語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【幕内秀夫】摂りすぎにストップ ~WHOが「ソーダ税」推奨~

2017年01月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)食品にはさまざまな成分が混在している。〈例〉米には水分、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンB1、カルシウム等のさまざまな栄養素が含まれている。これは、どんな食品でも同じだ。一つの栄養素だけでできている食品など自然界にはありえない。

 (2)ところが、食の工業化が進み、きわめて不自然な食品が登場するようになった。サトウキビやトウモロコシも、さまざまな栄養素が含まれている。だが、サトウキビを精製して作る「白砂糖」や「グラニュー糖」、あるいはトウモロコシから作られる「異性化糖」はほぼ100%「炭水化物」になる。
 同様に、胡麻や菜種、大豆にはさまざまな栄養素が含まれているが、精製して製造される油脂類は「脂質」100%だ。それら精製された油脂類で製造されるマーガリン、ショートニングなども同じだ。これらには食物繊維、ビタミン、ミネラルなどは含まれていない。一つの栄養素だけでできているものは、「食品」というより「薬品」と呼ぶべきものだ。

 (3)「薬」は英語にすれば「ドラッグ」だが、実際にドラッグのような作用をする。ドラッグの最大の特徴はその依存性にある。その「味」を一度覚えてしまったら、止めるのは容易ではない。特に精製された「砂糖」と精製された「油脂類」が手を結んだとき、強烈になる。強烈といっても、本当のドラッグやアルコール、タバコほどではない。しかし、さればこそ、「マイルドドラッグ」の名にふさわしい。
 現在、世界中が肥満問題で苦しんでいる。その原因としてジャンクフードが取り上げられることが少なくない。そのジャンクフードの主役は「精製糖」と「精製油脂」なのだ。
 〈例〉焼き芋を食べ過ぎる人はめってにいない。ところが、サツマイモに「精製糖」を入れていも羊羹にすると、空腹でなくても食べられる可能性がある。そこに、バターや生クリーム、油脂類を使ってスイートポテトにすると、満腹でも入ってしまうのだ。

 (4)「マイルドドラッグ」という言葉は大げさだろうか?
 しかし、つい最近、2016年10月11日、WHOは砂糖の入った飲料への課税を進めるよう世界各国に呼びかけた。いわゆる「ソーダ税」だ。アルコールやタバコと同じように、課税することで摂取量を減らすことを勧めたのだ。覚えてしまったら、容易に止められないことがわかってきたからだ。
 メキシコではすでに実施され、消費を減らすことに成功している。
 デンマークでは「脂肪税」が実施されたことがあるが、業界の反対で廃止されてしまった。
 その他、「ジャンクフード税」「ポテトチップス税」などを検討している国もある。いずれも、精製された砂糖、油脂類が対象になっている。
 このように、「マイルドドラッグ」という言葉が決して大げさではないことを、世界の肥満大国が教えてくれる。

□幕内秀夫(フーズ&ヘルス研究所代表/学校給食と子どもの健康を考える会代表)「取りすぎにストップ WHO「ソーダ税」推奨 ~口は災いのもと 11」(「週刊金曜日」2016年12月16日号)
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 【参考】
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