメント論だ。
 カトリックには、7つの秘跡・・・・サクラメントがある。神の恩恵を信徒に授ける儀式で、救済を保証するためにキリスト教徒が行う大切な儀式だ。
 ①洗礼
 ②堅信・・・・洗礼を受けた後に聖霊の力の恵みを授かる。
 ③聖餐・・・・ブドウ酒を飲み、パンを食べる。
 ④告解・・・・罪を告白して赦しを得る。
 ⑤病者の塗油・・・・病人をいたわり油を塗る。
 ⑥叙任・・・・聖職者を任命する。
 ⑦結婚
 プロテスタントでは、このうち①と③だけがサクラメントだ。この二つだけが救済に直結していて、それ以外の5つは重視しないという立場をとっている。
 ところで、バルトは①はサクラメントではない、と否定してしまう。③の、キリストの血肉であるパンを食べ、ブドウ酒を飲んだものだけが救われると。
 バルトは晩年にそれまでの考え方を変え、①洗礼という制度と結びついた形でのキリスト教を否定すると主張している。①も人間が行う業だというわけだ。
 ③については、福音書にイエスがパンとブドウ酒を弟子たちに与えたと書いてある。①については、イエスが洗礼を受けた記述はあるが、イエスが授けたという記述はない。
 バルトは①洗礼という行為自体は否定していない。カトリックの7つのサクラメントのうち⑦と比較するとわかりやすいかもしれない。⑦をサクラメントとするカトリックは、原則として離婚を禁止している。
 他方、プロテスタントは⑦にサクラメントとしての地位を与えていない。離婚は奨励していないが、禁止もしていない。それはプロテスタンティズムが⑦結婚を人間的な事柄と捉えているからだ。
 バルトはプロテスタント神学の立場から、⑦が人間的な事柄であると徹底的に掘り下げた。同様に①洗礼も人間が行うことだから、とサクラメント性を否定した。裏を返せば、①を受けなくても人は救われるとバルトは解釈した。
 逆にいえば、カトリックでもプロテスタントでも③聖餐を受けないと人は救われない。
 バルトは、サクラメントをイエス・キリストのシンボルだとした。そのシンボルは唯一③だけだ、と考えた。
 新約聖書によれば、イエスはパンとブドウ酒をとって「私を思い出せ」と弟子たち語った。イエスの言葉が③にサクラメント性を与えているわけだ。
 イエス・キリストがいない現状で、彼の存在を何によって想起するのか。③はイエス・キリストを思い描く役割を担っている。キリスト教徒にとって、③が行われる場に特別な力が働くと考える。それが聖霊の力だ。
 キリスト教には、神とイエス・キリストと聖霊がいる。この三位一体論はキリスト教徒にとって当たり前のことだが、そこが日本人にはわからない。だから、なぜパンとブドウ酒を授かる③が特別な意味を持つのかもわからない。
 キリスト教徒にとって聖霊の働きは呼吸するのと同じくらい自明だが、キリスト教徒以外の人にとってわからない。
 多くの人は次のような疑問を持つだろう。パウロの手紙を書いたパウロは人間だ。なぜ人間の手紙を通してキリストの言葉を述べる福音書を解釈できるのか、と。
 キリスト教徒はたぶん「パウロに聖霊が働いていたから」と答えるだろう。マリアは処女のままイエスを懐妊したとされる。ここにも聖霊が働いているわけだ。しかし、聖霊が働いていたことは、どのように弁証されるのか、キリスト教徒以外の人を納得させるのは難しいことは確かだ。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (承前)

(3)ハーバード大学にユニテリアンが多い理由
 けれどもユニテリアンを排除する教会は急速に弱っていく。
 ユニテリアンを認めないということは、実証性に背を向けることと同じだからだ。実証性に目を向けなければ、科学、哲学、歴史学という近代的な世界観と調和しない範囲でしか信仰が成立しなくなってしまう。
 すると、最終的には、日曜日の1~2時間だけのキリスト教徒になってしまう。その時間だけタイムカプセルで過ごす。信仰が、外の世界、日常の暮らしとの関わりを失ってしまう。
 その昔、ハーバード大学の教職員にも学生にも、ユニテリアンが大勢いた。ハーバードはユニテリアンの塊だった。ユニテリアン教会が自然科学を、人間と神とが交流する上でもっとも重要な手段だと考え、強力に後押ししたからではないか。大学にとって、これは強力な追い風になる。
 同様にビジネスも強力にプッシュする。ビジネスは地上の乏しい資源を価値あるものとして生み出して、なるべく多くの人びとに分け与えるための活動だから、一生懸命やりなさい、と奨励するわけだ。しかも24時間365日、信仰の立場から励め、と強く言っている。
 ユニテリアンはビジネスや学問だけでなく、教派縦断的だからほかの宗教との相性もいい。米国の従軍牧師やCIAの職員にもユニテリアンが多いのは、ムスリムやユダヤ教徒だけでなく、理神論者や無神論者とも軋轢を生まずにスムースにアクセスできるからだ。
 要するに、ユニテリアンは誰とでも話ができる。性的マイノリティとも。
 誰もやらなかったことを真っ先にやるのはユニテリアンの伝統のひとつだ。その反面、保守派からの風当たりが強い。
 だが、結局は現実社会で影響力を発揮できる宗教が生き残る。過去の伝統や遺産だけにしがみつく宗教に、魅力も将来性も感じられない。
 ただ、伝統や遺産を実証主義的な方法以外で正当化していくやり方はあるのではないか。ユニテリアンは、イエスは“神の子”ではなく、人間だと結論を出した。しかし、主流派のキリスト教会はこの立場をとれない。<例>三位一体説がキリスト教信仰の伝統なら、これを捨てたらキリスト教ではなくなってしまう可能性がある。おいそれとは捨てられない。
 ではなぜ捨てられないか。そこのところを突き詰めて、正当化する方法はあるのではないか。ここがこれからの神学でもっとも重要な部分だ。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (承前)

(2)ユニテリアンとは何か
 橋爪大三郎は、日本ではルター派の教会に属しているが、米国ではユニテリアンの教会に属している。ユニテリアンはほかの教会と二重に所属していても問題はない。
 ユニテリアンでは、キリスト教の大枠を維持しながらも、キリスト教の本質だと考えられていた三位一体説や、イエス・キリストは神の子であるというドグマ(教義)を排除している。
 ユニテリアンの大きなポイントは、教派縦断的で、ほかの宗派と同様にイエスが救いであること。ただし、神秘的、超越的な救いではなく、イエスを偉大な先生と考える。ユニテリアンにとってのイエスは、『論語』が伝える孔子に近い。
 三一論や神の子であるイエス・キリストという伝統的な考え方を排除していくと、ユダヤ教やイスラム教に近くなってくる。伝統的なドグマを排除していけば、キリスト教ではなくなってしまう。とはいえ、ユニテリアン教会に通う人びとの考え方や行動は、従来のキリスト教徒とほとんど同じだ。
 橋爪が通うユニテリアン教会は、もともとプロテスタントのカルヴァン派の教会だった。150年ほど前に、ユニテリアンの考え方をする人びとが多くなった。議論の結果、ユニテリアン教会に看板を掛け替えると決議した。カルヴァン派の信徒たちは、それなら自分たちは出て行く、とすぐ近くに同じ名前の教会を建てた。似た名前の教会が二つ近くにあることになった。
 なぜユニテリアンという宗派が生まれたのか。
 19世紀、キリスト教徒は、イエス・キリストの存在を実証できるか、奇蹟や啓示を証明できるか、という実証主義の波にもまれた。
 19世紀は、科学が楽天的に信じられていた時代だった。自然現象に加えて社会現象など、さまざまな対象に科学の方法が向けられていった。宗教も例外ではなかった。「史的イエス研究」もそうだ。聖書を人間がつくり出した文章と考えて、その成立の経緯や論理構造を化学的な方法で解明していった。
 当時の健全な一般市民が、共通して納得できるのは科学、哲学、歴史学だったから。しかし、科学、哲学、歴史学を通してイエス・キリストの存在を証明しようとしたが、できなかった。神の子の可能性もあるが、もしかしたらただの人間だったかもしれない、と。イエス・キリストとは何だったのか、という疑問だけが残った。
 その議論を通じてすべての人間が共通して納得できたのは、人間でアルということだ。だから、ユニテリアンも、イエス・キリストを人間だと考えた。むろん、神だと信じている人がユニテリアンのメンバーになってもいいけれど、ほかの人にその考えを強制しない、という約束がある。だから、ユニテリアン教会のメンバーには、キリスト教徒でない人もいる。
 イエス・キリストは、まことの神でまことの人だから、まことの人と考えているのなら構わない。そして偉大な先生でも、ただの人でもいいが、ただしイエスは救い主である、という態度だ。
 ユニテリアン教会では、ジーザスという名前はあまり耳にしない。ゴッドという言葉もあまり聞かない。Aさんがゴッドを信仰して、Bさんがブッダを、Cさんが人智を超えた超越的な何かを信じて、Dさんが唯物論者だとしても、互いが互いの信仰を尊重していればいいという考え方だ。
 それがひとつの宗派なのか・・・・実際、米国では、ユニテリアンをキリスト教ではないと考える人のほうが多い。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 『あぶない一神教』は序章を含めて6つの章で構成されている。
  序章 孤立する日本人
  第1章 一神教の誕生
  第2章 迷えるイスラム教
  第3章 キリスト教の限界
  第4章 一神教と資本主義
  第5章 「未知なるもの」と対話するために

 ここでは第3章をとりあげる。第3章は次の各節からなる。
 (1)イエス・キリストは「神の子」か
 (2)ユニテリアンとは何か
 (3)ハーバード大学にユニテリアンが多い理由
 (4)サクラメントとは何か
 (5)何がキリスト教信仰を守るのか
 (6)第一次世界大戦という衝撃
 (7)なぜバルトはナチズムに勝ったのか
 (8)皇国史観はバルト神学がモデル?
 (9)米国が選ぶのは実証主義か霊感説か
 (10)無関心の共存は可能か

(1)イエス・キリストは「神の子」か
 キリスト教とイスラム教は、同じ一神教で、同じ神様を信じているはずなのに、物語のフレーム、文化のフレームが違う。だから対立が続くのだ。その原因を一点に絞れば、イエス・キリストの存在に行き着く。
 イスラム教にはイエス・キリストに当たる存在がない。この差がもっとも大きい。
 イエス・キリストとは何か。
 人間である。間違いない。
 ただし、正統のキリスト教によれば、イエス・キリストは天地創造のはじめから“神の子”である。神から生まれて、とき至って、聖霊によってマリアから生まれ、肉体を得て人となった。つまり、人となる前は、神だった。人として処刑され、のちに復活した。イエス・キリストが神であることは、終始一貫している。人だったのは、人として生まれてからだ。
 しかし、いまは人間だ。神の右の座に就いているけれど、人間として座っている。人間だけれど、まことの神である。
 ここから「三一論/三位一体論」(トリニティ)で議論になる【注】。
 そもそもキリスト教では、一神教でありながら、唯一の神を信じるという形態をとらない。神様はひとつであるが、父なる神、子なる神(イエス・キリスト)、聖霊なる神がいるという三一論だ。ひとつの神だけれど、三つある。一で三だ。
 この問題の神学的処理は簡単だ。わからないから、不合理だから、信じるしかない。こう結着をつけている。
 この考え方の基本になっているのが「受肉」論だ。神の子であるイエス・キリストが人間として生まれてきたことを「受肉」という。なぜ肉の形(人間の形)をとらざるをえなかったのか。仏教の輪廻転生とは違う一回限りのできごとだ。
 ここがキリスト教の一番の特徴だ。イスラム教にもユダヤ教にもない考え方だ。米国型キリスト教であるユニテリアンにも「受肉」という考え方はない。

 【注】東京神学大学では「三位一体論」、同志社大学神学部では「三一論」という術語を使う傾向がある。トリニティに「位」や「体」に相当する言葉は入っていない。「三一」のほうが正確だ。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (1)11月1日、トルコで総選挙(一院制、定数550)の投開票が行われた。
 <アナトリア通信によると、与党・公正発展党(AKP)が316議席を確保し、圧勝した。6月の前回総選挙後、トルコではテロが相次ぎ、クルド系非合法武装組織との和平交渉も破綻。社会不安が高まる中、有権者は安定を求め、AKP単独政権に再びかじ取りを委ねた。
 アナトリア通信の集計によると、開票率99・58%で、イスラムの伝統を重視する与党AKPは58増の316議席。野党勢力は世俗派の共和人民党(CHP)が3増の134議席▽少数民族クルド系の人民民主主義党(HDP)が21減の59議席▽トルコ民族主義を掲げる極右の民族主義者行動党(MHP)が38減の41議席。投票率は85・46%>【注1】

 (2)今回の総選挙が行われた経緯は、かなりいかがわしい。6月7日に総選挙が行われたばかりだからだ。同月18日、選挙管理委員会が発表した最終結果は、次のとおり。
 <議席数はイスラム色の強い与党、公正発展党(AKP)が258、中道左派の共和人民党(CHP)が132、極右の民族主義者行動党(MHP)と、少数民族クルド人系の左派、国民民主主義党(HDP)が共に80>【注2】
 トルコでは、2002年から13年間、公正発展党が議席の過半数を獲得し、単独政権を維持してきた。しかし、6月7日の総選挙ではクルド系の政党に票を奪われる形で議席を減らし、過半数を獲得できなかった。
 このため、公正発展党による単独政権をめざすエルドアン大統領が、大統領権限11月1日に再選挙の実施を決定した。

 (3)トルコでの投票に先立って、10月25日、東京のトルコ大使館で、日本に在住の有権者のための在外投票が行われた際、トルコ人とクルド人の衝突が起き、負傷者が出た。

 (4)クルド人は、クルド語を母語とし、独自の歴史と文化を持つ。にもかかわらず、第一次世界大戦に勝利した英国とフランスが、オスマン帝国を解体した際、クルド人居住地域(クルディスタン)が、トルコ、シリア、イラク、イランなどに分断された。
 現在のクルド人人口は3,000万人と推定され、国家を持たない民族として世界最大の民族と言われる。
 トルコ、シリア、イラク、イランなどにおいて、クルド人は少数民族として差別されている。
 トルコでは、1984年に武装組織「クルディスタン労働党」(PKK)が分離独立を求めて武装闘争を開始し、トルコ政府との関係が緊張している。エルドアン政権は、2013年1月から収監中のアブドゥッラー・オジャラン・PKK党首と対話を始め、強硬策を軌道修正している。

 (5)今回の選挙でも、
 <クルド系のHDPは、政党が国会で議席を持つために必要な全国平均得票率10%を今回も上回り、第3党の座を維持した>【注3】
ので、エルドアン大統領の与党が議席の過半数を獲得したとはいえ、トルコ人とクルド人の対立は沈静化しない。 

 【注1】記事「トルコ与党、過半数回復 「安定」訴え圧勝 総選挙」(朝日新聞デジタル 2015年11月2日)
 【注2】記事(共同通信 2015年6月19日)
 【注3】【注1】と同じ記事

□佐藤優「日本でも衝突 「クルド人」がトルコに怒る理由 ~佐藤優の人間観察 第135回~」(「週刊現代」2015年11月21日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【古賀茂明】【原発】大手電力のエゴ丸出し

2015年11月14日 | 社会
 (1)電力に関して腑に落ちない報道が続いている。
 <例1>大手電力会社の2015年度上半期決算で、東日本大震災後初めて全社が黒字になった、というニュース。黒字額は10社合計で、驚くべし、1兆円弱。
 電力料金値上げ苦しむ庶民には、怒ってしまう数字だ。
 しかも、ついこの間まで、原発停止で経営難だという報道が続いていたが、この期間に再稼働していた原発は1基だけ(九州電力の川内原発)。燃料安などの要因もあるが、少なくとも現状では、原発なしでも黒字になった。
 釈然としない。

 (2)電力に関して腑に落ちない報道が続いている。
 <例2>昨冬に続き、今冬も節電の数値目標を設定しない、というニュース。北海道電力でもピーク電力に対する予備率は14%だ。最低限必要な比率が3%だから、楽々クリアしている。最も需給が逼迫する関西電力さえ3.3%、しかも西日本全体では5.4%。各社で融通し合えば問題はない。
 問題ないのに、電力会社は依然として、「老朽化した火力発電所の事故もあり得る」などと、うそぶいて「電力は足りている」とは認めない。認めたら「原発は不要だ」と突っ込まれても抵抗できないからだ。
 しかし、実際には、大手電力の電力販売量は減少する一方なのだ。企業や国民の節電が進んだのが大きい。この動きはさらに加速するだろう。

 (3)大手電力には「ハムレットの悩み」がある。
   「節電要請をすべきか、すべきでないか」
 本音では、原発を動かして、電力販売を増やしたい。そのためには節電は困る。
 しかし、節電しなくていいと言えば、「電気が足りているのか、それなら原発はいらん」と言われてしまう。
 そこで、「数値目標のない節電要請」という答えに行き着く。
 数字を出せば、実現のための具体的な施策が必要となるが、それで本当に需要が減ったら困る。そこで、「無理のない範囲で節電を」と呼びかける。「本気で節電しないでね」と言うのと同じだ。

 (4)(3)の「ハムレットの悩み」を象徴するとんでもない話がある。
 関西電力が、来年4月から、電気を大量に使う家庭向けに特別割引の新プランを用意し、その原資とするために、いくつかの深夜割引プランなどへの新規加入を廃止する、というのだ。
 関電は、高浜、大飯、美浜などの原発を動かしたい。しかし、その結果として電力がジャブジャブに余るので、消費者にもジャブジャブ電気を使ってもらいたい、というわけだ。

 (5)日本の家庭向け電力料金は、消費量が増えると段階的に割高になる仕組みだ。省エネを推進するうえで重要な政策になっている。
 ところが、関電は国策に背いて、オール電化のように大量の電気を使う家庭をどんどん増やし、その人たちだけ特別に割安の料金を適用する、というのだ。
 一生けんめい節電し、家計をやりくりしている家庭に割高の料金を払わせて、節電しない家庭を優遇するというのだ。企業のエゴ丸出しで、国全体のことを考えていない。「公共事業」の名を汚す行為だ。

 (6)安倍政権は、小売り自由化の名のもとに、こうしたデタラメな行動を許すだろう。
 原発推進のためなら、何でもありだ。
 これほど論理破綻した政策に固執するのは、利権のためか、核武装のためか。

□古賀茂明「エゴ丸出しの大手電力 ~官々愕々第177回~」(「週刊現代」2015年11月21日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【古賀茂明】勝っても負けても安倍自民には得 ~大阪ダブル選
【古賀茂明】問題だらけの軽減税率 ~最悪の方向へ~
【古賀茂明】【原発】骨抜きの「ノーリターンルール」
【古賀茂明】アベノミクス「第二ステージ」 ~失敗を隠す官僚の常套手段~
【古賀茂明】難民と安倍とメルケルと ~ドイツと差がつく日本~
【古賀茂明】安保法成立の最大の戦犯
【古賀茂明】軽減税率、本当の問題 ~官々愕々第170回~
【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【食】植物油脂が超心配 ~塗るだけ簡単な「パン工房」~

2015年11月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)すっかりパン食が定着した日本の食生活。朝食は「パンにコーヒー」という人も多いだろう。
 基本的には、パンはごはん同様主食なので、栄養バランスからすると、おかず(副食)が必要だ。
 パンは炭水化物だから、蛋白質や脂質の三大栄養素、ビタミンやミネラルなどが必要だ。

 (2)調理に時間を割きたくない現代人は、パン(主食)におかず(副食)を用意するのは面倒くさいらしく、主食と副食が一体になった「サンドイッチ」や「菓子パン」などの手軽な携帯食が人気だ。
 <例>「ランチパッカー」と呼ばれる「ランチパック」(ヤマザキ)が好きな人は多い。 

 (3)塗るだけで簡単にサンドイッチやおにぎりに利用できる人気商品「パン工房」(キューピー)だが、「ツナ&マヨ」「コーン&マヨ」ともに原材料欄に18~19種類の材料が表記されている。
 JAS法に基づく原材料名を表示する基本ルールは、次のとおり。
   「使用した原材料を全て重量順に表示する」
   「食品添加物はそれ以外の原材料と分けて記載」
   「原材料名欄に、アレルギー、遺伝子組み換え、原料原産地に関する表示を含む」

 (4)「パン工房」の原材料で一番多く使用されているのは、植物油脂だ。
 植物油脂とは、植物から採取した油脂の総称で、血中コレステロール値低下や血液サラサラなどに働く不飽和脂肪酸を多く含んでいるが、分子結合が弱く不安定で、老化・酸化しやすい性質を持っている。
 この欠点を取り除くため、脂肪分子に水素原子を加えて変質や劣化しにくい植物油脂が誕生した。
 しかし、日持ちはよくなったものの、「人為的に作られたトランス脂肪酸」を含有しているため、深刻な健康被害が指摘されている。「人為的に作られたトランス脂肪酸」は、「食べるプラスチック」の異名を持つ。
 しかるに、「パン工房」の原材料表示では、使われている植物油脂が水素原子を添加したものであるかどうかが消費者にはわからない。さらに、その植物油脂の大豆、コーン、菜種などの原材料が遺伝子組み換え食品であるかどうかもわからない。
 日持ちのよい加工食品は、便利である反面、食品添加物ではない植物油脂ひとつにもこんな深刻な危険性が潜んでいる。

 (5)食品の原材料欄において、原材料の後に続くのは、食品添加物だ。
 使われている食品添加物は、
   「ツナ&マヨ」・・・・5種
   「コーン&マヨ」・・・・7種
だ。食品に比べて少ないから安全性が高いと思うのは早計だ。なぜなら、このうちの調味料、増粘剤、酸化防止剤、甘味料は一括表示が認められている添加物のため、単純に考えても、表示されている添加物の数の2~3倍になるのは間違いないからだ。
 「ツナ&マヨ」「コーン&マヨ」は、自分で作れば原材料はツナとマヨネーズ、コーンとマヨネーズのそれぞれ2つで済む。
 少しの手間を惜しむことで、考えられないような「食の危険」を体内に取り込んでしまう。これからの長い人生が待ち受けている若い人たちが、その危険性を気に留めずに安易に体内に取り入れる現状に危惧される。

□沢木みずほ「塗るだけ簡単な「パン工房」は植物油脂が超心配」(「週刊金曜日」2015年10月30日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

2015年11月14日 | ●佐藤優
 (承前)

(10)なぜイスラムは、経済がだめか
 資本主義は、強欲資本主義に変質して人類のガンになってしまったのか。それとも資本主義は本質的に健全なのだが、格差や貧困など現代のさまざまなゆがみやひずみを投影して、悪魔のような強欲資本主義のイメージを人びとが勝手に膨らませているだけなのか。ここは大切な点だ。
 資本主義は、本質的に、放っておけば暴走する。
 新自由主義の旗振り役を担った中谷巌・多摩大学名誉教授はこう話していた。
 米国では国家や政治エリートと結びついた超富裕層がインサイダー取引をやっていて、健全な市場はほとんど残されていなかった。きわめて不公平な状況で、嫌気がさした、と。
 それで、共に新自由主義を推し進めた後輩の竹中平蔵・パソナグループ取締役会長/慶應義塾大学教授と一線も二線も画す立場をとるようになった。
 では、暴走する資本主義をどうコントロールするのか。そもそもコントロールは可能なのか。そこが何よりも難しい。
 最悪なのは、国家と資本主義が二人三脚になることだ。国家と経済は、しっかり分かれているべきなのだ。
 国家と経済が一体となると、政治とビジネス両方に手を出す人間が絶大な権力を手に入れる。
 スターリン主義がそうだ。それからナチス。そして今の中国。日本も入れていいかもしれない。
 日本でいえば、1940年代がまさにそうだった。
 国は税金を取り、軍を持っている。それと資本主義経済が一体化したら、戦争に突き進む危険性が一気に高まる。国家と資本主義は絶対に分離しないといけない。
 安倍政権の問題は、そこだ。三者協議会をつくり、国家のなかに起業家や実業家を取り込もうとしている。また安倍首相がよく語っている意味不明の「瑞穂の国の資本主義」なんて、経済の国家統制につながる危険性をはらんでいる。
 資本主義が暴走していると警鐘を鳴らす評論家は大勢いるが、経済は経済の論理で動いて利益を追求し、ときに国家利益に反する。これはむしろ健全だ。金持ちが金を稼いだって、消費するだけで悪さはしない。格差は広がってしまうだろうが、経済と国家が結びつけばさらに悪い方向に進む。
 経済と国家が結びつくより、資本主義の暴走のほうがまだましだ。
 さて、イスラム世界にこのようなメカニズムをそなえた資本主義を営む適性はあるのか。
 イスラム世界は、産業社会や資本主義をリードしていくことはできないのではないか。後ろからくっついて行くことができるだけ。本質的な脅威とはならない。攪乱要因にすらならないのではないか。
 イスラム世界は、資本主義という大きなシステムに寄生しているという大枠から外れることはない。だから経済におけるイスラム世界の影響力を過大評価すべきではない。
 オイルマネーの金持ちが豪遊したり、先進国に投資したり、たまには金持ちがテロリストに転向することはあるかもしれないが、歴史の行方を左右するような力は持たない。
 例外がひとつ。
 核の不拡散だ。彼らが核を持つようになり、使用するという状況になった場合、国際情勢が一気に変わる危険性がある。彼らは、核兵器を買えてしまう程度の金はある。原理主義過激派なら、躊躇なくボタンを押す。
 とはいえ、過剰に恐れないことが何よりも大切だ。その意味では、経済はともて重要だ。国民を食べさせることができなければ、いくら虚勢を張っても限界がある。
 付言すれば、伝統的な農業では、いまの地球人口の数分の一しか養えない。工業はぜひとも必要だ。化学肥料やトラクターが農業生産を支えている。その工業力を支えているのは、資本主義経済だ。人口はまだ増えていくから、産業社会はますますパフォーマンスを高めていかなければならない。資本主義を批判するなら、そのことをよく考えてからにすべきだ。
 近代のシステムが産業社会から脱構築することは非常に難しい。裏を返せば、産業社会をつくれない世界は、資本主義の流れに乗るにしても限界がある。
 いままで以上に効率的に、いままで以上に勤勉に、そしていままで以上に資本主義的にやらない限り、これから100年の人類の未来はない。

□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
●第3章 キリスト教の限界
【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

●第4章 一神教と資本主義
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする